Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

フリーランス

 そろそろ就職戦線が動き始めている。経団連の取り決め(http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/081.html)はあるものの、一部業界では有名無実化しているというのが実情であり、早いところでは既に昨年のうちに内々定が出ているとも聞く。中小企業では大企業の採用から漏れた人材の中から探すために、大企業が決まるのを待っているというところもあるようだ。
 ところで、私の学生時代には教授等の推薦により就職活動を行うというスタイルであった。こうした手法は特定の学部や大学に限定されていたのかもしれないが、現代の大学生の苦労を考えるとかなり労力がかからないものであったと思う。このような推薦システムはあっても、もちろん推薦のないよりステイタスの高い企業にチャレンジすることは可能だ。だが、一般には学業成績などを参考に教員から勧められた企業に応募して、かなりの高い確率でその企業に決まるというイメージを私は持っていた。
 実は、今でも似たような仕組みを保持している企業(あるいはセクション)もたまに耳にする。信頼できる大学教授からの推薦で候補者を絞り、その中からセレクトする。確かに企業としてもかける労力からするとうまみのある方法である。ただ、学生側からすれば企業が信頼する大学にいるかどうかという第一関門があり、次に教授等が信頼されているかどうかというもう一つの関門をくぐる必要がある。

 さて、著名な大企業やあるいは安定した公務員になりたいという人は今も多い。公務員については、一時期に比べれば地域や職種限定かもしれないがかなり倍率が下がっている(2〜3倍程度)という現実もあるようだが、著名企業では100倍を超える状況があるのは当たり前になっている。給与的には大企業勤務の方が高いだろうが、安定性で言えばまだまだ公務員に分があるのではないだろうか。
 さて、そんなに多大な努力をして大企業に入ってどんな魅力があるかといえば、繰り返しになるが世間と比較すると高い給与がある。中小企業の就職することと比べれば生涯年収は大きく異なるであろう。私は大学院進学はせずに公務員になったが、院を出て大企業に就職した同級生との年収差は最初からずっと200万円くらいの負けで、その差は10年を経ても決して縮まることがなかった。仮にそのまま40年が経過するとすれば、生涯年収で8000万円の差がつく計算となる。

 一方で、日本の大企業が決して倒産しないなんて言えないことは誰もが知っている。近年、倒産などが考えられなかった企業が危機になり、時に消え、時に買収されている。さらに景気が悪化すればリストラなんて話もあり、企業内での生き残りをかけた争いは続く。それは昇進・出世レースとして継続し、「サラリーマンが気楽な仕事」というイメージはもはやないだろう。終身雇用など、もはや幻想に過ぎない。
 さて、現在ブームは下火になっているが、一時期起業家ブームが巻き起こったこともある。自分で会社を立ち上げるというのは大きな夢であるのは間違いない。ストックオプション等により事業が成功すれば大金持ちになれるのは、アメリカの新興企業だけではなく日本でも規模はともかく見られる姿であろう。
 この企業については、別に大企業な入る様な学歴が無くても可能である。極端な話を言えば、中学卒業でも一定以上の規模の会社を経営して財産を持つことも不可能ではない。不可能ではないが、容易でないことは自分の周りにそんな人が多くはいないことでわかる。

 だが、サラリーマンは大企業であっても役員クラスにならなければ、通常それほど大きな給与を得られるものではない。一部の大企業役員では年収1億というレベルもあるだろうが、中小企業でも成功すれば億以上の年収を得られるとすればそれが一つの道かもしれない。
 もう一つ、フリーランスという生き方もある。こちらは上記の様な収入までは得られないかもしれないが、専門家として下手をすれば一般サラリーマンよりは高い報酬を得ることもできる。ただし、そのためには二つ重要なことが存在する。人と同じレベルではないことと、人がやらない儲かる仕事を見つけ出せること。
 中小企業経営もフリーランスも、私の個人的なイメージとしては近い立ち位置と考えている。いずれも、大企業にはできない機動力と小さな市場を見つけてそれを独占すること。規模の論理には勝てなくとも、フットワークの軽さは大企業にはない大きな武器である。

 一方で仮に独立したとしても、企業時代と同じことをしていればそれほどの大儲けにはつながらない。むしろ、下請け的な位置になってしまえば苦しむことになりやすい。世の中は、誰もが儲けを探している。如何に楽に、かつ効率的に稼げるかを競争しているのだ。だとすれば、大企業と同じ土俵で勝負するよりも大企業には出せないアイデアで勝負するというのが戦略としては正しい。
 ところで、このアイデアについて良く勘違いしてしまうことがある。変わったアイデアは世の中に数多く存在するし、それを生み出すこと自体はそれほど難しくはない。だが、儲かるアイデアを見つけ出し、ありは生み出すことは容易ではない。それをひらめきで感じ取る天才もいるだろうが、大部分の人は様々な事例を試し、そして失敗する。トライアンドエラーを繰り返して、ようやく自分が進むべき道に辿り着くものだと私は思う。
 アイデア勝負ではあるが、成功するアイデアを見つけ出すまで(時には確立するまで)根気強く続けること。それが何よりも大切ではないかと思う。

 私は一時期自分で会社も経営していたが、好きなことを仕事にしているだけでは必ずしも儲からないということを嫌というほどに感じさせられた。自分が好きなことに取り組むのではなく、世の中に受け入れられる仕事を好きになること。好きになるのは受け入れられると感じた時、あるいは確信した時で十分ではないか。
 だから、最初は好きなことからスタートしても良いと思うのだが、そこで壁に当たった時に好きなことでは食えないと諦めるのではなく、食える仕事を好きになると切り替えられるのが大切ではないかと考えている。世の中には求められている仕事は探せば山ほど存在する。もちろん、全てが高い収益を見込めるものではないかもしれないが、儲かる仕事のなかで求められるものを探すのではなく、数多くの社会に求められる仕事の中から儲かる部分を見出すというスタンスは重要なのだ。
 それは自由を持っていなければなかなか辿り着くことができない境地だと私は思う。フリーランスは、その境地に最も近い場所にあるのではないかと考えている。クラウドにて各種のフリーランスが集まるという仕組みでも良い。あるいはフリーから会社に発展させても良い。

 まだ、企業を飛び出すというチャレンジをする学生は多くはないだろう。また、景気が悪くなるほどに起業する人も少なくなりやすい。だが、会社は個人の安住の地ではなくなりつつあるというのが個人的な見解である。それはある時突然明らかになるような気がするが、仮に企業に所属していてもいつでも独立できるという心構えは重要だろう。