Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

最近の雑感

 ここのところ、かなり忙しくなかなか更新できなかったことをお詫びします。

 

 米中戦争のステージが一つ上がったようだ(中国、米国に成都の総領事館閉鎖を要求-ヒューストン閉鎖に対抗 - Bloomberg)。

 数年前よりアメリカは中国の膨張主義を快く思っていなかった(焦点:米中対立SNSが主戦場、南シナ海巡り「口撃」激化 - ロイター)が、経済的に成功していた日本を封じ込めるという戦略からの転換がかなり遅れてしまった。これは、潜在的に日本に厳しい態度を取る民主党政権クリントン政権オバマ政権:歴代アメリカ合衆国大統領の一覧 - Wikipedia)が一定の程度の期間、政権を握っていたことも原因であると思う。アメリカは戦後一貫して中国(と韓国)を使って日本封じ込めを行ってきたのだ。特に、日本のバブル期以降には顕著であった。特に、中国が本格的な力をつけてきたオバマ政権時代の判断の遅れが、中国の増長を許しここまで問題を大きくしたのだと考えてよいと思う。

 だが、既にアメリカは中国封じ込めに動いている(総領事館は中国のスパイ拠点 習主席を名指しで批判―ポンペオ米国務長官:時事ドットコム)。奇妙なのは、基軸通貨や基幹技術をアメリカに押さえ込まれている中国が、ここまでアメリカに抵抗しているころであろうか。現在の中国は集団指導でありながら専制国家であるが、習近平が独裁によるモラトリアム打破を目指し始めてからかなり風向きが怪しくなった。

 アメリカの人・モノの制裁が中国を相当蝕んでいるというのが実感だが、もちろん中国は既に世界第二位の大国であり、容易に崩壊に向かうものではない。世界中の非難を浴びながらも香港への強権を発動したのは、香港にあるドル確保のためであるという声もまことしやかに囁かれているのが象徴的でもある。既にアメリカは金融センターであった香港の特権をはく奪する方向で動いている(米が「香港ペッグ制」も標的か 対中制裁案で弱体化検討 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト)。

 

 米中の対立は覇権闘争である側面もあるが、それ以上に価値観闘争であることは過去にも書いた。勝ったほうのルールを世界に押し付ける。アメリカはこれまで数多くのルールをつくり、ルールメイカー故に我儘ではあるが公正性の担保については努力をしている。それはアメリカなりの正義という概念に基づく。一方で中国は、ルールを守ると表明しても裏ではそれを破っても成果を得るのが正義だという価値観である。どちらも我儘なジャイアンであるが、現時点では日本の価値観はアメリカの方がずっと近い。余談だが、韓国が中国に着くのは経済的な依存度もあるが、私は価値観の近さからではないかと感じている。

 

 これまでは経済的なメリットによりこの価値観の食い違いを無理やり無視してきたのが実際で、それは中国による人権侵害(チベットウイグル、他)など何十年も前から明らかだったのに欧米が大して問題にしなかったことからも明白であろう。だが、これ以上行くとアメリカの経済的メリットが脅かされるとなって初めて、不公正という伝家の宝刀を本格的に抜き始めた。日本人からすれば今更感が強いが、その意志を中国共産党指導部は甘く見た。懐柔と脅しと誤魔化しでなんとかなると考えたのだろう。アメリカは経済損失を負いたくないのでどこかで妥協するだろうと。実際、数年前まではそうだった。

 しかし、アメリカに妥協がないことはもはや明らかである。経済的損失を抑えるために時間をかけてはいるが、中国のデカップリングを着実に推し進めている(コロナウィルスが修復不能にした米中デカップリング | 三輪晴治)。一対一路やデジタル人民元等によりアメリカの支配を掻い潜ろうとしてきたが、個人的な見立てでは間に合いそうにない。中国側の落としどころしては、習近平の失脚というアメリカに対する一旦の降伏しかないのではないか。もちろん、それを避ければ武力を伴う戦争という展開も十分にあり得る(ただ、あっても局地戦だと思う)。

 早期に中国側が引いていれば、この紛争は中国共産党を生かす形で終われたかもしれない。だが、ポンペオ国務長官の演説はアメリカが中国共産党自体の体制崩壊を視野に入れた。その意味は非常に大きい。もちろん次の大統領選でバイデンが勝って、一時的には流れが押しとどめられることはあるかもしれない。ただ、大きな方向性はもう変わらない。

 

 最近の中国の虚勢の張り方(中国の大使、イギリスに「内政干渉」するなと警告 国安法めぐり - BBCニュース)を見ていると、内情は非常に厳しいのではないかと想像したくなる。経済的(中国の銀行がドル不足、「異変」に要注意 - WSJ)にもそうだが、それ以上にこれ以上の富を人民に配布できなくなっている点が大きいと思う。中国の成長率が怪しいことは数年前より言われているが、それが本格的に厳しい状況に近づいて生きた。パイが分配できないのであれば切り詰めていくしかないが、それは共産党政権の崩壊につながりかねない。定番ではあるが、外に目を向けさせるために明確な外敵を作ることが元も容易な凌ぎ方である。

 ただ、その状態は中国にとって厳しい。アメリカは直接敵対しなくともじわじわと締めていけば良いのに対し、中国の方は常に何らかの成果を見せなければならない。逆に言えばコロナにより一時的な先送りができたのは、そして洪水被害などにより人民の目が逸れていることは中国共産党政権にとっ僥倖であったかもしれない。それがわずかな期間の先送りであり、より大きなピンチにつながるとしても。