人と共生する菌
世の中には抗菌グッズが満ちあふれている。
しかし、潔癖症の人が聞けば卒倒してしまうかもしれないが、人間の身体には100兆以上の菌が生きている。
その重量が、合計すれば1(kg)近くになると聞けばさすがに驚かざるを得ない。
体重50(kg)の人であればそのうちの2%は人体に住む菌の重さなのだ。
菌が最も多いのが大腸で、大便は食べ物の残りカスだという認識が強いだろうが、大便の1/3〜1/2は大腸内などに住む菌の死骸であったり菌そのものである。
次に多いと言われているのは皮膚であって、人間の皮膚には多くの菌が生育している。
ただし、大腸内などもそうであるがこれらの菌は人間に害をなすわけではない。
それどころか、人間の細胞では成し得ない様々な機能を補ってくれている。すなわち、共生状態にある。
皮膚のそれは、人に害を及ぼす菌から人体を守る。
体内にあるそれは、摂取した食物の分解などを補助してくれる。
すなわち、必死に除菌する行為は外から来る悪い菌を退治できるかもしれないが、同時に身体に住む良い菌も減らす行為である。だから、最も良い状態はこうした人体と共生している菌が最もバランスよく生きられる状態を保つことなのだろうと思う。
そこに偏りができれば、悪い菌が増えた場合も、良い菌が減った場合もどうように人体には良くないのだ。
例えば、ビフィズス菌などは善玉菌と呼ばれて良いイメージを持たれているが、別に人にとって意義のある菌はそれだけにかぎらないどころか、数え切れないほど存在する。そしてその役割などは未だに知られていないものの方が多いのであろう。
翻って潔癖症というものを考えてみると、その方に対しては申し訳ないのだが本当に無意味なことだと感じずにはいられない。体重の2%が菌により構成されているというのに、しかもその菌は人間との共存関係を図る重要な存在であるというのに、外からの菌が怖いと共生するそれまで傷つけてしまう。
もちろん、潔癖症に至る過程が菌を気にすることだけではないのは知っているが、人間が感知できる綺麗さなど実質的には幻想でしかないのだと思えば笑い話のようなものである。
別に、だからといって汚くするのが良いなどとも言わない。わざわざ人に害のある菌を容易に近づける環境を作るのも、同じように意味がないことである。必要なのはバランスの取れた状況を作ることであり、その上で余計なストレスを受けないことであろう。
いや、その程度が気づいたからと言って潔癖症が治るものでもない。しかし、余計なストレスを抱えてしまう状況というのは残念だと思うのである。
そういえば、「3秒ルール」というものがある(地域によっては5秒とかいろいろあるらしい)。落ちたものを拾って食べても問題ない時間とされている。ちなみに、これには全く根拠はない。
落ちていた時間など関係ないことは、普通に考えれば容易にわかることである。
そりゃ長すぎれば風などにより埃もたまってより汚れるというのはその通りであるが、3秒でも10秒でも差異はないであろう。
では、落ちたものを食べても問題がないかというのはどうなのか?
これは確率論になる。偶然落ちた場所に重大な障害を与える菌が一定量以上(少量なら体内の防衛機能で駆逐できる)いれば問題だし、いなければ問題がない。あくまで確率論である。
あとは、落ちた場所がその確率が高いかどうかを見定めることになるだろう。
ただ、精神論になりそうではあるが、人は耐性をつけておいた方が良いとは思っている。
「何かを駆逐するということは、巡り巡って人に跳ね返る。」