Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

れいわ新選とN国

 参議院選が終了した。結果は、ある意味それなりに中間的な妥当なものになった感じであろう。むしろ自民党が消費税増税を断行する中でよく踏ん張った方であるとも言えるし、それ以上に既存の野党の力がほとんど信用されていないことも明らかになった。一部では立憲民主党が勢力を伸ばした(枝野代表「次は政権選択」=躍進、共闘手応え-立憲民主【19参院選】:時事ドットコム)と書かれたりもしているが、最小に縮んだものが小さくリバウンドしたレベルに過ぎない。最も支持を得にくい増税を掲げて与党が選挙戦を戦ったにも関わらず、このていらくであるのを「躍進」とはチャンチャラおかしいではないか。

 だが、それ以上に興味深いのが山本太郎氏が率いた「れいわ新選組れいわ新選組 - Wikipedia)」と、「NHKから国民を守る党NHKから国民を守る党 - Wikipedia)」が話題を集めたことである。この両者の立ち位置は全く異なるが、いずれも既存体制に対する批判票を集めたという意味で特徴づけられる。前者は、2つの批判票を集めたと思う。一つは消費税増税に対する反対票(消費税廃止を掲げる「れいわ新選組」が大躍進するかもしれない(伊藤 博敏) | 現代ビジネス | 講談社(1/3))であり、もう一つは既存野党への批判票(立憲民主、躍進れいわ警戒 左派票・議員流出も懸念(1/2ページ) - 産経ニュース)である。

 一方で、NHKから国民を守る党NHKで放送されたその異常な政見放送「NHKから国民を守る党」、NHKで「NHKをぶっ壊す」と叫ぶ | YouTubeニュース | ユーチュラ)で一躍注目を浴びた。NHK批判票を一身に受けた形で票を集めた形になっている。逆に言えば、ろくな政策もない政党が国政選挙においてこれだけの票を集められてということが重要である。両者とも、私が見るとポピュリスト政党である。右派系のポピュリスト的な位置づけにメディアからおかれている政党として維新があるが、その左派的な立場を確立したのがれいわ新選組と言える。ここで言う「ポピュリスト」という定義が正しいかどうかはわからないが、既存が他の政党とは異なるアプローチで国民に訴えかけている点では目新しい。

 

 これらの政党は比較的わかりやすいテーマを掲げて、選挙戦を戦っているのが特徴である(維新は地方政治における実績を示している意味においては同じではない)。同じような存在として、未だに国政では議席を獲得できていない政党として幸福実現党幸福実現党 - Wikipedia)があるが、選挙の戦い方が変わってきたと思わせる象徴的な結果であったように思う。山本太郎氏(山本太郎 - Wikipedia)は芸能界出身の有名人ではあるが、単純な芸能人候補が勝っているという訳ではない(参院選 今回も乱立の著名人候補者、当選はわずか…「“集票マシン”にしないで」 専門家からは苦言も - 産経ニュース)ことも特徴的である。

 れいわ新選組は2%の得票率を得て政党要件を満たしたわけだが、正直のところ腰を据えた政策はないとみている。山本氏は左派の接着材として働くことを企図していると思うが、おそらくその目論見は上手く行かないと考える。

 

 一方で私が注目しているのは、NHKから国民を守る党である。もちろん、党首の立花孝志氏が政治家として優れており、何らかの役割を果たすという意味ではない。だが、憲法改正議論においてキャスティングボートキャスティング・ボート - Wikipedia)を握る可能性があるとして注目してみたい。

 早速、総務大臣が反応を示した(NHKスクランブル化に反対 受信料制度で総務相 | 共同通信)。さすがにこの素早さについては、ちょっと興味を引かれている。たった一人の当選であれば、本来歯牙にもかけないで済ませても良い問題だと思うのだが、なぜか選挙結果が出てすぐにこうしたコメントを出さなければならなかったのである。単純にNHKをぶっ壊すことには私も同意しないが、NHKの放送の範囲を限定することの議論は為されて良い。今回の結果は、その議論の緒につくきっかけとなる。

 公明党憲法改正に賛成する可能性は決して高くなく、現在メディアが報道している改憲勢力という数字には大きな意味がない。また、崩壊しつつある国民民主党などには自民党につきたい人も少なからずいるだろう。だからこそ、NHKから国民を守る党にも重要な役割が映ってくる可能性があるのだ。既に立花氏はNHKスクランブル化を交渉材料として持ち出している(N国党の立花代表「自民党がNHKのスクランブル化に賛成するのであれば改憲に賛成する」、丸山穂高議員との面会も予定(AbemaTIMES) - Yahoo!ニュース)。

 

 れいわ新選組は、山本太郎氏の得票数(れいわ山本氏、最高得票で落選 97万票以上、特定枠が影響:政治:中日新聞(CHUNICHI Web))が注目を集め、次の選挙における存在感を大きく挙げることに成功した。これは一流のビジネス(山本太郎氏の驚くべきビジネスモデル - FNN.jpプライムオンライン)であると言って良い。

 だが、それであっても彼の影響力は政策に及ぶところまでは届かないと思うし、彼を中心とした政権交代にまで届くこともないだろう。メディアの注目は間違いなく集めるし、一定の力を野党内で確立することにはなるだろうが、そこがものモデルの限界である。彼は、どの政党とも話し合いをすることを謳っているが、与党が彼を呼び内部に入れることは考えられない。

 

 自民党としては、NHKを解体するつもりはないだろうが、なんらかの制限をかける方向にシフトすること自体には理解を示す人は少なからずいると私は考えている。今後の注目ポイントはここにあるのではないだろうか。