Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

スポーツバブル

ドイツのドルトムントで活躍したサッカーの香川選手が、イングランドの名門マンチェスターユナイテッドに移籍が決まったのはほんの少し前のことである。移籍金は正確には伝えられていないが、成績次第で20億円程度と言われている。また、年俸は税引き後の手取りで6億円とも報道されている。プロ野球選手の場合には税引き前で報道されるのが常と言うこともあって、実質的には10億円プレイヤーであると考えるとそのすごさが判る。

と思っていたら、同じくイングランドチェルシーに在籍していた、コートジボワール代表のドログバ選手は中国の上海申花FCに移籍するが、その年俸は12億円とも言われている。少し前には、カメルーンエトー選手がイタリアのインテルミラノからロシアのアンジ・マハチカラに移籍したが、その年俸は16億とも20億とも言われている。これらが全て税引き後だとすれば、仮に半分税金で取られるとしても税引き前は倍の名目報酬と言うことにもなる。
実際の年俸が税引き前か税引き後かについて正確なところは知らないが、年俸の上昇が結構な勢いで続いているのは間違いないであろう。かつては中東のオイルマネーが中東のリーグにて有名選手を買いあさっていたが、ここに来て有名サッカーリーグのチームのスポンサーになって年俸を押し上げてきたし、また別途経済成長著しいロシアや中国の富豪がステイタスのために、多大なマネーを使ってこのように選手を買いあさっている。

野球でもアメリカの大リーグがサラリーキャップ制(wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%83%E3%83%97)により年俸総額の抑制(加えて球団間の力の均衡)を図っているが、同じような制度はNFLNBA、そしてMLSなどアメリカのプロスポーツ界が積極的だったが、現在では欧州の主要なサッカーリーグも導入しているところがあり、特に有名チームでは個別にそれが導入されたりもしている(47NEWS:http://www.47news.jp/CN/200211/CN2002110601000209.html)。現実に多くのプロスポーツチームが借金体質となっていることが、こうしたシステムの導入がなされる最も大きな理由であるが、逆に考えれば自律的な安定経営の道を踏み外してるという事でもあろう。
すなわち年俸がバブルであるという認識は誰にもあるのだが、それでも止められないという悪の連鎖が存在し、その制限から外れたお金のある国のリーグが「年金リーグ」と揶揄されながらやや年齢が過ぎた有名選手を多大のマネーで招聘しているというのが現状であろう。

こうした、一部の人気プロスポーツ業界の年棒バブルは選手側から見れば必ずしも悪い話ではない。多くの年俸を支払ってくれるチームに移籍する事はスポーツ選手としてのステイタスでもあるし、同時に短い選手生命を考えると生活設計を容易にしてくれる強い味方でもある。ただ、もちろんそれにも限界はあるだろう。どのあたりの年俸が妥当であるかを探る事は難しいが、人気のないスポーツの年俸の低さを考えたなら人気商売とは言えども格差に愕然としてしまうのも事実である。
人気商売と考えたなら、芸能界や漫画家・小説家などの世界と変わる事はない。それだけのフィーを支払ってくれる世界があるのだから、選手側から言えば実力だけでなく人気に応じた稼ぎを得られるとすればそれも社会の構図の一つでもある。

ただ、現状のようなバブルがいつまで続くであろうかと考えれば、それは少々心許ないとも感じている。欧州の経済危機もあり、いつの段階かはわからないが一部の人気競技におけるスポーツバブルもいつかははじけるであろうと思う。その兆候は、中国などに見られる明らかに価値を超えた報酬の支払いを見ていると感じるのだ。

「バブルは、それがはじけて初めてバブルと呼ばれる。」