Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

代案は東アジア共同体ではなく、拡大APECでしょ

TPP参加不参加の議論が白熱している。
当初は様子見を決め込んでいた議員も多かったのだが、反対論が予想以上に強くその論拠も比較的わかりやすいことから、反対派に乗ろうとしている議員がかなり増えたように思う。
メディアも賛成一色だったのが、予想外の反対論者の多さにそれを取り扱わざるを得なくなった感もあり、京都大学の中の准教授が全国放送で登場するようになった。
これまでは、TPP反対は農業を守るためだとレッテル貼りを続けてきたのだが、農業問題など些細なことであってそれ以外にも大きな問題が山ほどあるということも徐々にではあるが知られるようになってきた。

日本を含めた参加10カ国のGDPを合計すれば、日本とアメリカで90%を超える。
すなわち、日本が輸出しようと思えば購買力があるのはアメリカ、アメリカが輸出しようとすれば実質的に日本しかない。
過去においても日米FTAに対する議論は何度も行われてきたが、FTAは二国間協議であって例外事項が多くなるためアメリカとしては旨みが少ない。農業も自由化できず、制度等も日本固有の制度をやめさせるにはパンチが弱いというわけだ。

でも、国内雇用が戻らず失業者の高いアメリカとしては、輸出を大きく伸ばしたい。
アメリカはもう随分昔から製造業は国際的な競争力が高くない。
強いのは、農業と軍事産業に加えて金融立国を目指したように金融サービスが非常に強い。
だから、輸出するとすればこれらを他国に押し込むしかない。
中国はまだそれができるレベルにない(それでもアメリカ発のサービスはいろいろと浸透している)。
欧州はユーロで組んでいる。
だとすれば、、、、残るは韓国と日本しかない。
韓国はTPPの方がより不味いと米韓FTAを選択した。その交渉の中でどのようなやりとりがあったのかはわからないが、私達日本人から見えれば韓国国民にとっては不利な協定だと見える。それでも、TPPに入るよりはマシだと考えたのかもしれない。
TPPは環太平洋の協定であるが、中国・韓国以外にも主要な国で参加していないところがある。
それは、カナダとメキシコ。
どちらも北米自由貿易協定NAFTA)の参加国だ。
TPPが本当にメリットのある協定であれば彼らも参加を検討しても良さそうなものでもあるのだが、、、
NAFAで痛い目にあっている彼らは、そんなことを考えもしないのであろう。
要するに多国間貿易協定を用いてアメリカは自国に有利になる制度を作ろうとしているのである。

具体論で言えば、アメリカはあらゆる業界でのamazonを目指しているように見える。
生産者は世界中に存在するかもしれないが流通の要を抑えるのだ。そして、価格決定権を手に入れる。
それを食糧のみならずあらゆる分野に広げようとしてるのであろう。
しかし、安全保障面などから規制のある分野は多い。だから、露骨なものを除いてのTPPによる規制緩和なのだ。

TPPは自由貿易という面が強調されて報道されているが、私が見るところ自由貿易がメインと言うよりは経済連合がメインになりつつあるようにも思える。言葉を換えればブロック経済圏。
今後何かあったときのためにグループ(仲間)を作っておきましょうね。。。という感じだろうか?
そして、わずか4カ国でスタートしたそれれをアメリカは乗っ取る形で、仲間に入りたかったら一定の条件を呑め(しかも、それが今後定められるため明確にはなっていない)という具合である。
特に、元々競争力の強い日本が参加するのであればそれなりにペナルティを科そうとしている。いや、ペナルティではなく日本の弱い部分を突こうとしていると言っても良い。

ブロック経済圏的だなと思わせる主張には、中国に対する牽制、韓国に対する競争力を得るためという意見がある。
TPPに入ったから中国や韓国に対する競争力が高まるのか?
そんなことはあり得ない。円が高ければ関税が撤廃によって多少下がっても効果などしれている。
日本が売るのもアメリカしか考えられないが、アメリカの関税はそれほど高くないのである。

要するに、明らかに日本に不利な協定になるのはわかっているが、それを飲んでも参加すべきものなのかどうかということを考えなければならないのである。それを、TPPが日本にとって有利であると主張する政治家やメディアは困りものだと思う。
次に出るのは、ではTPPに参加しないのであれば日本は貿易によりどうやっていくのかというものだ。
別に今の状態でも関税は低い。今後嫌がらせのように上げられれば別であるが、それも考慮してか近頃では日本企業が韓国に工場立地を進めている。先日の日韓通貨スワップの拡大はそのあたりを睨んでのものではないかと推測している。

日本はAPECアジア太平洋経済協力)を利用すればよい。
日本にとってはその方がおそらく有利になるであろう。アジアは人口も多く、将来的な成長も期待できる。
アジアを取り込むというのであれば、TPPよりもAPEC参加国によるそれをする方がずっとメリットが高いと思う。
しかもそれを主導できるのは日本でもあろう。
なにもアメリカがお膳立てした日本にとって厳しいTPPに必ず乗らなければならないわけではない。
よりよい別の枠組みを作ればいいのである。

まあアメリカとしては様々な形で脅しをかけてくるだろうけどね。

「日本が別の枠組みを案だけでも出せば、アメリカは軟化せざるを得ない。だとすればブラフとしても参加反対論のみではなく、何かを提示すべきではないか。」