Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

アメリカを困らせる韓国

 最近韓国が中国と接近しているという報道は多いが、このことは日韓の問題よりも米韓の問題としてより大きな出来事であると考えた方が良い。韓国は、盧武鉉の時代からバランサー論ということで中国とアメリカの間で上手く立ち回ることでキャスティングボートを握ることを企図してきたが、ここにきてアメリカが様々な形で中国包囲網を広げつつある中で、その立場が非常に微妙になりつつある。
 日韓問題も、個別の鞘当てはあるものの大きく考えれば米韓問題(というかアメリカを中心とした勢力争いの一つ)に帰着される。日本はアメリカの立場を考慮して様々な部分で自制している面も多く、それは韓国を西側諸国の一員として位置付けてきたことからきている。しかし、産業的にも中国への依存度が高まり実質的に中国の意向に逆らうことが難しくなった韓国は、バランサーというよりはむしろ米中両者の間をうまく立ち回ることで生き延びようとしている。
 アメリカ軍による戦時統帥権の返還問題(http://kotobank.jp/word/%E6%88%A6%E6%99%82%E4%BD%9C%E6%88%A6%E7%B5%B1%E5%88%B6%E6%A8%A9%E7%A7%BB%E7%AE%A1%E3%81%AE%E7%B1%B3%E9%9F%93%E5%90%88%E6%84%8F)は、戦力の維持費(日本で言えば思いやり予算)を引き出そうという思惑もあるだろうが、軍事情報が日本以上に中国に筒抜けとなっている韓国とは共同戦線を張れないという米軍の切実な願いもあるように感じている。
 加えて、MD(ミサイル防衛システム)への不参加問題(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131016-00000035-yonh-kr)は、こうした流れにダメを押す行為ではないだろうか。

 さて、これとは別に韓国は日本の外務省が竹島に関する動画を公表したことに対する反発として、竹島への軍隊上陸を公開した(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131025/k10015547451000.html)。実は、韓国は日本と直接事を構えないことを考えて竹島に上陸しているのはあくまで軍人ではなく(武装)警察官であることとなっている。もちろん、それが本物の警察官なのか軍人なのかは別として、あくまで軍人が紛争地に乗り込んだわけではないという前提を示してきた。
 昨年、李明博竹島に上陸した時、天皇陛下侮辱問題がクローズアップされていたためそれほど大きな問題とはならなかったが、韓国の大統領は軍のトップでもあり軍事侵攻と変わらないという論評があった。
 日本からすれば領土に軍事的侵攻をかけられたという状態であって、完全な紛争状況になったことを意味するが、軍のトップである大統領の上陸が既に行われているため、これをもって軍事的反発ということにはならないだろう。また、アメリカとしても日本と韓国が紛争を生じることは望まないので、日本には自制を求めると思われる。
 ただ、こうした行為は間違いなく韓国側がけしかけており(彼らは日本が先だというだろうが)、その認識はおそらくアメリカ側にもある。現状維持を希望するなら日本側の自制を期待し続けるだろうが、先日の2+2にもあったように日本の集団的自衛権の行使に前向きである以上、韓国のこうした行為はむしろアメリカ側の不興を買うことになるだろう。

 さて、日本としては軍事的な対抗策がとれるわけではないので、明確な抗議を行うと同時に経済的な対応を進めることができる。所謂経済制裁であり、それを今行うのが良いのかどうかは様々な判断があり一概には言えないだろうが、行うための根拠を得たことにはなる。
 面子を理性よりも前に持ってくる行動がこれまでの韓国のパターンであり、それ故に理性的なあるいは学術的な議論が深まることはなかった。そもそも、現在の日本は国際司法裁判所への提訴こそ可能ではあるが、現状竹島を取り戻すための確実な手段を持ち合わせていない。韓国が本当に竹島を手に入れたいのであれば、問題を炎上させない方が有利であるのは間違いない。
 二国間問題であれば他国が口をはさむこともないのだが、その紛争を大きくしてしまえば他国の問題に対する介入に理由を与えてしまう。そもそも、国際法的に韓国が有利であればもっとスムーズな交渉が可能であるにもかかわらず、理性的な行動ができないのは自らの不利を認識しているからであろう(大部分の国民は妄信的に信じているようだが)。
 毎度毎度火に油を注ぐのは、これが事実を追い求めているのではなくアイデンティティ主張の道具となっているからに他ならない。そしてそれこそは感情の発露でもある。

 感情的な行動は、往々にして理性的な計画を捻じ曲げてしまう。アメリカが最も苦慮するのは、理性で話し合いができないことであろう。日本の過度の軍事力も容認しがたいアメリカとしては、日本がそれを持つような動きに至る行動を韓国に控えてほしいのは間違いない。ただ、それができずに突っ走る状況をアメリカはどのように評価し、今後どのような位置づけに置くのであろうか。