Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

愛しき「おじや」

「おじや」とは、スペイン語で「鍋」、またそれから転じて「鍋料理」を意味するオジャ(olla)に由来するとの俗説があるが、別の説によれば煮込む音である「じや」に接頭語の「お」が付いたものの方が確からしいとの意見もある。
とは言え、人によっては全くそのような言葉を聞いたことがない人もいるであろうと思う。
wikiによれば、「おじや」は雑炊と同義であると分類されている。
wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%91%E7%82%8A
ネットで画像を検索してみても、その大部分は雑炊と言えるものばかりである。
もっとも、wikiにあるように「おじや」と雑炊は別物であるとしている地域も存在する。私も子供の頃は、雑炊ではなく「おじや」を食していた。
というか、子供であった私にとってはそれは全く別物であったわけだ。

実際、雑炊でもそうかもしれないが家庭の味や地域の味は、相当バラエティに富んでいるものである。
正月の雑煮もしかり、おはぎもしかり。
そもそも、外食のそれと異なり家庭での雑炊は家で鍋料理をした後の残り汁を利用したものとして、作られるのが多いのではないかと思う。しかし、私が子供時代に味わった「おじや」は鍋の残り汁ではなく一から作られる料理の一つであったのだ。それは、主に風邪で寝込んだときに作られるが、普段でもたまに食事として母親が作ることがあった。

イメージとしては、昆布や炒り子などで出汁を取り醤油やみりんで味付けをした雑炊を、水が飛ぶ寸前まで煮込んだものと考えて貰えばよい。
ちなみに、単純に卵が溶いて混ぜられるだけでなく刻まれた野菜も同時に混ぜられ、昔は肉も安くなかったせいもあるだろうが私のうちではいつでもちくわが加えられていた。
その味付けの秘密は母から聞いてはいないのだが、単なる雑炊とは明らかに異なっている。

ちなみに、別の地域では味噌味の雑炊を「おじや」と呼ぶところもあるようだ。
(語源由来辞典:http://gogen-allguide.com/o/ojiya.html

似たようなもので言えば、世間一般に「お粥」と呼ばれる一品は我が家では「おかえさん」と呼んでいた。
これはまさに粥(かゆ→かえの変形)そのものであり、そこに違いは見いだせない。
病気でも、相当具合が悪いときにはこれを食することになったのだが、病中でも全く食欲の衰えない私はほとんど食べた記憶がない。
ちなみに、「おかえさん」という言葉は和歌山方面の方言であるとの話もあり、関西全般では「おかいさん」の方がよく用いられているという情報も見受けられるが、正確なところはよくわからない(和歌山では「おかいさん」は茶がゆであるとの話もあるようだ)。
(関西弁基礎講座:http://homepage2.nifty.com/GANSO_hirokun/kouza21.html

さて、話は戻るがこの「おじや」。そういえば、子供時代以来食べた記憶がない。
我が家で鍋を食べた後に雑炊をする時にはやや深めに煮込んで水を結構飛ばしているだが、それでもかつて食べた「おじや」とは何かが違って感じられる。
それは単に記憶が美化されているのか、あるいは何かを見落としているのかわからない。
ただ、子供時代の記憶と共に存在する「おじや」が今も記憶の一部にしっかりと処を構えているのは間違いない。

「記憶は時間と共に変形し、理想化される。しかし、再び会うことがなければそれは素敵な宝物でもある。」