Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

チャンスは与えられるものではない

「もう一度、チャンスを下さい」 民主・海江田万里代表(http://www.asahi.com/politics/update/0420/TKY201304200247.html

 福岡市内における民主党の海江田代表の街頭演説での台詞であって、比較的よく用いられる政治的なフレーズでもある。選挙に勝たなければ政権与党として政治を仕切ることはできないのだから、チャンスを国民からもらうという流れ自体は確かに間違いではない。
 ただ、チャンスは基本的には与えられるものでは無く勝ち取るものである。成功はチャンスをものにした結果として与えられる成果であるが、そのチャンスが漫然と目の前に現れるなどと言うことはラノベか夢でもなければ存在しない。成功は運により与えられるが、その前提たるチャンスを得る資格は事前の努力を認められたものにのみ与えられる。
 すなわち、チャンスは自ら引き寄せようとまず努力して最後に天命を待つものだ。選挙の場合を考えれば審判を下すのは国民であるが、まずは国民が支持できるような結果を残してからがスタートであろう。期待だけで重い地位に就くことができるのは最初だけなのだ。

 民主党は、もはや期待に頼ることがマイナスに作用する政党になっている。逆に言えば、論戦で国民が理解できるように政府に打ち勝つことのみが今課せられている試練である。与党でないため政策実行により結果を残すことができないのだから、その説得力のある言葉を発することの積み重ねのみが今残せる唯一の結果である。
 国民は3年間期待を思いきり裏切られるという苦い経験をしてきた。そして、反省の下で甘い夢や幻想にはすがらないと民主党に審判を下した。だとすると、今すべきことは幻想や可能性ではないと言うことを証明することしかないではないか。すなわち、すぐに政権に戻るという自らの幻想を打ち破らなければならないのだ。
 逆に言えば、次の参議院選挙に進退を賭けている海江田代表には、今の民主党を立て直すことはできないということにもなる。そんなに早く民主党に貼られた不信感をぬぐえる訳ではないのだから。
 マスコミ達は、自民党が下野した後も何度も「自民党は何も変わってはいない」と言ってきた。私は民主党政権交代する前から既に自民党は変わりつつあると感じていたので、そのイメージからすれば今下野した民主党の方がずっと変である。変わらないどころか下野によりむしろおかしくなっているイメージすらある。

 さて、チャンスを与えられるものだと思っている人たちは、何も民主党に限らず世の中にはいくらでも存在する。そして多くの場合には公平にチャンスが与えられないことに不満を漏らす。しかし、実際には公平に最初の機会が与えられているケースは少なくない。ただ、むしろチャンスが与えられる舞台に立つまでの努力が不足しているのである。それは、チャンスを掴み取る努力が不足していることでもある。
 ただ何でもかんでも努力をすればよいと言う訳ではない。チャンスを与えたくなるような努力をしているかどうかが全てである。自己満足の努力などいくらしようが屁の突っ張りにもなりはしない。「こんなに頑張っているのに」といくら嘆いても、方向性の誤った努力には望むような成果は伴わないものなのだ。

 その上で、民主党は政権時代に向かう方向も間違っていたが、運良く彼らは動かす力を欠いていた。結果として多少の弊害は残したものの多くは無駄な時間を費やしただけで済んでくれた。それはむしろ僥倖であったのかも知れない。
 3年間のチャンスを生かせなかったものが再び夢を語っても、それを信じるものはそう多くはいまい。