Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

日本政府は暴走しているのか?

 多くのメディアや左派知識人たちは、マスコミは「権力の監視をしている」とよく口にする(メディアは権力を監視しているか。91%のジャーナリストがyesと回答 - Togetter)。それは一面において真実の側面を持っている。かつて、世界中で多くの政府あるいは権力は暴走し、戦争やその他の災厄を引き起こした。だから、そうした暴走を抑えるための役割を誰かが担わなければならない。民主主義において、本来は国民が担うべきものではあるが、それをマスコミが代弁するということもあろう。ただ、本当の権力の暴走はまず最初にマスコミ(言論)を弾圧する。逆に言えば、その弾圧に抵抗できる存在であることこそが重要である。政府と反対の意見を持っていることが重要なのではない。

 

 さて、ところで現在日本のマスコミは本当に権力の暴走に抵抗できる力を持っているのだろうか。私を含め、多くの人は日本政府が弾圧しないことを知っているからこそ、日本のマスコミは好きなことを報道できてるのではないかと疑念を抱いている。

 と言うのも、関西生コンの問題(1億5千万円恐喝容疑 関西生コン幹部を再逮捕 - zakzak:夕刊フジ公式サイト)が一部ニュースでは報じられているものの、大手メディアは一切取り上げない(「関西生コン事件」めぐりバトル再燃! 爆弾ツイート、維新・足立康史氏「大物政治家に頼んで警察に働きかけている」 立民・辻元清美氏「事実じゃない!」:イザ!)。立憲民主党の辻本清美議員との深い関係(逮捕者26人の「関西生コン」は「辻元清美」のスポンサーだった!? | デイリー新潮)も取りざたされているが、そこに切り込み報道するマスコミ(特にテレビ)はほぼいない。おそらく、自民党議員が関係していれば大騒ぎだっただろう。

 その理由について日本維新の会の足立議員(足立康史 - Wikipedia)が面白いことを言っている(【関西生コン事件】足立康史議員「なぜ報道しないのか?」→東京のキー局や全国紙の記者「危ないから」 - YouTube)。と言うのも、「危ないから」放送しないのだとか。これが本当のことかどうかはわからない。だが、放送しない理由は他には想像が難しい。数十名の逮捕者を出すような事件なのだから、一大ニュースではないか。小さなニュースまでかぎつけて、暴く必要のないプライバシーを暴いてまで報道の自由を主張するマスコミが、こんなおいしいネタに飛びつかない理由がない。

 

 つまり、危険だから近づかない、取り上げないといっている。同じような話は他にもある。海外の危険地域への取材を大手メディアは行っていない(大手メディアの記者が原発周辺や紛争地帯に入らない理由)。私は何もそんな危険を冒せと推奨するわけではないが、今のサラリーマン化したメディアは危険を回避している。危険を回避することが当然になっている。さて、そんなメディアが本当に権力の監視をできるのと思えるだろうか。

 本当に権力の監視がしたければ、中国のチベットウイグル内モンゴル等で行われている巨大な人権侵害を報道すればいい。だが、そんなことは決してしない。やっているのは、よほどのマナー違反や法令違反でもない限り攻め立てることのない、羊のようにおとなしい日本政府に対するものが中心である。あるいは歯牙にもかけないアメリカ政府に対するものなど、安全な場所でお気軽に評論しているに過ぎない。

 もちろんそれを責めるつもりはない。大手メディアの職員はサラリーマンなのだ。だから、彼らが自分の身を守るのはある意味当然だし、会社がトラブルを避けるのも同様である。だが、そんな人たちが発する「権力の監視をしている」という発言には重みが全くない。

 

 さて、日韓関係における論表で、一部数名の左派識者があたかも「日本(政府)が暴走している」とでもいうような発言を繰り返している(青木理氏が韓国メディアと比較し持論「日本側は(嫌韓)一色に」 - ライブドアニュース)。特に、テレビなどはこうしたコメンテーターにも発言の機会を提供しているのが、これが可能な日本は本当に自由な国だと思う。そう言う意味において、彼らは日本の良さを体現しているといってよい。

 私は彼らを引き摺り下ろせと言うつもりもないし、彼らの言論を否定するつもりもない。私の考えは彼らとは違うし、彼らが言っていることをニヤニヤと鑑賞しているが、彼らがコメントする自由を最大限尊重したいと思う。

 

 だが、本当に日本政府は感情的になっているのか、あるいは暴走しているのか。韓国政府要人やメディアの聞くに堪えない数多くの言説や、無軌道な行動(文正仁特補「南北関係最大の障害物は国連軍司令部」-Chosun online 朝鮮日報)を見る限り、日本政府は本当に抑制されて理知的に行動していると思うのだが。同じ現象を見てもこれだけ意見が違うのだから、本当に面白いものである。

 日本は軍事国家に邁進しているのだろうか。あるいは独裁国家となりつつあるのだろうか。私が知る限り正当に選挙が行われ、結果として安倍政権が継続しているように見えるし、軍事費でも人口が半分以下の韓国とほぼ同じであること自体が軍国化などしていないと思うのだが。それにメディアを弾圧もしていないし、ジャーナリストを不当に逮捕したわけでもない(あまりに不適切なジャーナリストの海外渡航を認めなかったことはある)。

 暴走しているとすれば、NHKを敵に回したくないためそれを擁護しているとか、世界情勢を見れば消費税を上げないほうが良いのに、上げてしまったとか。それを暴走というべきかどうかはわからないが、多少は気になる点はあるものの、対外的な対応では非常に理知的に対応しているように見える。韓国への輸出厳格化についても、その背景は既に多くの人が論理的に説明しているが、それを認められない(あるいは不勉強な)人たちが感情論で騒いでいるに過ぎない。

 

 だが、本当に暴走したときにはきちんと抑えられるように、冷静でバランスの取れた目で見ていきたいと思う。