Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

メディアに求められるもの

 まだ完全復調ではありませんが、肩慣らしに少し書いてみます。

 アノニマス(anonymous:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%83%8B%E3%83%9E%E3%82%B9_%28%E9%9B%86%E5%9B%A3%29)により北朝鮮の代表的な対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ (我われ民族どうしの意)」がハックされ、そこに登録されていたメールアドレスが暴露された(http://sankei.jp.msn.com/world/news/130406/kor13040619420007-n1.htmhttp://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013040600274)。既に多くのネットメディアではこのことに触れているが、大手メディアはハッキング自体については報道するものの、このメール関係についての問題に詳しくは触れてはいない。
 確かに、本当の北朝鮮スパイやシンパは不用意にサイトにアドレスを記載しているとは考えにくいし、成りすましや愉快犯的なものも少なくないかも知れないため、正確な情報の収集には時間と手間がかかるのは判らなくはない。ただ、この問題は決して軽視して良いものでは無いのも確かだと思う。実際韓国では社会問題になっており、国自体を揺るがしかねない大騒動になりつつあるが、日本でもフリーメール以外にいくつかのメディアや大学などのアドレスがあったこともわかっている。

 私は情報収集のためにこうしたサイトに登録して活動するジャーナリストや研究者がいてもおかしくないと思う。仮に本当にシンパとして工作活動に従事しているのであれば素直にフォーマルなアドレスで登録するはずもないだろうし、ここへの登録がそのまま大問題に発展することとは思わない。仮に日本人が実名や自らの所属を明かすような形での登録をしているとすれば、単純に情報を扱うものとしてはお粗末なことだと感じるだけである。しかも、このサイト自体に登録しても掲示板に書き込める程度のものであって、現実には情報収集できる程のものでは無いとも言われている。もちろんお粗末なシンパがいない訳ではないかも知れないし、今後は公安に目を付けられることとなるだろう。他方で在日朝鮮人や韓国人が登録しているとすれば、結果的にではあるが日本での何らかの活動に関係していると疑われても仕方はあるまい。
 表面的な問題を取り上げることにそれほどの意味は見いだせないが、一方で膨大な無駄の中に一部の真実が隠されているのも社会の常であって、それを抽出できるかどうかが情報の海を渡る上に置いて非常に重要視される。単純に登録されている人がいるとか名前が出ているという問題よりも、こうした場所をきっかけに宣伝工作が効果を発揮したり、その延長としてシンパを増やしていく流れを知っておく必要があるのではないだろうか。ネズミ取りがネズミになったという程簡単ではないだろうが、秘匿情報に触れたと思うほどにその意志に巻き込まれやすいものでもある。
 例えばかつて大きな社会問題となったオウム真理教でも、最初のうちにはマスコミは彼らに対して比較的フレンドリーであり、その宣伝を請け負っていたことを覚えている人も少なくないであろう。中には露骨に擁護を請け負う識者もいたではないか。当時はよくわからなかったと言えばそれまでかもしれないが、多くの人が感じていた不安は実際に的中していた。素人であるならば言い訳もできようが、プロである識者やマスコミがその片棒を担いだことは忘れてはならない。

 オウム真理教の件でも思うのだが、特ダネを掴んだと思ったマスコミやジャーナリストは、その特権的地位を最大限活用するために情報を秘匿する傾向が強い。もちろん、現代資本主義においては情報の価値は何よりも高いのでそれ自体は当たり前のことかも知れないが、商業ベースの秘密と国防レベルの秘密とではおそらく意味が違う。ストックホルム症候群http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A0%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4)ではないが自分だけが関わったものほどその対象への思い入れが強くなりやすい。洗脳が限定された空間で行われるのは、視野や対象を限定した方が思考も特定の方向に動意付けやすいという面もある。
 そして、その偏りを是正するのは広い見地からの情報と意見なのだ。少なくとも、細部の情報は別にして自体の概要を広く広報することは日本のマスコミに求められる最低限のノルマだと私は思うが、それをまだ行っていない。これは、日本のマスコミ特有というか日本社会特有の内弁慶さが大きく影響しているのではないかと思う。
 内部的な批判は即座にでも反応し可能性ですら処断しようとするが、対外的な問題には及び腰となる。無用のトラブルを避けたいという心理面は判らなくはないが、個人レベルの生活であればいざ知らず、マスコミというのはトラブルを抱えながらも戦っていくべき存在ではないか。特に、国民個人とではなく国家や大きな組織と戦うからこそマスコミには価値がある。反権力は、何も国内向け限定のフレーズではないはずだ。

 結局のところ日本国内にも多く存在し、あるいはマスコミ内部にも北朝鮮のシンパがいるということをなんら触れようとしないままに有耶無耶にしているとすれば、それは国家としてのありように間違いなく禍根を残す。まず必要なことは、秘密にすることが明らかに国家的に意味があること以外は、まず判っていることの中で公表できる事項を詳らかにすることではないか。
 メディアは誰よりも隠すことについて他者には厳しい。その厳しさを自らに課せられない限り、内弁慶の誹りを免れ得ないのは間違いない。