Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

吉本問題とテロ対策

 芸人が悪いか吉本という会社が悪いかといった二項対立的な議論がなされているが、これはそもそも同じ土俵で比較する問題ではない。関わった芸人は、自分の収入(あるいは社会的ポジション)に応じた責務を認識していなかったことが全てであるし、会社としての吉本には世界的な広がりである反社会勢力との決別を十分認識できていなかったことがある。両者ともに悪いのだから。

 もちろん両者間のパワハラ問題などもあるだろうが、それは当事者間でのことであってそこを議論の対象とすることにはあまり関心がない。ワイドショー的にはこうしたグダグダの方が一番面白いのだろうが。

 

 以前にも書いたが、芸能人(あるいはスポーツ選手)の得る報酬が一般社会と比べると、かなり高いものになっていると私は感じている(これは世界的な傾向である)。理由としては、テレビ等の媒体における宣伝効果が高まったからであるが、その分芸人たちも単なるお笑いという役割を超えた価値が与えられている。その分、芸人のギャラは社会的に高いものに変わっていった。こうした流れから、犯罪だけでなく不倫で追及された芸能人についても大きなペナルティが与えられているのは、誰もが知るところである。

 一方で、昔から芸能界というのは興行側面より闇社会との深いつながりがある世界でもある。もちろん今でも、AV関係などでは芸能界を餌にしながら多くの若者を引き寄せてきた。特に吉本興業の芸人は、昔なら当たり前のように闇社会との関係を公言できていた時代もあった。あまり話題にはされていないが、ビートたけし氏は10年前なら闇営業を行っていたと公言している(ビートたけし、吉本興業に苦言 「闇営業しなきゃ食えないような状態にするのもおかしい」 | ニコニコニュース)。芸能界を包む闇は、今でも決して消えてはいない。

 

 今回、主に社会から叩かれているのは、雨上がり決死隊の宮迫氏やロンドンブーツの田村亮氏である。この二人が成功者であるということが背景にあると考えている。表でも十分な報酬があるにもかかわらず闇営業を行い、おそらく税金の掛からない収入を得ていたであろうことが問題の核心である。簡単に言えば脱税である。その上で、世間もそれほど儲けていない芸人に対しては比較的同情的ではないだろうか。

 

  現在、世界的には闇社会や反社会組織に対する規制がどんどんと強まっている。こうしたことについては評論家の渡邉哲也氏(渡邉哲也(@daitojimari)さん | Twitter)が詳しい。企業コンプライアンスはどんどんと厳格されており、これまでの悪しき付き合いを引きずる様では株主から訴訟を起こされてしまう。特に資金洗浄などの対策はどんどんと厳格化されている。ちなみに急に厳しくなったわけではなく、ここ数年かけて徐々に厳格されているものなので、吉本興業自体の認識が甘かったというのが一つ大きな問題としてある。

 

 芸能人は、その芸により社会的に賞賛され、あるいは経済的な成功を勝ち取る。単純に見た時の構図はそのとおりだろうが、その「芸」の内容はお笑いや歌のみには留まらず、司会であったりコメンテーターであったり、総合化している。すなわち、彼らはテレビ(あるいは映像)という媒体におけるアイコンであり、人気者なのだ。そして人気者になれる人こそが大きな報酬を手に入れられる。そのような仕組みを長い時間かけて構築してきたのが、テレビを中心としたメディアと芸能事務所と、そして広告代理店である。

 今の芸人は、単純にお笑いという芸が上手いだけでは大きな収入には結びつかない。逆に言えばそういう世界で競争しているからこそ、清廉さが求められる。かつては闇社会と渾然一体となって勢力を拡大してきた時代があったのは確かである。だが、それをバックにした権勢は徐々に衰退していくことになるかもしれない。ジャニーズ事務所公正取引委員会から注意がなされ(ジャニーズへの公取委注意報道、「黒幕いるのでは」の声も|NEWSポストセブン)、タレントののんを抱える事務所が不当な出演妨害に対する声を上げ(のん、隅に追いやられていた!? 「あまりにも異常」マネジメント会社が声明も… (1/2ページ) - zakzak)ている。

 すぐに変わるとは思えないが、徐々に黒い力関係の不当な圧力については資金面等から圧力がかかるようになると思う。繰り返しになるが、急には変われないものの、この問題が芸能界にはびこる様々な悪慣習を多少なりとも払拭できる奇貨となればよいなと感じている。