Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

金利上昇と不動産バブル崩壊、そして民主主義の試練

 コロナ問題は、再びの冬を目前に欧州(独コロナ新規感染者急増、24時間で1万1287人 過去最多を大幅更新 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News)やアメリカ(米国のコロナ感染者、1日で7万9963人 過去最多 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News)で再活性化の状況(スペインのコロナ感染者、実は「3百万人超」と首相 公式発表は百万人 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News)を迎えつつある。特に第一波ではそこまで広がっていなかった東欧での感染爆発の可能性(ポーランド大統領、コロナ検査で陽性 国内で感染拡大 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)がありそうだ。一方、中国での感染状況の実態は正直なところ分からないが、それでも大都市で急速に広がるといった気配はない。総じて、東アジアおよびオセアニアでは感染状況が安定しているように見える。ただ、開発中のワクチンによりコロナが容易に制圧できないであろうことは何となく予想できることから、今後コロナはインフルエンザと同様に社会に定着する可能性は高そうだ。それは何を導き何を意味するのか。私は、恒常的な人間の活動量の低下であり、徐々にではあるが社会の縮小化を促すのではないかと考える。従来より日本では人口減少により社会の縮小が進行している。都市はコンパクト化を推進し、企業はIT化や自動化による人減らしを続けている。だからこそ、観光や遊びを社会の活力として進めなければならない状況になっている。それは社会の成熟がもたらすものと言えなくもないが、縮小社会の行き着く先とも取れる。

 さてそんな中、世界ではコロナによる経済の落ち込みを防止するため、過去に類を見ない経済緩和を実施している。おかげで、失業率も高くV字回復も望めないにも関わらず株価はコロナショック前のレベルに復活し、一部ではそれを大きく超えて上昇した。一方で、コロナ感染の拡大により上昇した債券価格がじりじりと下げ始めている(11月3日に迫った米大統領選挙、心配な暴動)。株価が上昇し債券価格が下がるのは景気がよい時の生じるパターンであるが、実際には世界的な景気は最悪の状況にいる。債券価格が下げるということは金利が上昇すると基本的にイコールであり、コロナショック直後に危機がささやかれ、政府や中央銀行ついにジャンク債まで購入するFRBの危機感 | コロナ戦争を読み解く | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)の金融緩和により生きながらえたジャンク債が再び危機を迎える可能性が高まることを意味する。金利が上昇すれば格付けは下がり、同時に政府支出が難しくなるからである。そしてもう一つ、不動産業界が大きなダメージを受けるということにもなる。

 

 不動産は大口の投資家による大規模投資もあるが、同時に数多くの不動産ローンを抱える業界でもある。そして、コロナにより収入の途絶えた人たちのローン返済や賃貸物件の賃料支払い問題が既に生じている(世界的に住宅ローンの延滞が急増しそうだ | 大槻奈那先生、金融の修羅をゆく | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)。それらは一時的に政府方針で猶予された(海外で強まる「家賃猶予」の動き、今後日本にも波及するか |楽待不動産投資新聞)としても、必ずどこかの段階で破裂するだろう。コロナ不況が政府とが設定する猶予期間内で収まるのであればともかく、私はその時間で終わるとは思えない。コロナは社会の仕組みを変える。だから、今復帰が困難な業界はそのままでは元には戻らない。現在は、給与に変動のなかった人たちによる郊外移動による新築業界のプチバブル(NAR Research on Twitter: "Total existing-home sales rose 9.4% from August to a seasonally-adjusted annual rate of 6.54 million in September. #NAREHS… https://t.co/pX65ca0M9e")がアメリカでは発生している(米住宅着工件数、9月は増加-需要増の一戸建て約13年ぶり高水準 - Bloomberg)が、それは長続きするものではない。逆に言えば都市中心部では人が消えているということでもある。

 かなり以前より、シリコンバレー周辺では不動産が高騰しすぎて一般的な給与では住めないということが常態化していた。日本ではそれほどではないが、世界の多くの地域では不動産価格がかなりバブル化している。金利が上昇しコロナ不況が今後も継続すれば、MBS住宅ローン担保証券)が下落しリーマンショックと同様に金融危機に波及する可能性が大きく跳ね上がる。もちろん、アメリカ政府などがリーマンショックと同じ轍を踏むとは思わないが、既に過去の例のない金融緩和を行い、さらにはそれを継続する意向を示しており打つ手が限られることになるのではないか。

 また、政府の財政出動が増加すれば一時的に株価が上昇するだろうが、先ほども触れた金利の上昇によりより大きなダメージを受けると考えられるからである。確かに、日本政府は以前から大きな財政支出を続けてきている。基軸通貨国であるアメリカも同じで、こうした国々は財政支出を継続できる可能性は高いだろう。だが、それ以外の国家にその余力はない。だが不景気を放置できずに支出をせざるを得ないとすれば、その先にあるのは金利上昇と不動産バブル崩壊ではないか。そしてその後に大きな金融危機に至り株価も下落する。ただ、世界には溢れるほどの資金が存在するため、それがどこで噴き上がるかはわからない。

 

 さらに言えば、不動産バブル崩壊に最も近い国がある。それが政府統制によりかろうじて不動産バブルを維持し続けている中国であり、ソウルなどでの不動産バブルを抑制できない韓国である。両者は似て非なる状態にあり、バブルの加速を抑制しつつも経済失速を恐れ不動産価格下落策もとれないのが中国であり、文政権による執拗な不動産価格抑制策が全く機能していないのが韓国である。私個人の考えとしては、先に引金を引くことになるのは韓国ではないかと思っているが、まだその時期については何とも言えない。不動産から抜けた資金は、別の何かを持ち上げていく。

 アメリカを中心としたカネ余りが引き起こした仮初のバブルが世界中に感染し、その果実たる爆弾が各地で成長している。今はそれをギリギリのところで制御しながら、さらにバブルを拡大させているのが現状である。これが破裂するとすれば、その影響は決して小さくはないというか、未曽有の現象を引き起こすだろう。怖いのは、世界中のものを買い占める形でのインフレーションの進展であろうか。供給過多の場所ではカネ余りがあってもインフレが生じないのは、近年の日本が体現している。だが、それを維持できる国家は限定されている。その上で、カネ余りバブル病は世界にスタグフレーションをまき散らすのではないかと懸念する。アラブの春が世界中で形を変えて生じるとすれば、世界の構図は大きく変わるかもしれない。それは私たちが望む民主主義にとっては悪夢の姿をしているだろう。