Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

クエ喰いねぇ

そろそろ忘年会シーズンである。今年は例年よりも寒いようだが、寒い冬ほど鍋が恋しくなるのは多くの人も感じるところだと思う。その鍋の中でも私がこれまで食べた中ではクエ鍋が最もおいしかった。
毎年年末になると親しい者と連れ合ってささやかな忘年会を開いてきたが、できることなら毎年異なった美味しさに出会いたいと様々な鍋に挑戦してきた。産地は忘れたがアンコウ、下関のフグ、富山の寒ブリ、現地から取り寄せた新鮮な魚を料理人さんに捌いてもらったものは、刺身にしても鍋にしても普段食する素材とはレベルが違う輝きを放っており、その美味しさに舌鼓を打ちながらも同時に驚嘆っぱなしだったが、その中でもやはりクエ鍋はダントツの質の高さを誇っていた。

そもそも、クエ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%A8)とはハタ科に属する大型の海水魚である。普通は成魚で60cmくらいであるが、大型のものになれば1mを超える。見た目はやや鈍重な感じではあるが、味の方は鈍かったり曖昧だったりはしない。ナマコなどを見ても思うが、こうした生き物を初めて食した人は生きていくためには仕方なかったかもしれないが勇気があったなとは思う。
ちなみに、同じ魚が福岡ではアラと呼ばれていることは有名である(ちなみに関東では「モロコ」と呼ばれているらしい)。

クエは高級魚として知られているが、それ故に他の魚による偽装が行われることもあるようだ(http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/kansa/080319_1.html)。近年ではいくつかの場所で養殖に成功しているようで値段は天然の半分と言われているが、味の方は天然物には敵わないようである。クエで有名な和歌山県のいくつかの町では民宿などでクエ鍋を食べられるところもあるが、必ず毎日釣果があるとは限らないため新鮮なそれを提供できるかは曖昧であるとも聞いた。
クエ鍋の醍醐味は、身が美味しいこともあるがそれ以上にコラーゲンたっぷりの脂身にある。脂身とは言ってもべたつきなどは全くなく、舌の上で本当にとろけるのだ。これは、安いクエ鍋などを提供するところではおそらく味わうことができないのではないかと思う。
前年に青箱(特選ブランドとされる)の寒ブリを刺身や鍋で食べて、他の鍋とは比べものにならないと楽しんだにもかかわらず、クエ鍋はその遙かに上を行っていた。私は美味しんぼのような豊かな味覚表現はできないが、フグや寒ブリとはランクがやはり違うと言える。高級魚であることも頷ける。
ちなみに、大きさにもよるが料理人が入手したクエはおそらく10〜20kgくらいのものだったと思うのだが、漁師から直接買い付けた値段が20万くらいだと記憶している。もちろん、私達の忘年会メンバーのみでは食べきれる量ではなかったためその料理屋の他の客にも提供されたのだが、反応は概ね好評だったようだ。

ただ、途中でも書いているがクエが釣れるかどうかは運次第であって、忘年会の日を決めていてもその前に上手く釣り上げられるかどうかはわからない。逆に言えばそれだけの希少価値があるからこそ、美味しくいただけるとも言える。
この貴重な食材に感謝を。

今週のお題「冬のおいしいもの」