Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国が屈辱的な米韓FTAを進めた理由を推測する

TPP推進に関して、米韓FTAがいよいよ締結されようとしており日本が取り残されると言った報道もなされているが、その内容については現時点ではメディアであまり触れられることがない。
しかし、詳細情報については未知の部分もあるものの、徐々にその内容が韓国にとって決して喜ばしいものではないことが知られるようになってきた。

韓米FTAの問題点について、てかまる日誌さんのまとめ(http://tekamaru.iza.ne.jp/blog/entry/2478080/)を以下のとおり参照したい。

(1)サービス市場開放のNegative list:サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。

(2)Ratchet条項:一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。

(3)Future most-favored-nation treatment:未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。

(4)Snap-back:自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。

(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement。韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。

(6)Non- Violation Complaint:米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して 韓国を提訴できる。例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。

(7)韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。

(8)米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用
例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。

(9)知的財産権を米が直接規制
例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1〜2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSであっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。

(10)公企業の民営化

上記の内容を見てみると、控えめに見てもアメリカにとっては有利で韓国にとっては不利な内容になっているように感じる。もちろん、詳細全てに渡って全くこの通りかどうかはわからないのだが、それにしてもこれに近い内容が事実だとすればかなり韓国にとっては厳しい内容だ。
でも一方で疑問も湧き上がる。なぜ韓国はこのような不平等に近い内容であってもFTAを結んだのかという点である。普通に考えれば、国家として自国に不利なFTAを結ぶ必然性などは到底考えられないはずである。

まず、韓国は日本と比べてもGDPの貿易依存度が非常に高い。
だから、国家として生きていくためには輸出は必須事項である。
食糧自給率およびエネルギー自給率は日本より若干高いもののほぼ同レベルであり、エネルギー効率は日本よりかなり悪い(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4060.html)。
それ故、貿易相手、特に売り先の確保は国家の存続とまでは行かないものの国家成長の必須事項である。
もちろん日本の場合も輸出が重要なことに変わりはない。
それでもGDPにおける貿易の比率が韓国の1/3〜1/4程度の日本からすれば、韓国ほどの真剣さは抱けないかもしれない。

韓国は、国として生き延びるために輸出を最大限に伸ばす政策に特化している。
それは内需がまだ不十分であるが故のことであるが、同時に日本人以上に民族意識が高いからなのかもしれない。
ユダヤの民は国を失っても民族意識を失わなかった。かつての華僑(新華僑ではない)も住む場所こそは世界に広がれどそこで中華民としての生き方を続けてきた。
今の韓国の動きを見ていると、国から外に出ることを国全体が推奨している。それは他国にバカにされようが問題とはしていない。世界中に散ろうとしているように見える。
だとすれば、韓国政府は国内を守るよりも打って出ることを決意したと考えてもおかしくはない。
もちろん、国を解体することなどできないので国内政策が重要でないはずもないが、国内的には多少の不平等があろうとも世界に進出することを有利と考えたのではないだろうか。
通貨安政策は諸刃の刃であるが、現時点では輸出を拡大する上では大きな効果を上げている。
また、FTAで不利になっても自国の通貨が安ければ海外製品は容易には国内には入って来られない。
それは結果的に、国内企業を外資に奪われる危険性が増すことでもある。

翻って日本はどうか?
元々内需が韓国など比べものにならないほど大きい。
それでも世界進出をしていないわけではないが、どちらかと言えば世界に投資をしてその投資の利益を得ようとしている国家である。すなわち、世界の富を国内に集めようとしている。しかし、同時に世界的には最も関税が低く開かれた国の一つでもある。
すなわち、韓国のように慌てて国を開く決断をしなくても良い。それだけの状況を既に作っている。

韓国は、果敢にチャレンジをした。
それは挑戦者としては勇敢だが、保守的に見ればハイリスクの賭に打って出ているようにも見える。
現時点においては、若干成功を収めたかのように見える。
サムスンの電化製品は世界中を席巻しつつある。
ただ、その次の戦略は今のところまだ見えない。
そして、日本が韓国と同じ賭に出る必然性はない。立場や環境が異なるためである。

もちろん、韓国なりの戦略があるのだろう。
ただ、彼らが考える成功と私達が考える成功が同じ線上にはないのかもしれないと感じている。

「日本の成功とは何なのだろうか。おそらくそれはアメリカと同じ道にもない。」