Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

宣伝ゲームの果て

シャープのプラズマクラスター製品が、実際には宣伝されているような効果がなかったと再発防止命令を出された。
プラズマクラスター掃除機、効果なし…消費者庁http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121128-OYT1T00555.htm)>
そもそも、それを言い出せば「マイナスイオン」などという怪しげな宣伝をあらゆるメーカーが行っているし、磁気ネックレスなどもその効能が科学的に照明されているとは言い難い。そもそも「プラズマ〜」という機能自体も他のメーカーでも用いている。宣伝レベルの差については確認していないし、おそらくはシャープのそれが突出していたからこその命令だろうが、個人的感想を言わせてもらえば各メーカーとも大差ないのではないかと思っている。

結局のところこれらは販売作戦上用いた謳い文句(印象操作)であって、技術的正確性ではなく販売利益を追い求めた結果生まれたものである。効能はあるかないか微妙なところであればそれで良い。全くないと怪しまれるので、わずかでも効果が出そうであればそれを最大限大きく見せて宣伝する。シャープの苦境が常々伝えられているが、そういう背景の下で印象操作の度が過ぎてしまったというのが実情なのかもしれない。
がまの油売りやバナナのたたき売りの時代から、商売としては過度の虚飾が用いらてきたのは伝統とさえ言えようが、それは商売に軽い騙し合いが許されていた時代の名残とも言える。こうした状況は現代日本の人目につく場所では徐々に駆逐されつつあるが、世界には山ほど存在するし日本でも投資詐欺などの話題には事欠かない。
健康食品販売は不況の中でも成長産業に挙げられているが、こちらも怪しい効能は目代押しである。化粧品関係や飲料の業界などでも、コラーゲンやコエンザイムQ10とか、ウコンだとか、効能には大いに疑問があるものも少なくない。彼らは科学的な分析を行っていると主張するであろうが、千の紛い物から一つの正しい効能を見つけ出すなんてことはおそらく素人にはできやしない。

このような虚飾が跋扈している分野は一体どういう分野なのだろうかと考えてみると、曖昧さが許容される分野であることがわかる。健康(明かな病気ではなく健康の度合い)、快適(人により感じ方が当然異なる)、味覚(おいしいかどうか)、、、エトセトラ。過大広告を厳密に追求すればアウトとなるところも少なくないのではないか。
基本的に、社会が成熟すればするほどこうした虚飾の構図は減少していくのが通常である。特に、大企業はどちらかと言えば虚飾を減らす方向に社会が規制をかけている。企業側にしても規模が大きくなればなるほどに事業の継続性を考えれば信用を維持することがないより重要となり、その結果として過大な広告は控えるようになっていく。
それがマイナスイオンなどのように一部の学者から科学的合理性がないと指摘されているにも関わらず宣伝への使用を止められない現状は、考えようによれば企業存続をかけて仁義なき争いに突入しようとしているマイナスの面が現れているのかもしれない。
企業に一定の余裕があった時代ならば、企業は一定の品を自らに課してきた。その品をかなぐり捨てて商売する企業も確かにあるのだが、それは信頼性を欠くことで幅広い消費者の支持は得にくい。ニッチな分野(特定の興味ある人のみを相手にするケース)においてのみ生き延びられる。一種宗教のように信者を抱え込む形と言っても良い。

とは言え、過大な広告表示はいつの時代にも存在する。大企業が自らの信頼性を損ねる可能性を高めてまで勝負に出ざるを得ないとすれば、それはそれで企業の新陳代謝が進むという意味での社会的流動性が得られるようになりつつあるというプラスの面と、安定した企業が育ちにくいというマイナスの面が生まれてくる時代になったということであろう。
それを良いことと考えるか悪い現象と捉えるかは見方によるが、私個人としてはあまり歓迎したくない。