Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ユーロを食らえ

かつて日本が経験した金融危機と同じような状況でかつ規模を大きくしたものを現在のヨーロッパは経験しようとしている。
日本が住専問題などバブル崩壊の負の面への対処を行っていたとき、欧米は一体何をしたのか?
早急すぎるような不良債権処理を迫り、破綻せざるを得なくなった日本の金融機関を二束三文で買いあさったのだ。
同じようなことは、アジア金融危機時の韓国でも行っている。今では純粋な韓国資本の銀行はほとんど存在しない。

さて、今のヨーロッパ。より規模が大きくて、内容は同じような危機が来ている。
銀行が、利率が高いからとギリシャの債券を買っていた。でも売るに売れない。
数年前から、不良資産ですから早急に処分するという話もあったが、先延ばしを繰り返してきた。
ここに来て、ギリシャがどうしようもないという状況になって喧々がくがくである。

先日、欧州金融安定基金(EFSF)をレバレッジを効かせて拡充することで、ギリシャの債券部分放棄で資本不足を生じた銀行にはまず各国が資本注入、それでも不足する場合には基金の資金を利用するという合意がなされ、世界中の株価はそれを好感して上昇した。
しかし、考えてみれば現在の世界の金融危機は何によりもたらされたのであろうか?
それは、過度なレバレッジの反動だったのではないか。
だとすれば、債権放棄=そのレバレッジを縮小しようという段階で別のレバレッジを利用する。
単に民間金融機関の保持していたレバレッジをユーロ(実質ECB)に移し替えているだけである。
しかも、わざわざレバレッジを効かせると言うことは、要するにその資金をユーロ参加国から集めきれないということでもある。実際、通貨統合していないイギリスは資金拠出をするつもりはなさそうだ。
日本は現状幾ばくかの資金を提供する見込みである。

さて、ギリシャの債券カットだけでこれだけの騒ぎである。おそらく、アイルランドポルトガルもそれに続くタイミングが来る。加えて、イタリアの状況がスペイン以上に厳しそうである。そんな状況で、EFSFは参加国家以外の民間金融機関からレバレッジ用の資金を集められるのであろうか?
さらに、レバレッジは元手になる債券(基本的には参加国の国債であろう)などの信用の上に確保される。しかし、ユーロ諸国は自国の金融機関救済のためにこれから国費を投入する。だとすればこれらの国債の格付けが下がった場合にはこのレバレッジは成立するのであろうか?疑問は正直尽きない。
私個人としては、先送りの手法を手を替え品を替え繰り返しているように見えている。

まあ、ユーロの危機はそれが100%日本に降りかかるわけではない。
危機が先延ばしされても、現状の枠組みで行く以上いつかはまた問題がより大きくなって噴出する。
国がどのように民間金融機関の債務を肩代わりするかを揉めているだけなのだから。
民間を救うために資金を投入すればするほど国債の信用は低下して、民間救出のためのお金がさらに必要になる。
そのネガティブループから抜けられる光明はまだどこにも見えていない。
さて、日本としては今資金提供による手助けをするよりは、もっと問題が噴出する時期になってからゆっくりと救済にかこつけて優良金融機関などを手に入れるのが、かつての日本が受けた欧米からの「好意」に対する対応な立場からのお返しだと思うのだがどうであろうか?
少なくとも、今後も金融機関救済のためにユーロ諸国がお金をばらまけば、対ユーロでも円高は継続する。
だとすれば、円を用いていてユーロ圏の良い企業などを底値で買いたたく最高のチャンスがもうすぐ来ると言うことでもある。

とは言ったものの、おそらく日本政府はそんなことをしないだろう。
日本の金融機関が大儲けをできるチャンスであっても、善意の資金提供程度で済ませてしまうのではないかと思う。
倫理的には日本人の心情に合うかもしれない。
しかし、危機が去った後には再び欧米は一定以上の回復をするであろう。
そのチャンスを見逃す理由はないではないか。
もちろん、金融危機の欧米企業を助けるのである。
日本の金融危機の時の欧米ハゲタカと同じことをやり返せとは思わない。
合法的に助けて、合法的に利益を得ればよい。

さて、日本政府はその旗振り役をできるのだろうか?

「中国はやや拙速にそれを進めているようだが、もう少し待った方が良いだろう。」