Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

流行語

 今年は流行語大賞(http://singo.jiyu.co.jp/)に4つも選定されたらしい。いずれも良く耳にした言葉ではあるが、4つを選定しながらも「アベノミクス」を大賞に加えなかったあたりに選者の趣向が色濃く反映されているとも伺える。たかが流行語ではあるが、それでも一時の断面を反映しているとすればこれも世相を見る上で重要な要素でもあろう。

 さて、今年の大賞に選出されたものは以下の4つである。
●「今でしょ!」:個人的には本命だったと思うが、最終コーナーで他の候補に追いつかれた感じだろうか
●「お・も・て・な・し」:流行語大賞ほどのインパクトには欠けると思うが、東京オリンピック効果ということで
●「じぇじぇじぇ」:東北(震災)枠選出という感じだが、個人的には「あまちゃん」のブームはやや意外だった
●「倍返し」:社会に与えたインパクトで言えば対抗枠の一つであったように思う

 まあ、流行語について言えば昨年のそれが何であったかでさえ思い出せないほどに儚げなもの。ちなみに2012年は「ワイルドだろぉ」、2011年は「なでしこジャパン」、2010年は「ゲゲゲの」、2009年は「政権交代」だそうである。確かに過去のそれらに比べれば今年は流行語豊作の年であったのかもしれない。
 考えてみれば流行語の賞味期限は短い。2009年の「政権交代」などは今となれば時代のあだ花とさえ言えなくはないが、それでも歴史的な事実として一定の意味を持つ。盛者必衰の理とは言えども、自滅にも似た行動は逆に言えば本来勝者になるべきではなかったものが偶発的にその地位を得たのだとも言える。
 この偶発性は一時的なブームとも呼べる現象ではあったが、その一翼をメディアが担ったのは言うまでもない。その時メディアが言っていた言葉を今見直せば、現政権にかけられている言葉との矛盾が浮き彫りになる筈ではあるが、ネットに情報が溢れているこの時代であってもいちいちこうした情報を掘り起こそうとする人は少ない。結果として、流行語と同じようにメディアの報道も人々の記憶からは消えている。

 「人の噂も七十五日」とは言うものの、現代社会ではネット上にばらまかれた醜聞は容易には消えず、リベンジポルノ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%8E)問題として提起されている。もっとも、欧米では既に法的枠組みが構築され始めているようだが、社会的基盤が弱い者ほど粘着性の高いネガティブな情報に対する抵抗力が弱い。
 一方で、ポジティブな情報は一時のブームを巻き起こしたとしても、流行語大賞と同じように気付けば記憶の引き出しに仕舞いこまれてしまう。情報としての断片は残るものの、当初の感動は霧散してしまってるのである。感動なきところに情報の価値なしで、結果として情報の重要性が大きく低下してしまうのだ。情報が氾濫する社会だからこそ、ある情報に永続的な価値を持たせようとするならば、相応の変化や補強が続けられなければならない。最も醜聞情報のみは根強く生き続けるが、これは人間の性なのだろう。