Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中国の不動産暴落は来るか?

 中国の不動産バブル崩壊を謳う情報が、今年の秋ごろから非常に多くなった。私も以前より今のバブル崩壊は、金利の上昇か不動産バブルの崩壊により生じるのではないかと書いてきた。秋ごろからの騒動は、中国不動産大手の広州恒大問題(【バブル終焉】巨大不動産企業・恒大集団のデフォルト観測|篠原哲 | tetsu.s|note)から始まったものだが、既に中国における不動産価格の上昇は日本のバブル時をはるかに上回るレベルに達している(52兆ドルの中国不動産バブル、コロナでも止まらず - WSJ)。それでも本格的な下落に至らないのは、中国政府が様々な面で不動産下落を阻止しようとしているのが最大の理由だろうが、この状況を踏まえて中国国民が不動産を政府が下げないと認識していることもあろう。そのため、今年9月ごろ騒ぎになった不動産バブル崩壊の懸念に関する情報は、ここ2か月ほどすっかりと影を潜めた。

 状況をもう少し詳しく見ると、現在中国で不動産価格が上昇し続けているのは上海や深センなど一部の富裕層が多い都市に限られ、全体的には不動産価格が下落しているという情報は少なくない(中国バブル崩壊 これだけの予兆(ニュースソクラ) - Yahoo!ニュース)。中国政府が発表している情報でも、多くの場所で不動産価格が下落していることは間違いなさそうである(【朝香 豊】中国政府が認めた!不動産バブル崩壊(朝香豊の日本再興原論㉘) - Daily WiLL Online(デイリー ウィルオンライン))。ただ、マインドを見る限りそこまで恐怖に支配されているという感じではない(【不動産】中国不動産バブル崩壊迫る 日本はジュリアナ全盛期に崩壊|日刊ゲンダイDIGITAL)。株価が低迷しているため、中国で投資に耐えうる選択肢が不動産しかないというのが一つの大きな理由ではないか。その上で、地方政府の収入の大部分も不動産開発によるものである。誰もが、不動産バブルを理解しつつも壊せない状態なのだ。赤信号、みんなで渡れば怖くないと言ったところか。

 

 ただ、このような綱渡り状態を永遠に維持できるはずもない。現在、都市における不動産取得価格が年収の何十倍と言うレベル(https://www.fukuoka-fg.com/files/items/11221/File/201011_kaigai.pdf)にまで高騰している(日本では年収の5倍程度が妥当とされ、バブル期でも平均すると東京で10倍程度であった:nomu.com通信)。北京や上海などの大都市だけではなく、地方の中核都市もかなり高い状態にある。本来なら不動産投機を抑制し、不動産価格を抑えるべきだが、それが行えないというのは中国にとっての苦悩であろう。中国共産党政府の諸外国に対する強気の態度は、このような国内的な不安定さ(不動産問題だけではないが)の裏返しではないかと言うのが私の見立てだが、皆さんはどう考えられるだろうか。中国の不動産バブルがいつ弾けるのかは予測できないが、弾けることについては不可避ではないかと思う。既に妥当なレベルははるかに超えており、最終的な結末はいつか必ず来る。しかも、それはそう遠くない時期(数年内)であろう。ここまで膨れ上がった状態を何らかの手法で乗り切れるとは思えないのだ。もちろん破綻を先送りにするため統制経済を強めることと、政府批判を回避するための外国との対立が有効である。不動産価格を何年も凍結して、インフレにより実質的価値を下げるというのが関の山。実のところ、既にその施策は数年間の間取り続けられている。不動産価格が下落傾向とは言えど暴落ではない。コントロールされていると見るべきではないか。だが、この戦略はかなり後ろ向きのものであり、かついつまでもコントロールし続けることはできないと考える。そろそろ限界が近づいている。

 もっとも、以前より中国の経済崩壊論は多くの人たちが想定し、それにも関わらず裏切られてきたという実績があるのは承知している。私自身、北朝鮮も中国ももっと早く疲弊すると思っていただけに、そのあたりは予想が甘かったと反省している。正直に言えば、私の想像を越えていた。それでも、中国の将来がバラ色だと思う人はそれほど多くないのではないか。中所得国の罠(中所得国の罠 - Wikipedia)もあるが、今後も大きな成長を続けるのは困難だろうし、人口における年齢構成の歪さは顕著である。社会システムとしてかなり偏った構成であることは言うまでもない。

 

 中国における不動産バブルの崩壊は来るか来ないかではなく、いつそれを押しとどめられなくなるかという時間の予測に焦点が移っている。崩壊を抑えるという意味において中国共産党政府は有能である。少なくとも数年間は不動産バブル崩壊を抑制し、コントロールしてきた。だが、不動産に対し政府や地方政府も、中国国民自身も依存するシステムができ上がってしまった。とすれば、不動産系大手のデフォルトが本格化する時がそれではないか。広州恒大は来年1月の支払いを待ってもらうように、出資者等と調整していると聞く(未確認情報)。こうしたパッチにより一時しのぎは可能だろうが、同様の行為を何度か繰り返すうちに自転車操業の火は大きくなっていく。

 中国の資産のうちに不動産が占める割合は莫大である。そして、そこに関わる人たちも何億人と存在する。これを救うためにはおそらく最初は地方政府、そして最後は中央政府が資金を投入しなければならないが、ツケを払わされるのは国民であろう。また、不動産価格凍結を続けると共産党員や地方政府職員の(不正な)利益は激減し、別のバブルを引き起こそうと動き始めることになる。アメリカから睨まれており、ドル安政策の結果引き起こされる元高を考えると、貿易の劇的な伸びは期待できない。要するに、何か弾けなければならない状況に押し込められている。

 私は、不動産バブルは無理やりコントロールされていても、その他の要因(何かはわからないが)により社会のタガが外れる時が来ると予想する。一つには戦争(あるいは紛争)であり、あるいは大貴bな企業負債の発覚からくるデフォルトであり、そして民間企業破綻からくる金融危機である。これらと相まみえながら不動産も押さえつけが効かなくなると考える。特定の何かではなく、全体として押さえ続けたひずみが現れてくるのではないか。

 

 だが、繰り返しになるが時期はわからない。中国という国は、日本がバブル崩壊で世界の教訓となったように、新しい形の破綻への道が今も密やかに敷き詰められている。加えて先進国の多くが混乱に直面しており、それ故に資金に逃げ場がないことが延命に力を貸すこともあるだろう。ただ、崩壊は徐々に進行しているという考えには変更はない。