Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

日韓通貨スワップ枠の拡大

野田総理が、日韓の通貨スワップ枠を1年の期限付きながら約5倍の700億ドル(5.4兆円)に拡大したことが大きなニュースになっている。
通貨スワップというのは、いざと言うときに外貨の枯渇を防ぐため特定の国から外貨を融通して貰う仕組みである。
実際、韓国は2008年のリーマンショックらか始まった通貨危機時には、米韓、日韓、中韓スワップを締結し、そのうち日本を除くアメリカと中国から外貨(具体的にはドル)を融通して貰っている。当時アメリカとかわしていたのが正確には覚えていないが300億ドル(約2.3兆円)であった。

さて、この通貨スワップはドルのみでなく円も含んでいる。韓国としては円資金よりはドルの方が良いのだが、それでも円も国際通貨としては汎用性が高い。少なくとも韓国ウォンよりは圧倒的にである。だから、韓国としてはいざと言うときのためには心強いのは間違いない。実際、僅か数日前に韓国の識者が無制限のそれを日本から得る(このあたりが偉そうなのだが)べきだと主張していた。そういう意味では日本の方から先に手をさしのべた形になっており、なぜ先に助けるのかという不満も一部には見られるようだ。

もちろん、今がベストかどうかはなんとも言えないが、日本が韓国を救わなければならない理由にはいくつかある。
それは、最近の円高により結構な数の企業が日本から韓国に工場等を移転していることがある。これら日本企業が確実に運営できるようにウォンの大きな下落を防ぐことが考えられる。加えて、円の後ろ盾ができればウォンは今後下がり続けない。すなわち為替による貿易の不利益がこれ以上広がるのをとどめる役割がある。
万が一、韓国がスワップを使えば手に入れた円を売ってドルを買うので、これも円安に寄与する。

だから、スワップ枠を拡大すること自体は悪い話でもなんでもない。
韓国に手をさしのべるのが気にくわない人も多いだろうが、基本的には通貨危機の可能性が高まった韓国救済であるものの、同時に日本もそれによりメリットを受ける。
あと、韓国人の性格を考えれば日本から借りるのはおそらく、アメリカや中国よりも後になると思う。実際、2008年は日本から借りなかったと記憶している。アメリカからは枠一杯借りたのにである。ましてや、大々的なニュースになっていればますますその傾向は高まるであろう。
だから、本当に日本とのスワップを利用するときは韓国が冗談抜きでやばくなったときであろう。
背に腹を変えられないときである。それが1年以内に来るかどうかはわからないが、可能性がそれほど高いとも思わない。

もっとも、交渉ごとであるので勝手にこちらが提示するだけでは芸がない。
本当であれば、韓国から話題に触れさせて何かの代償との交換条件を得られた方が良かったとは私も思う。
それが困難なのは、来年に大統領選挙を控えているため、韓国国内向けには引くことができないという事情があるためである。おそらく、韓国は今からそういった対日本において不利な交渉に乗る可能性は高くない。というか、乗れないだろう。
だから、提示の仕方の稚拙さは責められるべきではあるが、それ以上をあまり欲をかいても仕方がないだろう。
しかし、もう少し上手くやるべきであろうに。今の政府の外交の下手くそなこと。。。

あと、スワップは貸したときのレートで返却しなければならない(しかも原則利子付き)。だから、根本的な破綻がなければ必ず返却しなければならない資金なのだ。ちなみに、もし仮に韓国がデフォルトするようなことがあれば日本は5兆円なんて軽く超えるレベルの損失を国全体としては受けると思う。だから、溜飲を下げる意味で助けないというのは日本にとってもデメリットとなるであろう。

ただ、韓国に本当の危機が訪れたときにはもっと大きな対価を伴って貸し付ける機会が再度あるはずである。その時に政府首脳にやる気があればの話であるのだが。

「外交における友情ほど、嘲笑を受けるものはない。」