Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

公務員人気復活

 やや前の情報で申し訳ないが、このような記事を目にした(転職希望の公務員が急増 外資やITへ流れる20代 :日本経済新聞)。私も元官僚なので公務員からの転職組と言ってよいが、一般的に景気が良い時期に公務員を辞めて、より給与の良いところに転職するケースは少なくない。実際、私が働きだした当時は公務員の仕事は給与の割に報われないと思ったりもしたし、同期に給料の良い大企業に転職した人もいる。だが、私の場合には転職ではなく起業したこともあり、収入は一時的に大きく落ち込んだ。恥ずかしながら、理に聡い行動は取れない性分のようだ。

 

 さて、10万円の給付金に関して公務員等の給与が減らない人には配布すべきではないという意見(橋下徹氏が『公務員10万円受給禁止案』を巡って江川紹子氏と大バトル「給料もボーナスも100%保障…それ以上何を望むの?」:芸能・社会:中日スポーツ(CHUNICHI Web))が出ている。主張したくなる理屈はわからなくはないが、早期に配布するためには手続きを簡略化させるというのは理解しやすい。むしろ、本当に困っている人には第二弾を今のうちから用意しておき、10万円でどれだけ時間が稼げるかはわからないが、その次までのつなぎにするのが良い方法だろう。また、給付された10万円も経済を回すためには重要な資金となる。全くの無意味ではない。むしろここでいちゃもんをつけるのは、スタンドプレーのそしりを免れ得ないと思う。

 ちなみに言えば、東日本大震災の時もそうだったが、公務員の給与は来年あたりから数年間は減額(公的債務拡大を受け公務員給与削減へ、2020/2021年度予算案を発表(南アフリカ共和国) | ビジネス短信 - ジェトロ)されるだろう(程度は10~15%だろうか)。平均給与を500万として年間50万円×年数である(3~5年ではないか)。これが少ないかどうかは議論の余地もあるだろうが、それを考えても今回は10万円を配布して起きてもよいのではないか。ちなみに、私は公務員ではないが給付金は寄付する予定である。受け取り拒否よりはずっと良いと思う。

 

 余談が長くなってしまったが、経済が大変な時期は公務員の希望者が増加するという原則は今回も間違いなくあてはまるだろう。昔とは違い、今では公務員は楽な仕事とは言えなくなってしまった(「公務員になれば一生安泰」発想は改めるべきだ | 就職四季報プラスワン | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)。正確に言えば、楽な部署がないわけではないが、多くの部署では少人数で非常に厳しい業務をしている。もちろん、明治時代や昭和の初期のような高慢な態度で接することはできないし、業者との癒着などがゼロとは言わないが、それを見つけ出し告発する仕組みも稼働している。マスコミの公務員叩き(マスコミが公務員叩きをする理由:公務員叩きに物申す!-現職公務員の妄言)のキャンペーンにより、世界的に見てもクリーンでよく働く仕組みになった(むしろ、今ではメンタルでのドロップアウトを心配しなければならない)。むしろ今残っている汚い業界の最大はマスコミではないかと思うくらいである。

 来年以降(正確には今年から既に始まる)、経済は間違いなく大きく落ち込む。それは政府の狂ったような支援があっても救いきれない。現状、株式市場はバブルの残り火で遊んでいるが、就職戦線は大きな落ち込みになる(採用のプロが大予測「コロナ不況で、再び就職超氷河期がやってくるのか」 | PRESIDENT WOMAN Online(プレジデント ウーマン オンライン) | “女性リーダーをつくる”)だろうし、その回復には数年以上かかると思う。体力のある企業なら、バブル崩壊後の採用抑制による人材枯渇の失敗に学び一定数の採用は行うだろうが、求人戦線を支えられる量には届きえない。

 

 ということで、ここ数年酷い落ち込みになっていた公務員人気は大きく復活すると見ている。私のところにも、昨年までは県等から学生の応募を促す案内(というよりは切迫したお願い)が届いたりもしてきた(公務員試験倍率から見る現状と採用の動向 | 公務員合格クレアール公務員試験合格ならクレアール)が、それもなくなることだろう。

 一方、今回のコロナ禍を支えている多くの人たちは公務員である。公務員と言っても医師や看護師もいれば、警察や自衛隊、救急搬送をする消防署(救急車)その他数多くの職員が存在し、社会の崩壊を食い止めるために活動している。そんなことは当たり前すぎてマスコミが態々取り上げることもないが、私は誇ってよい職業の一つだと思う。もちろん、今でもステレオタイプな公務員もいるだろうし、辞めさせることが難しいため、仕事もせずに居座る人もゼロとは言わない。私は公務員時代組合活動には参加していないが、そういう活動に勤しむ人もいる。だが、同様のことはほとんどの大企業でも行われている。

 大企業の給与と比べると公務員のそれは安い(大学の同期と比べて、昔は何度もため息を吐いた)が、中小企業と比べれば十分な待遇である。また、福利厚生も充実しているので、地元に住みたいと思えば今でも第一の選択に上がる。それでも、いろいろな場所で文句を言われるのは公務員の宿命と言ってもよいかもしれない。ただ、どんな仕事にも誇りを持てるはずだと私は思う。当然、公務員もこれからは安定ではなく、誇りのために就く職業だとなってほしいと思うのだ。