Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

国立人材発掘所

 今回のエントリはかなりの暴論となるだろうが、個人では負担しきれない問題を社会的にカバーする上で、一つの考え方となればと思い書いてみたい。

 

 赤ちゃんポスト赤ちゃんポスト - Wikipedia)と呼ばれる施設を聞いたことがある人は多いだろう。育てられない子供の受け皿として、民間機関が行っている仕組みの一つである。ただ、この施設の在り様について多様な意見が存在する。親を無責任だとする意見もあるし、もっと公的なシステムを構築すべきだというのもある。ただ、個人のレベルでは抱えきれない扶養義務を、社会としてどう受け止め対処すべきかという一つのきっかけと考えることもできなくはない。

 昨年、元農水事務次官が息子を殺害するという事件があった(母を「愚母」と罵倒、父は「もう殺すしかない」――元農水次官が“息子殺し”という地獄に至る「修羅の18カ月」 | 文春オンライン)。基本的にどれだけの理由があろうとも、殺人はこの社会では許容されていないことが前提にある。その上で、もっとフォローする社会的な仕組みを活用できなかったとか、様々な仕組みについて考えることが求められる。問題は、家庭内暴力を行う年齢の進んだ子供を、親はいつまで扶養すべきかということ。そして数々のしがらみ等を超えて、救済を求める場所がないのかということ。放置すればよいという意見もあるし、極論を言えば縁を切ればよいと言えなくもない。だが、それには社会的な信用が立ちはだかり、このケースのように手段を見失ってしまう人も少なくなさそうである。

 現在、引きこもりと推計される人の数は100万人にも及ぶ(ひきこもり100万人時代 : 中高年層は8割が男性 | nippon.com)とされる。生産年齢人口が7500万人ほど(日本の人口 8年連続減少 生産年齢人口は過去最低|NHK就活応援ニュースゼミ)からどんどんと減少している中で、こうした人材を活用すれば人手不足は解消できるという声もある。8050問題(8050問題 - Wikipedia)という言葉も聞いた人は多いのではないか。だが、その解決は自主努力のみに頼れば非常に難しい話である。やむを得ない事情により社会的な活動が困難な人がいるのは承知しているし、逆に「偽ウツ(うつ病関連 その16「"うつ病"を誤解させる"偽うつ病"」 | うつとたんのブログ)」のように第三者から見れば甘えているとしか思えない人も存在する。さらに言えば、極わずかではあろうが制度を悪用しているケースもあるかもしれない。引きこもりのすべてを何とかするのは不可能であろう。だが、家族がそれを望む場合に何かできないものか。駆け込み寺のような形であったとしても。

 

 一部にDV等を受けて精神的に追い込まれ、対処法すらわからず当方に暮れている人がいて、他方で人手不足が叫ばれる。もちろん、こうした人たちの全てが働けるとは思わないが、一部でも社会復帰してもらえれば国としても助かる。だからこそ、場合によりそのためのトレーニングやカウンセリングを受けられるような仕組みがあってよいのではないだろうか。そうした施設を税金と、それを希望する家族からの拠出金により運営する。家族側の支払額は、収入や財産により決められる。家族の精神的負担を解消でき、一部であっても社会復帰する人を応援する。

 現在、民間で引きこもりの自立支援を謳いながらトラブルを引き起こしているケースも生まれている(「自立支援施設に拉致監禁された」と提訴…ひきこもり“引き出し業者”の実態とは? - FNN.jpプライムオンライン)。これは、それが金になるからこそ生まれたものではあるが、それは逆にニーズがあるから(引きこもる青年を自立支援と偽り監禁、暴力的施設の深い闇 | 「引きこもり」するオトナたち | ダイヤモンド・オンライン)でもある。ところがそのニーズが正しく認識されておらず、現状は規制のほとんどない状況にある。このニーズこそが、途方に暮れている人の数ではないかと思う。

 

 国民の義務(国民の三大義務 - Wikipedia)に子女に教育を受けさせるというものはあるが、それ以上の義務は憲法に記されない。民法に子供の扶養義務がある(第7章 扶養義務について)が、これも21歳までとされる。だが、現実には成人を迎えてから長い時間を経ても親が責任感により子供の面倒を見る。それが常識である。だが、それに耐えきれなくなった時、こうした人たちはどうすればよいのだろうか。

 こうした更生施設についてh、NPO法人などが取り組んでいるれも見かけるが、研究成果として社会復帰に向けたプログラムが提案されたような事例をそれほど多くは聞かない(社会復帰研究部の概要 | 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部)。理由は、引きこもり等に至る原因が千差万別であることではないかと想像するが、この問題にはもっと大々的に取り組むべきなのではないかと感じている。

 

 タイトルの「国立人材発掘所」というものは、実のところ救済施設になる。家族の分断が進行し、個の力では家族間のトラブルをを吸収しきれなくなった時代、国がすべきか、地方自治体で行うべきかはわからないが、なんらかの社会的仕組みの導入はもっと叫ばれてもよいのではないかと思う。

 もちろん、別に収容所を作れというものではない。社会復帰プログラムを、もっとシステマチックにかつ機動的に行えればいい。施設の中にそのためのシミュレーション施設があってもよいし、新たなスキルを身に着けるための訓練施設があってもよい。社会復帰&職業訓練所。ただし、その方法は今までの施設とは少し違う。それがあることにより救われる人がいるとすれば、こういう考え方はどうだろうか。