Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

コロナ禍はチャンスでもある

 世界経済が新型コロナ感染症により大きなダメージを受けつつある(【地球コラム】新型コロナ、世界経済直撃:時事ドットコム)。まだその被害は大きく顕在化していないが既に苦境の声は聞こえており、今後じわじわと体力の低い飲食業や各種店舗などの廃業や倒産から始まり、幅広い業種に広がっていくのも時間の問題だろう。だが、政府は一時的な救済の手を差し伸べることはできても、そのすべてを救うことはできないしすべきではないと思う。すべてを救うのは社会主義である。そして、今後は自分たちを優先的に救うべき(「文化を守るために寛容さを」劇作家・平田オリザさん|けさのクローズアップ|NHKニュース おはよう日本)という声が鳴り響くだろう(コロナで航空業界2.5兆円支援案の全貌!「ANA・JAL統合案」浮上はあるか | 日本企業、緊急事態宣言 | ダイヤモンド・オンライン)。

 政府による支援には2種類ある。業態業種にかかわらず一律受ける支援と、特別な理由があるために政府が救う必要のある業界だ。例えば、既に世界中で問題となっているのが航空業界。ドイツではルフトハンザが、政府の支援を受け入れると同時に部分的ではあるが国有化に近づくかという協議を続けている(ルフトハンザ、独政府との支援協議と並行して破産保護申請も=関係筋 - ロイター)。ただ、独立性を確保するためには諸外国に支援を要請するだけでなく、破綻処理(再建を視野に入れた)も選択肢に入れているというところが特殊であろう。

 

 このように、特別な支援を受けるということは政府の影響下に置かれるということを意味する。芸能関係の支援を要求する声が不思議に聞こえるのは、政府の支援を受ける(=政府からの影響を受ける)ということを理解して言っているのかはなはだ疑問だ。仮に、金は貰うが影響は受けないという都合の良いことを言っているとすれば、非常に自分勝手で無責任な話である。政府が支援するから劇団員(あるいは歌手、芸人)の数が多すぎるので最低限まで縮小しなさいと言われれば、それを受け入れるのだろうか。少なくとも破綻処理から公金投入に至った企業は、大きな痛みをもってそれを受け入れてきた。

 もちろん、国として保護すべき伝統芸能や技能は一部保護されるだろうが、そこには大変大きなハードルがあるし、それに値することを証明しなければならない。税金で保護されるのだから、政府ではなく社会が認める価値が必要だ。少なくともすべてが保護されることなどありえないし、傷を負うのは間違いないが一時的に他の職業に移り、日常が戻ってから復活することも可能である。そこに困難があるのは理解するが、困難があるのはあらゆる産業において同じである。そもそも、元の状態に戻れるかどうかもわからないのだから。

 国民に対する支援は必要である。だが、誰もが特別であることを競っているのだと理解しておきたい。

 

 さて、社会が変化すれば状況に応じて各種産業も変わっていく必要がある。耐えれば過去の状態を取り戻せるのであれば、それまでの期間我慢し続ける方法もあるだろう。だが、私はコロナ後がこれまでと同じとは思わない。コロナショックは私たちの日常を変えてしまうが、逆に言えば変わるであろう社会を予測できて動き出せば大いなるチャンスにもある。環境変化により消えゆく業態を支え続けるのは難しいが、環境変化により成長する業界を応援するのは容易である。

  ただ、人は急なトラブルに対し適切な方向転換をできないものである。正常性バイアスと呼称するのは少々可哀そうな気もするが、これまで通りであってほしい(その方が面倒なことを考えずに済む)という願いがあるのは間違いないだろう。特に、営業期間が長いほどにその傾向は大きくなると思う。

 だが、過去を振り返ればコロナ以外でも様々な職業は、消えていき、内容を変え、方向を変え、環境に応じて適応するすべを探し続けてきた。この状況は芸能界でも同じである。社会変化により淘汰され、新たに興る道が常にある。今回のそれが急激すぎるために、人々は戸惑っているに過ぎない。もちろん、そんな大きな流れの中で頑固に昔ながらのスタイルを貫き通す老舗もある。そして生き残れば、新たな価値を生むこともあるだろう。だが、すべての店や企業がそれを続けられることはないし、その道を進むための苦難は自らが選択するのだから、自分で負わなければならない。

 

 だがそれでも、人の数が劇的に減ったわけではなく、人が生きていく上で求められるサービスは山ほどある。社会・生活スタイルがコロナにより変化すれば、サービスを提供する側にとってはゲームのルールが変わったに等しい。ゲームのルールが変わっているのに頑なに前のゲームのルールに固執して生き残れるとは思えない。

 コロナ後も、すべてが変化してしまうわけではない。すぐに元通りに戻る業界もあれば、決して戻れない(あるいは非常に長い時間がかかる)ところもある。業界により状況はまちまちだと思う。ギリギリまで耐えて元の姿を取り戻すというのも一つの選択だとは思うが、変わる社会の中に可能性を見出すというのも大きな決断だと思う。そして現時点では、その声が小さいことが気になっている。

 

 逆に考えれば、今は新たなシステムを生み出し、新たな流れを作るための最大のチャンスでもある。もちろん、賭けの部分も少なくないだろう。だが、今はすべてを失う時間という認識は間違っている。変化に戸惑うだろうが、同時に時代をリードできる可能性を秘めた時間でもあるのだから。起業家たちは、あるいは新たな創造者たちは、今こそ力を発揮する時ではなかろうか。