Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

パートタイムコロナバブル

 アメリカの株価がすごい勢いで再上昇し(NYダウ反発、上げ幅400ドル超 コロナ治療薬への期待で (写真=AP) :日本経済新聞)、それに連動する形で世界の株価も大幅に上昇している。あらゆる経済指標が非常に悪い(米中古住宅販売仮契約指数、3月20.8%低下 - ロイター)ことを示している(米GDP4.8%減、約11年ぶり大幅マイナス 第1四半期速報値 - ロイタードイツ、今年の経済成長率-6.3%と予想 戦後最悪の景気後退 - ロイター)にも関わらず。治療薬への期待とされているが、そんなものは後付の理由に過ぎない。もはや、株価は経済の裏付けなしのマネーゲームとなってしまった。FRBや政府の財政出動により、あまりに急速に落ち込みすぎた株価はある程度戻すことは想定できたが、現在の株価はそれを超えている。

 今後発表されていく企業業績ではとても考えられないであろう株価が、一時的とはいえ成立しているのはまさに需給のなせる業と言えるが、それは同時にチキンゲームが極まったと考えることもできるだろう。元々、株価は完全な経済の鏡ではなく、経済を理由にして動く一指標に過ぎない。それ故に、バブルの最後には往々にしてこのような動きをするものである。ただバブルには最低限の夢が存在したが、この先壊れるのが明らかにもかかわらず値を追うという状況は、さすがに行きすぎだと思う。いくら、FRBが常識外れの資金提供や買い支えをした(焦点:「ドル大放出」で膨れるFRB総資産、臨界点はまだ先か - ロイター)としても、すべてを買い尽くすことはできやしない。

 今回のコロナショックで株式取引に参入した人は多いとされるが、そろそろ手じまいをした(あるいは売りに回った)方が良いと思う。この夢は長く続かない。

 

 とは言え、オーバーシュートするのも相場。悪い意味では、人々の欲望の権化でもある。先日も、WTI原油先物)で中国人が大損を被ったという話があった(中国銀のWTI関連商品、小口投資家の損失1000億円超に急増-関係者 - Bloomberg)が、目の前の経済に期待できないからこそ、それ以外の場所に場を求めるというのは理解しやすい。そろそろ不動産市場の方も悪化が始まったようだ(3月の中古マンション価格、首都圏2%下落 :日本経済新聞)。元々、コロナショックによる本格的な株価下落よりも、企業業績悪化(倒産を含め)および不動産価格の下落により引き起こされること(不動産の暴落がさらなる暴落を招く理由 WEDGE Infinity(ウェッジ))を予想してきた。そこに至るまでには一定のタイムタグ(数か月から数年)があり、5月中旬以降から徐々にその片鱗が見え始めるのではないかと予想している。株価は先行指標であるため、そろそろその動きを織り込み始めるかと私は考えていたが、今はラリーに夢中なようであるのが少々意外でもある。

 おそらくはどこかの時点で再度の下落に転じ、それは急激なものではなく、じりじりと切り下げていくようなものではないかと、当たらないなりに予想する。もっとも、株価の回復を予想する専門家も少なくはない(コロナ・ショックは「直下型地震」 V字回復も? :日本経済新聞)。そんな甘い話ではないと私は考えるが、考え方は人それぞれということであろう。

 

 今回のコロナショックで、世界の食料を含めた生産は大きなダメージを受ける。その後、ある程度の死者は仕方がないと開き直り徐々に回復するだろうが、1年間ほどは軽度の食糧危機のような事態も発生するのではないかと予想する。それは、途上国の社会を大きく揺るがしていく(新型コロナで経済危機 レバノンで暴動 市民に死者 | NHKニュース)。食糧輸出を絞るのが世界的な傾向となるため、逃げようがなくなることから、騒動は連鎖的に広がっていくだろう。

 また、先進国でも社会のゆがみが明らかになり、上下闘争的な政治的混乱が増えていくことも予想できる(CNN.co.jp : 貧困地区で死者激増、警官と衝突も 新型コロナが浮き彫りにするフランスの分断)。今も国会で様々な救済措置が提案されている。家賃補助や業界補助など、補助という名目は甘美で優しい。必要な補助は間違いなくあるが、それがいつまで続けられるかについては大きな問題もあろう。確かに財政支出は野党が求める様に可能かもしれないが、その後必ず税として再徴収される。要するに痛みの先延ばしであり、日本の富の再配分でもある。コロナ後がコロナ前と同じとは限らず、むしろ変わっていけるものにとってはチャンスでもある。政府にできるのは、変わらない者の救済ではなく、変わろうとする者の援助ではないか。

 短期ではなく中長期で見れば、株式や不動産はかなり厳しいことになるのではないかと予想する。それは、仮に治療薬が出ても経済の動きが停滞するからである。さらに言えば、リーマンショック後の経済復活のために行った、バブルによる救済の終焉が近いからでもある。アメリカは、経済的な落ち込みを次々と新たなバブルを生み出すことにより乗り越えてきた。だが、今回は乗り越えられるそれが見当たらない。

 現在、Nasdaqの上昇に見られるように、第2次ITバブルにより株価を支えているが、その寿命は非常に短いのではないか。ビジョンファンドの瓦解がそれを先導するのではないかと予想している。