Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

日本学術会議問題

 また忙しさにかまけてエントリをさぼっていたが、たまには何かに触れておこうと表題について考える。私などは、縁もゆかりもない状態ではあるが、日本学術会議日本学術会議|わが国の科学者の内外に対する代表機関)という組織が存在する。その詳細は既にいろいろな報道で明らかになっているように、優れた業績を認められた(と学術会議が推薦する)人が交代で運営する機関で、政府からその資金が出ているが、所属しても言うほどお金がもらえるものではない。ただ、政府が設置しているアカデミズムの元老院的な位置づけであることから、メンバーは社会的な権威を獲得できる。その一部は学士院に入ることになり、また別の人たちは文化勲章等の各種褒賞候補になるという意味で、将来的にも研究者というよりは名士としての地位を固めるために都合の良い組織である。少なくとも研究者や学者を代表する組織であるとは私は思わない。

 すなわち、マスコミが喧伝するように「学問の自由を云々」という問題とは全く異なり、そこに所属できなかったから学問の自由が侵害されるものでは全くない。むしろ、学界の政治圧力団体としての地位を担保するための組織であると考える。逆に言えば、政府が設置しているからこそ認められているという側面もある。

 

 これも既にニュースとなっているが、日本学術会議が提言した内容が国民にとって望ましいものとは言えないことがわかってきた(「総理は多様性を認め、政策に生かして」 日本学術会議・大西隆元会長が本紙に寄稿:東京新聞 TOKYO Web)。どうやら、レジ袋有料化や消費税増税を提言しているという。これ以外にも一部の有望な研究を会議の幹部が圧力をかけたこと(北大・永田教授、学術会議の圧力に言及 防衛省の制度への応募が禁止に(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース)なども報じられている。

 

 個人的な感想を言えば、全くどうでもよい問題にマスコミと野党が飛びついたというものでしかない。まったくもってくだらない。日本学術会議にも当然意義はあり、役立つ活動もしていると思うが、逆に意味のない問題のある活動も行っているだろう。そして、そうした問題ある活動が特定の思想を持つ研究者により牽引されているとすれば、それは是正されるべきだと思う。

 今回の問題が明らかにしたのは、これまで国民が政府を信用して特に追及されることのなかった組織が、問題を持っているかもしれないと社会に知らしめられたことではないか。私は推薦を拒否された研究者を知っているわけではないが、こんなことで政権が倒れるようなことはあり得ないと思うし、逆にあってはならないと思う。

 また、私の想像に過ぎないが日本学術会議とは関係ない大部分の学者や研究者は、高慢な態度でマスコミに出るこうした人たちのことを苦々しく思っているであろう。

 

 さて、今回の問題を受けて実は政府が失策と感じている政策の一部を、日本学術会議に押し付けて問題の回収を図るのではないかという意見を見かけた(U.S.S.BlackPrince on Twitter: "レジ袋有料化とか、財政再建のための消費税増税とか、日本学術会議がこれまでしたという提言がどれもこれもヤバイ、どれくらいヤバいかというと、近年の失政のきっかけを全部押し付けられそうなぐらいヤバい。")。私もありそうな話だと思う。さすがに会議自体を無くしてしまうというのは極論だろうが、責任の押し付けくらいはするのではないだろうか。

 

 学者や研究者と言えど、政府に従わなければならないという理由はない。だが、大学には一種の左翼病と言ってもよいような状態が未だ存在し、世の中の労働団体が大人しくなっているこの時代において、マスコミと共に最後の牙城を形成しているともいえる。世界情勢がダイナミックに変化している現代において、実はその流れに最も取り残されているのがアカデミアであり、特に人文系の分野であろうと感じる人は、私のほかにも少なくないと思う。

 人文・社会学系にも素晴らしい人は数多く存在し、立派な研究を続けられているし、理系でも変な先生も一杯いる。ただ、一部の活動家のような学者の意見がアカデミアの総意でないこともまた事実であろう。弁護士会の声明が弁護士の総意でないように、この問題も考えるべきであろう。

 

 まあ、今回の騒動はメディアが考えるほどには学界に有利なものではないと私は思う。加えて脊髄反射的にこれを支持する野党議員にも溜息しか出ない。政府が暴走すればそれを止めることは各所に求められると思うが、私としては政府は暴走しているとは思わない。見直すべきところは、きちんと見直せばいいのではないか。少なくとも何十年も前の「推薦には口を出さない」なんて言葉を絶対視することに、私は意義を見出すことはないだろう。

 まあ、これにより他の考えるべき重要な問題が放り出されていることこそ、野党に問い詰めたいことではある。モリカケから全く進歩していないのだから。