Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

今こそTPPを推進すべき

 正直、今回トランプが勝つとは予想できなかった。自分の認識の甘さを恥じたい。

 さて、元々からトランプもヒラリーもTPP(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%92%B0%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%88%A6%E7%95%A5%E7%9A%84%E7%B5%8C%E6%B8%88%E9%80%A3%E6%90%BA%E5%8D%94%E5%AE%9Ahttps://vdata.nikkei.com/prj2/tpp/)不参加を選挙戦で公言していた。どちらかと言えば、ヒラリーは掌を返すかもしれないと言われることもあったが、トランプの場合の方がその可能性は低いだろう。ただ、判りにくいという意味では判断は難しい(HPからTPPに関する公約を外しているという情報もある:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161112-00000064-san-n_ame)。
 日本では、民進党あたりから「トランプが次期大統領だからTPPを進めるメリットが無くなった。今、日本で議決する意味はない。」といった声が聞こえてくる。だが、私は今こそそのチャンスではないかと思うのだ。

 元々、私はアメリカが主導権を発揮してきたTPPには否定的であった。アメリカがターゲットとするのは基本的に日本であり、当然両国の意見は対立する。もっとも最後には、アメリカ政府は国内の反発を納めきれないとは以前より考えていたが、現状はまさにその様相を示している。オバマ政権はレームダック状態であり、TPPを批准にまで持ち込めないだろう(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161112/k10010766311000.html)。日本は建前上、オバマ政権に期待すると発言するかもしれないが、それはリップサービスに過ぎないと思う。
 では、アメリカ抜きのTPPは意味がないのか。確かに、現状の手続き上はGDP比率でアメリカが抜けると条約は発効しない。だが、別に今のTPPを続ける必要はない。新たに残りの11か国で新TPPを成立させればよいのである。既にメキシコからそのような発言が出ているようだ(http://saigaijyouhou.com/blog-entry-14166.html)。これまでにいろいろな詳細手続きは終えている。むしろこれを機に、アメリカとの妥協で無理やり押し込んだ条項は削除すればよい。

 アメリカを含まない貿易協定にどれだけの価値があるのかと言えば、確かに現時点では大きな力はないだろう。だが、そこに参加したいという意見を表明していた国々も少なくはない。環太平洋の多国間協定ができるということそのものについては、私はポジティブに考えている。
 むしろ、アメリカが抜けた今だからこそより良い協定を作るべきではないかと思う。あまり露骨なことまでは出来なくとも、残りの11か国と妥協できれば多少は日本に有利な形での修正はありだろう。

 TPPには、新たに参加する国家はそれまでの規定を全部丸呑みし、さらに批准国からの注文を飲まなければ参加できないという規定がある。アメリカが参加しなくとも、多くの国々を参加させていけばその設立の中心的立場を有する日本にとっては大きなメリットとなるだろう。
 現状、アメリカが揺らいでいる。トランプの傾向はモンロー主義(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%BC%E4%B8%BB%E7%BE%A9)的である。資源の豊富なアメリカは一国主義でも最悪生きていける。しかし、それはアメリカの世界的な影響力の低下につながり、最後にはドルの価値を毀損することになる。
 アメリカにとって最も守るべきは、ドルの世界基幹通貨としての地位である。モンロー主義はそれを担保しないという意味で、どこかの時点でトランプも方向性を変えるとは思う。その時には再度拡大しつつあるTPPに参加する意向を示すことも十分考えられる。その時に、先に基準を定めて行くことは日本にとって大きなアドバンテージとなる。
 日本対アメリカではなく、TPP批准国とアメリカという構図に出来るからだ。同じことは中国に対しても言えるだろう。無理矢理参加をお願いする必要はない。だが、一種保護貿易とも思える囲い込み貿易圏は、食糧事情にネックを持つ日本としてはかけておきたいカードとも言えるのではないだろうか。

 今後の交渉も基本的にはタフなものであり続けるのは間違いない。アメリカと中国と言う、最も自分勝手な二国を含まない形での船出なのだから、様々な嫌がらせを含めた抵抗はあってもおかしくない。だが、それでもアメリカを抜いた形でスタート出来ることは日本にとって僥倖ではないかとさえ思うのだ。