Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ペット恐怖症候群

 香港で飼い犬がコロナウイルスに感染したという情報が出ている(新型コロナ 香港でペットの犬に感染確認 - 産経ニュース新型コロナ、犬への感染確認 香港患者のペット 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News)。その可能性も以前より気にはなっていた(抗体依存性感染増強(ADE)とサイトカインストーム - Alternative Issue)が、このニュースを見ると中間宿主が生じることで感染の抑制が難しくなる可能性が考えられる。通常ウイルスは、動物の種類によって過剰反応(宿主にダメージを与える)したり共生していたりする。鳥インフルエンザなどは、鳥にも人にもダメージを与えるが、SARSなどではその感染源である蝙蝠を殺している訳ではない。その体内で、周囲に迷惑をかけることなく細々と生き続けている。例えば、猫エイズ猫エイズについて知ろう!感染経路や予防接種、発症リスク)と呼ばれる猫特有の感染症は、猫系の動物以外には感染しない(正確には感染しても悪さをしないし増殖もしない)。

 さて、今回は犬への感染(陽性)が見つかった訳だが、これにより人同士の接触を抑制すれば感染の拡大が封じ込めるとは限らなくなった。もちろん、濃厚接触がある動物は主にペットであると考えられるが、家畜などでも可能性はないとは言い切れない。既に台北市ではその懸念からペットの隔離を始めているという情報もある(台北市、ペットも隔離の方針 新型コロナ/台湾 | 社会 | 中央社フォーカス台湾 MOBILE)。今後は、犬以外の動物についても確認が必要になっていくだろう。

 念を押して置きたいが、現時点ではまだそういう情報が少量(1件)出てきただけである。確かに、人への感染が騒がれている現時点でペットにまで検査を行う事例がほとんどないはずなので、それが広がっているのかどうかの実情はわからない。仮にペットに感染しても体内で増殖せずに、感染を広げることがほとんどないという結果が出ることもごく普通の話である。あるいは偶然、特異例が生まれただけだとも考えられる。だが、可能性が低くともペットを媒介して感染が広がる万が一の場合の危険性は大きいだろう。

 

 事実かどうかは不明だが、中国ではそれを恐れてペットが殺されているという噂もあるようだ。ただ、街中の野良犬や野良猫が集団で死んでいるという情報を見かけていないので、人以外の動物に感染してもそれほど悪さをしない可能性はある。問題は、それが人への感染の後押しをするような媒介をするかどうかであろう。このあたりは大規模な調査なしには判断がつきにくい。

 しかし、情報は既に出てしまった。となると、人々はペットがどこかで感染してくる可能性、あるいはペットを介して家族間で感染が広がる可能性に思いを馳せることとなる。そう、ペットの排除が徐々にではあるが始まっていくことが考えられる。ペットを家族同然と考える人はそれを行わないと思うが、それでも意識は社会全体で徐々に広がり、ペット産業に与えるダメージも決して小さくはないだろう。最も怖いのは、家畜が感染している可能性である。食肉やミルク、その他の生鮮食料品がコロナウイルスを保持しているなんて話になれば由々しき事態である。

 現在、世界的なサプライチェーンが滞り始めているが、国内での食糧生産と配送が大丈夫なため、パニックには至っていない。だが、それすらも問題となれば日本と言えどパニックが発生しないとはとてもではないが言えなくなってくる。あくまでこの提起は可能性の話であって、それが生じると断言できるものでも、既に発生しているわけでもない。そして、穀物、野菜、魚については問題ないと考えるが、敏感に反応する人はいるだろう。

 

 現時点で、中国でもそうした情報は一切出てきていないし、おそらくは私の杞憂である。未知のウイルスは、正しく恐れる必要がある。現状では暑くて湿度の高い地域においては感染の爆発的な広がりは生じていないようだ。日本も夏になればウイルスが消えるとまでは言えないが、感染の広がりが抑制される可能性は高まった。ただ、季節性インフルエンザのようにどこかに潜伏したウイルスが寒くなると再び猛威を振るう可能性は高い。また、新型コロナウイルスにもいくつもの型があることは既に各所から報告されている。想像で言うのは良くないことだが欧州やイランで広がっているものと、東アジアで広がっているものにはウイルスの型に違いがある可能性も否定できない。現状では検証できるような情報は不足しているが、致死率に差があるのではないか感じている(韓国も感染者は多いが、比較的に死者は少ない)。

 どちらにしても、再感染(ウイルスの潜伏)問題や人間以外の動物を媒介としたウイルスの広がりなど、いずれも杞憂にすぎずこれ以上世界を痛めつけないでいてくれることを祈りたい。