Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

イラン問題と日本

イランのモハマドレザ・ラヒミ(Mohammad Reza Rahimi)第1副大統領が、アメリカ主導の経済制裁に対してホルムズ海峡の封鎖に言及した。
ホルムズ海峡はペルシャ湾の出口に当たりアラビア海との接点い位置する、イラククウェートサウジアラビアUAEなどの石油輸出国から運び出されるタンカーが通過する場所である。およそ世界の1/3強の原油はここを通過するとされる。特に日本の場合には、輸入する原油の80%がここを通過しているとさえ言われている。(wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%82%BA%E6%B5%B7%E5%B3%A1

封鎖の方法は非常に簡単なものである。艦船を多く出して実質的に臨検できるようにしなくとも、海峡内に機雷をばらまくことでなし得る。無差別なそれは、単純であるか故に阻止は容易ではない。実際には、ホルムズ海峡は幅が34kmあるため、機雷敷設に関してもアメリカ軍に関知されずにそれを為すのが困難であるのも事実であろう。本当に機雷敷設に動けば局所的な戦闘状態に陥ってもおかしくない。そのせいか、アメリカ軍の空母がホルムズ海峡近くに位置しているとの情報もある。(AFP:http://www.afpbb.com/article/politics/2847906/8237221

どちらにしても、本当にそれを行えばアメリカだけでなく世界に喧嘩を売ることになる。あくまで現状では交渉の一環であり、封鎖はしないとの声明も出ている。単純にそれが可能だとの脅しをかけているに過ぎない。
では、なぜイランがこのような脅しをかけなければならないのかと言えば、少々話は複雑になる。イランの核兵器開発疑惑がスタートとなってイランへの経済制裁が検討されているが、これに対する牽制がホルムズ海峡の封鎖という脅しなのである。

そもそも、本当にイランが核開発を行っているかどうかと問われれば、私も行っている可能性は極めて高いと思っている。それは、核兵器を無理矢理にでも持てば結果的にアメリカが折れる(その状況を容認する)ことをパキスタン北朝鮮が見せてきたからである。
悪の枢軸とまで指摘されてきたという意味では、北朝鮮とイランに対するアメリカからの認識はある意味同じようなものだからである。(wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E3%81%AE%E6%9E%A2%E8%BB%B8

核を持たないよりも持った方が国際的な発言権が増す、、、となれば、平和を広げようという目的には反するが国家戦略としては核保有に走るのは理解できなくはない。理想で言えば、核を持たない国の国際的な発言権が増すようにならなければ、このような流れを断ち切ることは不可能であろう。
兎にも角にも、イラン側からすれば引くメリットがあまりない。なぜなら、アメリカと歴史的な和解を果たしたカダフィでさえ、最後は追い落とされてしまったのだから。

そして、歴史的には日本とイランの結びつきは非常に深い。(wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%81%A8%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E9%96%A2%E4%BF%82)だから今回のイランに対する経済制裁についても、アメリカは日本に対して大きなプレッシャーを与えてきた。現状日本は形式上安保理の要請に応じて金融面での取引を制限しているが、今後さらなる制限をかけるようにプレッシャーが高まるであろう。
現在の政府が、日本としての独自色を出せるかどうかは注目点だが、今の政府には荷が重いように思える。

先日は、アメリカの最新鋭無人偵察機がイランにほぼ無傷で捕らえられていた。なぜ無傷に近い状態で拿捕できたのかはわからないが、アメリカとしては大いなる失態であろう。その上で、領空侵犯をしていたのはアメリカの方であるという事実も国際的に示してしまった。
イランとしては、結果的には北朝鮮と同じように瀬戸際的な交渉を続けていくことになると思うが、北朝鮮と異なるのは石油が出ることである。それを締め上げないと、イランが崩れることはない。だから、経済制裁なのだ。

私が気になっているのは、アメリカ軍が撤退したイラクが急激にイスラム原理主義国家に変質していく可能性があることである。それは、イランと同じような国家へとイラクが舵を切れば、現状のイラク問題がもっと大きな動きに変質していく可能性があるのだ。
アメリカ軍の撤退は、現実的にはアメリカの財政問題である。アメリカが、短期的には国際問題にコミットできるものの、長期的なそれができなくなりつつある。それを見透かしてのイランの挑発ではないだろうか。だとすれば、イランの暴発を抑えられるのは実質的に国連安保理による力による圧力か、イランとチャンネルを持つ国々によるソフトによる説得でしかなしえないかもしれない。
だとすれば、日本はイランとのチャンネルを維持し続けるように努力すべきかもしれない。

「あと、イスラエルが暴発しないことを祈りたい。」