Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

公務員とポスト

 公務員制度の問題や弊害は既に数多くのメディアや言論界で既に語られているが、世界的に見れば日本の公務員のレベルは決して低くない。単位人口あたりの人数もかなり少ないし、一部が働く悪事が報道されてはいるものの、現状ではかつてと比べても素行も改善しており総じて言えば良い人材は多い。むろんそれはマスコミのバッシングの成果でもあろうし、またそのことを持って現状のままで良いというわけではなく、国民への奉仕者としての役割を果たす上で改善すべきことはいくらでもあるだろう。
 ところで、私が個人的に思っている公務員問題の一つに不要なポストの乱立がある。年功序列の弊害とも言うべきものではあるが、幹部ポストに○○官とか○○役といった肩書きが少なくない。このようなポストが設けられている理由は明快で、相応の給与を与えるためである。
 企業と同じように行政組織でも原則的には組織構成はピラミッド型である。近年では組織の高齢化に従い係長一人に係員一人なんてところもあるだろうが、元々の組織構成は上司が複数の部下を管理する仕組みであるが故に、トップに行くほどにポストが少なくなっていくのは当然のことだ。

 しかし採用人数が毎年ほぼ変わらず同じ(近年ではそれが減らされているが)だとして、中途で辞めるものがいなければ当然上部ポストに上がれないものが増える。組織としては新陳代謝が必要だから2〜3年ごとにトップは入れ替わっていくが、その結果として後輩が先輩の役職を追い抜くことが増えていく。民間企業では当たり前のことであっても、公務員組織ではそれを回避すべく幹部ポストを数多く作っているというのが現実である。
 もちろん、一定の給与を与えるポストについては財務当局の了解を得なければならないのだが、同じ悩みは全ての公務員組織で共有している訳だから阿吽の呼吸と言って良いし、この風習はずっと昔から続いている事もあって今更急に変更できない状況でもある。
 上述の財務当局の了解は、そのポストの必要性がもっともらしく謳われた上で行われており、また最終的には議会の承認を受けている訳だがその詳細まで細かい突っ込みが為されることはない。その理由付けされた業務がしっかりとあるならば問題ない訳だが、多くの場合には一つのポストを丸々与えるほどの業務ではないことが多い。あくまで人事上の処遇を最優先に求めた結果である。

 こうした結果として、直属の部下を持たず、大した仕事のない高給を得る幹部職員が増殖していく、というか何処にも多く存在する。場合によれば個室さえ与えられ、ラインから外れているため給与に見合うような業務をしていない幹部職員は本当に必要なのだろうか。
 私は個人的意見として民間との給与格差を容易に埋められないが故に、公務員給与の引き下げには賛成である。ただし、最も重要なのは一生懸命働いている一般職員の給与を引き下げることよりも優先して、こうしたポストのためのポストを廃止することが最も重要ではないかと思う。
 同じようなことは大企業でも存在するかも知れないが、こちらは企業経営の危機に至れば大なたが振るわれる。それが為されないのは電力会社などの半公的企業のみであろう。

 地方公共団体などでは、昇任試験を課すことで年功序列的な昇進を解消すべく動いているところもある。しかし、一定以上の幹部においては年功序列状況とさしてかわらないケースも少なくない。
 マスコミもつまらぬ記事を追いかけるくらいなら、こうした実情にきちんとメスを入れて社会的不公平を解消することに手を貸すべきではないだろうか。