Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ユーロ危機が招く災厄と日本

新年あけましておめでとうございます。
つたないブログではございますが、なんとか200エントリを超えて継続ができました。今後も、よほどのことがない限り毎日更新を続けていきたいと思います。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。


さて、一時急速に高まっていたユーロ金融危機は世界主要中央銀行によるドルの融通により短期的なパニックの封じ込めに成功した。しかしながら、それにも関わらずイタリアの国債金利はほとんど下がっていない(10年債で7%前後)ことからしても、危機は先送りされたに過ぎないのは明らかだ。

現状の危機は、PIIGSのうちのギリシャアイルランドポルトガルが破綻することにより、その国債を大量に買っている欧州の銀行が破綻する懸念がスタートである。問題がこの3カ国のみで収まっている間はそれほど大きな懸念ではないのだが、同じような懸念がスペインやイタリアに広がってしまえば、もはやEU内部では救いようがない。その不安感の払拭に動きまくったのが、フランスやドイツである。ただ、この両国の思惑には大きな違いがある。
このような面からも、2012年の世界経済はユーロ危機を中心に回ると考えるのが妥当ではないかと思う。

さて、現状では冒頭でも触れたとおり短期的なドル資金融通が成功したと言ってよい。少なくとも2011年末に急激なパニックが生じるようなことにはならなかった。ただ、現状ではECBのみが一生懸命PIIGS国債を買い支えているという状態には間違いがないだろう。イタリア国債が高いとは言え金利が落ち着いているのは、ECBが買い支えているというのが実態ではないかと思う。
ただ、そんな状態をいつまでも続けられないのは誰もが知っている。いや、続けることは出来るのだが、それをすればユーロの信用が地に落ちてしまうのだ。多少のユーロ安程度であれば、ドイツが輸出好調と言って貿易黒字をさらに積み重ねることになるのだろうが、実際にはそううまくいかないであろう。実際、イギリスはユーロ強調の方策から逃げ出した。危険な財政負担はしたくないという逃げである。

現在、苦境にあるのはまず第一にEU圏内の銀行が保有債権の劣化に苦しんでいる。リーマンショック後ただちに保有債券の価値劣化を見込んで資本増強に動いた(それでも十分とは言えないが)アメリカの金融機関に対して、欧州では(満期保有目的の)債券を時価評価から簿価評価に変えることで、その場しのぎの対応を行った。これは、資本増強をしなくていいので短期的にはよい方法かもしれないが、長期的にはやはり銀行の財務状況を悪化させる。
そこに加えて、安全資産であるはずの国債までが劣化するとなれば、簿価評価というわけにも行かないではないか。少なくともギリシャ国債については50%のヘアカット(というか債務放棄)が半強制的に決められたし、現状ではそれを75%にしろとギリシャ政府は言っている。すると、ギリシャ国債の分は満期保有目的であっても毀損したことになる。要するにその損をどこかで取り戻さなければならない。実際には、これらの債権を担保に各国の政府やECBが受け入れているとすれば、今度は各国政府やECBの財政状況は大丈夫かと話が広がることになる。
ECBについては、それをするかどうかは別にしてユーロを発行できるので、マイナスが出てもそれをカバーするすべを有しているが、各国政府はお金を発行する権利をEUに渡してしまっているので、そのマイナスを穴埋めするのは財政政策によらなければならない。すなわち、増税か歳出カットである。

結果的に、ユーロ圏内は不況の嵐が吹き荒れることになる。PIIGS諸国は、財政健全化と景気対策の二つの相反する命題に金融政策を奪われた状態で挑まなければならない。考えてみれば絶望的な状態と言える。それでも、ドイツなどの黒字国からお金を引き出せればやっていけなくはない。今はドイツがそれに反対している。金が出ないと市場が判断すれば、容赦なく国債金利は上昇するだろう。そもそも、低金利でECBから融資を受けて高金利国債で儲けて自己資本を増加させるという現状の政策は、結果的に各国の国民にツケを押しつけるものでしかない。その状況でしのいでいる間に景気がよくならなければ、結局時間稼ぎにしかならない。

では、時間稼ぎを続けることができるのかと言えば、それも心許ない状況になりつつある。と言うのも、欧州の銀行は自己資本増強のために資金を引き上げをはじめる可能性が高いからである。そのため、南米やアジアに貸し出された資金からまず引き上げられる。実際、現在中国や韓国から非常に多くの資金が流出をはじめている。なぜ、日本が韓国との通貨スワップを拡大したのかと言えば、韓国からの資金流出が原因である。放っておけば韓国がデフォルトしかねない、という韓国の事情に日本が配慮したものだ。日本が後ろ盾にいれば、韓国は安心だとの印象を与えるためのものである。

とは言え、南米やアジアの資金が減れば当然景気が悪くなる。欧州内は財政規律問題で景気が悪くなり、アジアや南米は資金引き上げで景気が悪くなる。。。とすれば、どこが世界経済を牽引するのか、という話になる。
ユーロも、ドイツがユーロととことん付き合うことを決めれば、紆余曲折はあるものの何とか維持できるかもしれない。ただ、現状のようにドイツが半分逃げ腰では危機を必ずしも抑えきれまい。そして、ユーロよりも先に新興国の危機が生じる可能性は少なくない。新興国側とすれば、大規模な景気対策を打ちたいところではあるが、それをすればおそらくインフレが国民の我慢の限度を超えるという危険性がある。だから、非常に難しい舵取りを迫られるであろう。

アメリカも、QE3を実施する方向に舵を切ると見ている。現状は、QE2までの効果が徐々に出てきており、世界で唯一株価も校長だ。ただし、QE3はこれまでのものほど効果は示さないのではないだろうか。金融政策のみでは限度があろう。
その上で言えば、欧州が転ければアメリカもただではすまない。QE3はどちらかと言えば、アメリカ国内よりも結果的に欧州救済的な役割が強くなるのではないかと感じている。

日本はと言えば、実を言えば世界的な景気の悪化の影響を受けるであろうし、現在投資しているもののうちで回収できないものも増えるかもしれない。それでも、欧州などが受ける危機から比べればまだマシではないかと思う。だからこそ、現状のうちからそのときに日本がどうすべきかをきちんと戦略として練っておいてほしいものだ。ただ、アメリカまで大きく落ち込むことになった時には日本も相当の不景気を覚悟しないといけないと思う。そういう意味では、アメリカと日本は意外にも近い立ち位置にいるのかもしれない。

そして、世界の景気悪化は地域紛争を間違いなく引き起こす。そのときに日本が出来る役割は少なくないはずである。これについても、きちんと考えておいてほしいものである。

「新たな資本主義の魁として、日本がクローズアップされることを期待したい。」