Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

増加する紛争

 新型コロナにより引き起こされる武漢肺炎の問題は、世界の経済を混乱させる(【地球コラム】新型コロナ、世界経済直撃:時事ドットコム)だけには留まらず、世界中に紛争の種をまき散らしていく。既に、この感染症の政治的ダメージを軽減するため、世界各国は中国を人身御供にすることを決めた(英独仏も、世界に広がる中国への賠償請求の動き 新型コロナが生み出した世界の新たな対立構造(1/3) | JBpress(Japan Business Press))ようだ。中国に実際どの程度の責任があるかについては、現状あまり定かではない(武漢研究所がパンデミック発生源、米国務長官が「大きな証拠」あると発言 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News)。だが、未だ武漢市や研究所での調査団受け入れを認めない(中国は推定有罪の国際調査に断固反対=外交部 | ニコニコニュース)のは、後ろめたいことがあると勘繰られても致し方がない。私は、中国政府が発生源が人工か自然かという議論から、発生場所すら中国ではないと押し戻すために拒否していると考えているが、メンツを何より重んずる中国の考え方がこの場合には悪い側に作用するだろう。議論のスタートポイントを変えることはもはやできない。

 問題は、この中国vs世界の争いがどこまで発展するかになるだろう。間違いなくお互いのさや当てはずっと続くだろうし、(コロナ前から始まりつつあった)中国排除から始まる世界のブロック化はかなり進展するものの、全面的な紛争状態に入る可能性は低いとみている。正確には中国次第。各国からの軽い挑発に中国がどのような態度をとるかということだ。実質、中国以外の国で裁判を起こすことはできても(中国がコロナ報告義務違反や隠ぺい等で賠償請求される可能性も(NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース)、中国政府の息がかかった海外資産を差し押さえする程度(民間にまで踏み入れない)とすれば、象徴的な意味はあっても実質的な経済ダメージは短期的には大きくない。アメリカには中国の持つ米国債を無効化するという伝家の宝刀はあるが、このカードはちらつかせるからこそ意味があるもので、実際に切れば戦争の引き金になり得る。

 もちろん、メンツにこだわる中国だから口撃は何度も行うだろうが、世界を敵に回すようなことには至らないと見る。むしろブロック化を念頭に、自国陣営を広げるために邁進するだろう。既に、いくつかの国には医療支援や経済支援をすることで味方につけようとしているが、各国の世論がそうした工作に乗るかと言えば、その可能性は低いと考える。世界は、今回の責任を中国に押し付けるのがもっとも座りが良いのだ。中国の味方になって、世界と敵対しても良いことなどない。良いとこ、中立を気取るのが精一杯ではないか。むしろ、丁度良いと中国にたかり踏み倒す国が増えるのではないかとみている。混乱期には、それすらも可能である。

 

 さて、今回のテーマは中国vs世界ではない。今後、甚大な被害が送致される途上国に巻き起こるだろう紛争の増加についてである(https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/f2005ar1.pdf)。一般的に途上国での小さな紛争は絶えない。多くの場合には権力闘争であるが、経済的な困窮がその裏側にあることも多い。そして、ポストコロナの世界はこれまでよりも貿易が停滞し、食糧生産が一時的には大きく落ち込む。日本では経済かコロナかという議論だが、途上国では飢えるかコロナかの選択肢となり得る。そして混乱のさ中の先進国が率先して途上国救済に迎える可能性は低い(新型コロナ:途上国に270兆円の支援必要 UNCTAD声明 (写真=ロイター) :日本経済新聞)。自国経済の立て直しのために、既に異次元の緩和や財政支出に踏み込んでいるのである。それすら、十分効果があるかわからない(私はそれでも相当の不景気は回避しえないと考える)状況で、他国のことまで考える余裕は多くない。だからこそ、中国はその隙をつこうとするだろうが、上記のとおり放火魔が消防に来てという国際的世論がアメリカなどにより作られていくと、それほどの効果は得られないだろう。

 一方で多くの住民が飢えると、内乱が発生する。こうした内乱をチャンスと見る勢力は山ほどいる。ISIS(イスラム国)や宗教的対立を持ち込む者たち、あるいは政敵をこの際に引きずりおろそうとする者たち。きっかけはデモ等であっても、その裏にはいろいろな思惑が渦巻く。また、紛争地域が増えるほどに難民の増加が問題となる。だが、既に欧州はこれ以上の難民を受け入れられるような状況ではない。トルコもギリシャもそれ以上だろう。コロナに罹患し死ぬ人より、こうした混乱により生じる死者の方が長期的にはずっと大きくなると思う。日本も、できる限りの協力をすべきだとは思うが、実際日本にどれだけの余力があるかは悩ましい。アメリカと組んで、基軸通貨であるドルの支出(あるいは代替通貨の円)による救済は、今後の世界体制を考える上では非常に意味があると思うが。

 紛争処理には、食糧価格を下げることが最大の効果を持つ。付け焼刃の資金援助は、カンフル剤になっても長続きはしない。結果として、コロナワクチンの開発と普及が最大のポイントとなる。だからこそ、中国も既にそこに邁進しているのだと思う。

 

 とにもかくにも、パラダイムは変わってしまった。これまでと同じでよいという考え方は捨てていく方が賢明だろう。