Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

北朝鮮体制の瓦解

昨日、金正日の死亡が報道された。報道によれば17日に突如死亡したとされている。
北朝鮮の報道全てを鵜呑みにすることはできないが、公表されたのだとすれば最低でもその報道は中国の了解を経た上でのことだと思う。
金正恩への権力委譲は、金正日死亡前から計画されていたことではあったものの、おそらく軍の全てを掌握するには至っていない。それ故、どこかの大国によるバックアップを受けざるを得ないと思う。その可能性が最も高いのは中国、そしてそれに次ぐのがアメリカであろう。場合によっては、両者を天秤にかけながら体制の維持を約束させたかもしれない。

現実には、中国についても韓国についても、北朝鮮体制の急激な崩壊を避けたいという意志が強いのは間違いない。
それ故に、独裁的な金正日政権が問題あることは重々承知しながらも、根本的な手が打てなかったのだ。
その状況に現状変わりがあるわけではない。むしろ、状況はおそらく切迫したと考えるべきだろう。
切迫したが故に、一時的には現体制の維持に周辺各国は協力せざるを得ない。
例えば、今朝こんな報道がされていた。北朝鮮がウラン濃縮中断(中央日報http://japanese.joins.com/article/577/146577.html?servcode=500§code=500
六カ国協議の再開へ向けた動きである。

現状、北朝鮮政権内部では二つの勢力が権力の掌握に努めていると予想する。
一つは、軍部の集団指導体制を図るグループ。この場合、当面金正恩を象徴的なトップに立てるが、その後のスムーズな権力委譲を企てる可能性は少なくない。
もう一つは、金正恩を中心とした中央集権体制の維持であろう。
どちらが主流派であるかはわからない。ただ、六カ国協議の再開に大きなメリットを見出すのは軍の集団指導体制を図るグループではないだろうか。中央集権体制を確立しようとすれば、むしろ限定された軍事衝突などによる抗争を際立たせることでの権力維持の方が可能性が高いと思う。なぜならば、当面の体制維持は中国なども望んでいるものの、金王朝の継続そのものを望んでいるわけではないからである。金王朝を維持することで権力の地位に留まろうとすれば、中国とすらも表に裏に様々な駆け引きをせざるを得ない。

だとすれば、周辺各国が畏れるのは金王朝の維持を図ろうとする軍の一派による内部抗争ではないかと思う。
金正恩個人が、自らの権力維持に否定的な軍幹部を粛正できるほどの力を現状で持っているかどうか、これについては現状なんとも図りかねている。
権力抗争が国内的に大問題となれば、おそらく多くの難民が発生する。これは、中国国境と韓国へと押し寄せることになる。数百万人〜数千万人とも言われるそれを受け止める余力は、中国にも韓国にもない。しかし、軍の力で協力にそれを押し止められるほど短い国境線でもない(これはロシアも同じ)。仮に崩壊が生じれば大混乱となる。

おそらく、金正日の調子がおかしくなってから(あるいは早期の死亡から)アメリカ・中国・北朝鮮(場合によってはロシアも含む)の実務当事者間で事態の収拾方法を協議してきたのではないかと思う。それがいつからかはわからないが、当面の方策が定まったが故の発表だったのであろう。
北朝鮮金王朝体制維持は、アメリカと中国(・ロシア)を天秤にかけることで維持されてきた。これは、天秤を受ける支点である金正日の力があったからこそ可能な施策である。逆に、それが欠ければ体制を維持できる可能性は極めて低い。アメリカも中国も金王朝の継続を望んでいたわけではないのだ。中国は長男の金正男を保護することで、いざと言うときの代替案を維持し続けている。しかし、アメリカはそのようなカードを持たない(同時に、北朝鮮崩壊でアメリカが直接ダメージを受けるわけでもない・・間接的には核技術の流出という恐怖はある)。

とすれば、アメリカと中国の間で以下のような妥協が図られる可能性が無いわけでもない。
体制崩壊後の北朝鮮の安全維持については中国が責任を持つ。ただし、そこへの投資はアメリカの参加を認める。
次に行われる六カ国協議は、おそらく実質的な北朝鮮解体(しかし、同時に当面維持)への協議の場となるだろう。
日本と韓国は、金を出さされるだけに終わりそうだ。それは、今回の金正日死亡に関する情報がこの両国政府に流されていた雰囲気が感じられないからである(野田総理の街頭演説が突如中止されたことや、日韓首脳会談が数日前に行われていたことからも類推できる)。

さて、当面のリスクは金王朝維持を狙う勢力による暴発であろう。
逆に、これら面々が早期に粛正される可能性も捨てきれない。
そう遠くない時期に、実質的な金王朝は崩壊するのではないだろうか。

拉致問題の解決のために、日本は早期に日本の法律を変えて自衛隊北朝鮮に送り込める体制を整えなければならない。」