Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

レーダー問題が暴く過去

 韓国の外交が基本的に国内を向いて言っているのは、ここのところの日本に対する言動を見ていればよくわかると思う。彼らからすれば、韓国国内世論と、同じ朝鮮民族である北朝鮮が最優先である。だから、ここ数日の韓国政府の態度や国防省の発表に腹を立てている日本人も多いと思うが、正直まともに取り合うだけ無駄である。経済情勢等韓国は現在でも非常に苦しく、時間が経過するほどに日本に泣きつかなければならない状況は増加する。すなわち、日本側とすればこうしたソフトな対立構造が続いた方が、韓国の経済的なすり寄りを断る理由ができる。むしろ、ミスを早期に認めて融和を演出してきた方が日本として対応が難しくなる。

 声の大きな方が勝つという国際世論の問題もあるが、アメリカが関与しないように正直こんな程度の論争で国際世論が動かされることはない。日本としては面倒だが、粛々と事実を発表して韓国の主張を否定し続ければよい。詳しく調べれば韓国に非があるのは誰が見ても明らかであり、その状況が分かるように公式発表(関係者リーク報道を除く)をきちんと整理しておけばよい。そのレベルですら、統一されていないという点で韓国の主張には道理がない。

 例えば、一昨晩日本の哨戒機が威嚇飛行したと言ってきた(韓国 海自哨戒機が威嚇飛行 無線に応答しなかったと説明 | NHKニュース)。日本に攻められていると感じているからこその反発であるが、これまた韓国軍関係者リークだけではなく、国防省の発表(韓国、「今年3回、日本が威嚇」 非難に岩屋防衛相反論 - 共同通信 | This Kiji)でもなされており外務大臣の会合でも出たとされる。ただ、言葉はうまく使い分けられており、国防省は数字を示さずに威嚇と発表。その後に軍関係者リークの形で数字が出たようだ((朝鮮日報日本語版) 韓国艦に威嚇飛行した海自哨戒機、20回以上警告するも応答せず(朝鮮日報日本語版) - Yahoo!ニュース)。韓国のこうした発表は、政府関係者よりメディアに情報リークとして出されており、日本がその報道に反論しても最後には政府はそのように発表していないと逃げを打てるようにしていることが多い。そして昨日には証拠とも言えないような不鮮明な写真を発表した(「機械は嘘をつかない」韓国国防省が”自衛隊機による低空威嚇飛行の証拠”画像を公開、動画の公開は「短い」と消極的 | AbemaTIMES)。

 ここに至る韓国国防省の対応と国内的な背景については、毎日新聞の米村デスクの解説がわかりやすい。

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 文政権よりも、国防省が威信をかけて日本と勝負している姿勢の様である。最初からミスを認めるつもりはなかったはずなので、結果的にはどのようなルートを通っても現状に至っていたと思うが、韓国内のドタバタが想像できて微笑ましい。今頃は、苦労して次の手を考えているだろう。如何に論点をずらしFCレーダー問題から遠ざけるか、その点では少なくとも現在は成功していると言っても良い。もちろん低空飛行問題についても韓国としては全く根拠ある説明をできていないのだが。

 さて、今回公開された画像が非常にお粗末であることは、既にネット上で数多く暴かれている。機体長が35.6mなのに示された画像では海面が映っていないため、韓国が主張する60mというのは明らかに嘘であるとか、そもそも搭載しているレーダーでは200ftという高度を示すことができないとか。画像を修正しているという意見もあるが、現時点では私としては何とも言えない。おいおい明らかになっていくだろう。韓国側からおかしな資料が出るほどに、韓国のおかしな発表実績が積み重なっていくのだから、日本側としては面倒でも一つ一つ根拠を持って反論するに限る。ただ、こんな茶番に対応しなければならない韓国国防省の担当者の苦労が偲ばれる。この論争で明確に敗北すると首を切られるかもしれないとすれば、どんなに苦しくとも決して止められない戦いになっている。

 さらに、日本側としては瀬取り問題を別途提起(防衛省・自衛隊:北朝鮮船籍タンカー「AN SAN 1号」と船籍不明の小型船舶による洋上での物資の積替えの疑い)しているので、こちらの方がじわじわと効いてくることになる。北朝鮮船に横付けしている国籍不明船が韓国によるものかどうかはわからないが、哨戒活動の中心はこの調査にあり、日本が委縮する必要はどこにもない。韓国が北朝鮮に石油を不正に流している疑惑については、既にロイターが報じている(South Korea 'selective' in implementing sanctions on North: group | Reuters)。この問題は国際的な取り組みであり、それを非難することはさすがの韓国でもできない。

 さて、日本側の対応としてはこの問題をレーダー問題で終わらせる必要はない。むしろ、韓国の発表がどれだけ嘘が多いのかを一つずつ示していける大きなチャンスだと考えた方が良い。確かに声が大きな方が国際社会に主張を広めることが出来た側面はある。特に日本の場合には、かなり甘い態度で接してきたことで不必要に傷口を広げてしまった過去を持つ。だが、今回について言えば決して現状の論争を無理に解決する必要はない。この論争の中で、韓国はどんどんとおかしな主張を続けてくれるのである。そこに嘘が多いということが国際的に証明できれば、徴用工問題や慰安婦問題でも韓国の主張には嘘が多いという傍証となるのだから。

 この問題をもって、韓国に制裁を加えるべきだと息巻く人は多いが、私はこれまで日本側の戦略ミスにより不当に韓国から被害を受けた問題を、有利に運べるための最高のチャンスを韓国側が提示してくれていると思っている。長い時間をかけて形成された認識であるため容易に覆せるものではないが、少なくとも私が見る限り韓国はどんどんとオウンゴールを上げているように見えるのだ。だからこそ、日本側としては怒る必要も慌てる必要もなく、粛々と韓国の嘘や変な主張を国際社会に堂々と発表することで良いと考える。そもそも、こんな面倒な相手に真剣に怒りを向けるのは精神性性状よろしくない。それよりは、この後のことを考えて生暖かく接するべきだろう。