Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

フッ化水素等の件

 一昨日より、日本が半導体生産に使用される三つの材料の輸出制限に関して話題となっている(半導体材料の対韓輸出を規制 政府 徴用工問題に対抗 来月4日から - 産経ニュース)。韓国の数々の非礼に対し日本が取れる対応として、以前より検討されてきたものであって意外性はないが、メディアやネットの反応はやや過剰ではないかと感じている。

 私は随分以前より、韓国とは普通の関係になるべきだと考えてきたし、それが少しずつ進んでいる様なのは悪い話ではない。礼には礼を、信頼には信頼を。そして、比例には相応の対応を。それだけのことである。

 

 多くのメディアは徴用工問題への対抗措置と報じているが、経済産業省が示した根拠(大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて (METI/経済産業省))は外為法に基づく安全保障上の対応であると読むのが素直ではないかと考える。徴用工問題への対抗措置も意識の片隅にはあるかもしれないが、あくまでそれはメインではない。核兵器製造に利用される重要物資の制限は、国連安保理決議(朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁 - Wikipedia)等に基づくものである。要するに、韓国から北朝鮮(場合によってはイランも含む)に物資が流されているという懸念が最大の理由であろう。特にフッ化水素については核開発にも使用するとされる。これについては、西村副官房長官もそのように発言している(徴用工の「対抗措置でない」 西村官房副長官、韓国へのスマホ材料輸出規制強化で - 産経ニュース)。

 韓国政府は驚くべきところかもしれないが対抗措置を一切準備していなかったようで、WTO提訴等を口にはしているものの国内向けのパフォーマンスに過ぎない。今後、水面下で日本の主要政治家にすり寄ってくる、あるいはアメリカへの働きかけに奔走するだろう。だがほんの少し前に韓国の国会議員がけんもほろろに対応された(「合わせて20選」韓国議員5人を日本は初当選議員1人が相手 「このような冷遇初めて」 | Joongang Ilbo | 中央日報)のは記憶に新しいし、そもそもこうした措置を講じたのはアメリカとの密な関係があっての話である。むしろ、アメリカ側からの働きかけによる行動の可能性すらある。

 

 実は、フッ化水素等の輸出手続き厳格化については、上記のような理由により当初は混乱するかもしれないが、韓国が横流しをしていないことを証明できれば早々に解決する問題だと私は思う。ホワイト国に指定されていない国々は手続きを行っているのだから、韓国にやましいところが無ければそれほど難しいことではない。

 逆に言えば、瀬取り等物資の横流しに関するかなりの情報を、日本政府はアメリカと共同で握っていると考えた方が良いのではないか。確実な証拠があれば、セカンダリーボイコットを課すことが可能だが、そこまでには至らない巧妙な手口(ただ、懸念は大きい)があるため、今回のような措置に至ったのではないかと思っている。

 喉首に匕首を突きつけられている状況なのだから、韓国としては物資の横流しを厳しく取り締まらなければならない。また、これにより北朝鮮の核開発への大きな重しになれば、それもまた日本にとっては大きな意味がある。

 

 それよりもずっと大きな問題が、ホワイト国指定解除の件である。これは、今回制限された三品目以外にも安全保障上の問題があれば、直ちに優遇措置を取り消していくということに他ならない。優遇措置解除は、WTOにおいても懸念事項ですらない。告示改正を伴っているのでかなり前から準備してきたことが分かる。メディアからの懸念に対しても、相応の準備をしているであろうと考えられ、今後より詳細な理由等も報道されるかもしれない。

 韓国をホワイト国から外したということは、韓国から得られる経済的な利益を多少毀損したとしても、日本政府として構わないという判断をしたのである。つまり、経済第一主義で動いてきた日本にとっては大きな方向転換だと言えるだろう。もちろん、そのための下準備は安倍政権下で着々と行われてきていた。各種報道を見ていれば誰にでもわかることである。最大のポイントはアメリカ政府との協調姿勢であろうし、それを後押しした韓国政府の自分勝手な行動が主因でもある。

 中国との緩衝地帯としての韓国の役割を、これ以上維持するつもりがないということをアメリカと日本が決断した(かなり前に決断している)ことの傍証であり、経済的な損失を最小化するために徐々に進めてきた内容でもあるだろう。これは、東アジアにおける勢力変化の大きな兆候であり、トランプ大統領日米安保に言及したのも、そういう流れの中にあるのかもしれない。つまり、次は日本が直接対面しなければならないということではないか。韓国へのフッ化水素輸出制限を考える以上に、今後の東アジアの安全保障体制のドラスティックな変化を見ておかなければならない。