Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

おくすり手帳

 私は別に薬剤師に含むところがある訳ではないが、医薬分業の現状を見ていると日本における状況の曖昧さや不合理さが強く感じられるところでもある。裁判員制度と同じように、理念に関しては同意できる部分はあるものの実行性についての疑問が残る制度ではないかと思うのだ。医薬分業(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%88%86%E6%A5%AD
 wikiによれば制度イメージは欧米のシステムにあるようだが、現実には医師の処方に対して薬剤師が異議を唱えるような状態は想像もできない。分業化してメリットがあるかと聞かれても、患者側からそれを感じているケースはあるのだろうかと疑問が膨らむ。少なくとも病院と薬局の2カ所を訪れなければならないという手間が増えたし、病院で処方されていた時より調剤が早くなるかと言えばそれほど変わったようにも思えない。むしろ病院の待ち時間と処方箋薬局の待ち時間を加えれば、トータルが増加しているかも知れない。他にも、一部の人には有益かも知れないものの毎回毎回薬についてしつこいほど説明をされるという現状も面倒だ。薬について誰に相談したいかと言えば、病状を知っている医師にであって病状をきちんと理解し切れていないであろう薬剤師に、しかも最初から説明するなんてことをしたいと誰が思うであろうか。

 そう考えてみると、患者側から医薬分業のメリットを感じることなどほとんど無いようにも思えてくる。では、なぜこんな制度が導入されたのかと疑問が湧いてくる。おそらく私以外にも疑問を感じている人は少なくあるまい。実際、別々の事業体が医院と薬局を運営するため人件費が余分に掛かり、コストもアップしているのである。
 医薬分業を推進するところの情報を見ると、薬の飲み合わせなどに関する副作用の問題が大きな理由の一つとして挙げられたりもするが、多くの患者は飲み合わせを気にするような状況でもあるまい。最悪のケースを想定して多くの人に苦労を強いるシステムではないかと感じる。処方箋が公開されるというメリットも謳われるが、それが即分業が正しいという結論には結びつかない。院内処方であっても公開する仕組みがあれば問題ないし、カルテ等も電子化が進めば患者が情報に容易にアクセスする仕組みはそれほど難しいものでもない。正直、私が納得できるような理由が挙げられているようには思えない。どれもとってつけたような建前論であって現実的ではないのだ。(医薬分業のすすめ:http://www2.nsknet.or.jp/~s-yoshi/)まだ、医師が薬価差益欲しさに薬を乱発しているのを防ぐというと言う目的を強く言った方が腑に落ちるというものだ(ちなみに、今はそのメリットも薄い)。
 だから、どうしても薬剤師関係の業界が医師の下で働くのではなく独立した権益を認められたいという疑念が止むことはない。

 欧米が歴史的経緯から医薬分業を行っているというのは判らなくはないのだが、それが日本の歴史的経緯や現在のシステムに適しているかと言えば必ずしもそうではないだろう。
 加えて、近年の医療費増大は国家財政上の大きなテーマにもなっているではないか。分業はその意味で結果的に医療費の増大に貢献している(医薬分業は患者のためか?:http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1773)。

 ところで、薬局に行くと「おくすり手帳」という物をもらうことになる。正直強く勧められるし、法的に必要なものかと勘違いしてしまいがちだがこれは断ることができる。その上で言うと、以前は「おくすり手帳」に薬剤師が記帳することで料金が発生していた。すなわち、断ればその分安くなっていたのである。毎回同じ薬であってもシールを貼ったりするだけで料金が発生していた訳だ。実は現在では、記入の有り無しに関わらず一定の金額が加算されるようになったため、断れば下がると言うことではなくなったのだが、このシステムにも疑問は絶えない。
 ICカードか何かにしてカードリーダーを各薬局や医院に置くようにすればいいではないか。東日本大震災の時に「おくすり手帳」が薬だったという話は良く出てくるが、紙の手帳でかさばる物が洪水の後で残っている方が珍しい。
 できれば、コストアップではなく効率化をもっと目指してもらいたい。少なくとも現状の医薬分業は私から見れば患者のためのものでは無い。