Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国脱出

 現状、韓国の一方的な言動に日本の世論ももっと強硬な姿勢を示すべきであるという声が広がりつつある(文大統領の対日批判発言に日本の5大日刊紙が一斉に批判社説-Chosun online 朝鮮日報)。一方で、レーダー問題では日本もこれ以上の追及を続けるのは法的に容易ではないとの意見もある(レーダー照射問題 韓国に「強い抗議は難しい」軍事ジャーナリストが解説)。どちらにしても、日本は感情的な対応をするのではなく、現状のように少しずつ冷静に手続きを進めればそれでよいと考える。政府もガス抜き的な意味での強硬な発言が漏れ出ることはあったとしても、一部の人が望むような極端な政策は取らない。そもそも日本が韓国の扇情的な行動と歩調を合わせる必要は何もない。韓国はむしろ日本を同じ土俵に陥れ、両成敗的な流れに持って行こうとしているのだから。日本が対策を取れば、それに応じて韓国は再びさまざまな攻勢をかけてくるであろう。韓国からすれば、軍事力はなくとも経済力において日本は十分な脅威である。例えば報道されていない状況で何らかの経済的な戦略物資が日本から差し止められていたとすれば、韓国は決定的な状況に陥る。それを政府が宣言していたとすれば大きな政治的論争になるが、特に政府主導で行われていなければ韓国は反論できない。逆にそうした情報はメディアにも出ないので、私たちが考える以上に韓国は心理的ダメージを日本から受けているのかもしれない。韓国から批判を許さないためにも、中国が行う以上に政府は冷静な立場を崩さずに微笑みながらできることをやっていくのが良い。

 さて、現状の対立とは別に気にしていることについて少し書いてみたい。現状、文大統領の支持率は40~50%付近である。今回の年頭の記者会見で発言したことを受けて少し上昇した様ではあるが、一時の80%近い支持率には到底戻る気配すらない(支持率下落で世論意識=韓国・文大統領の年頭会見:時事ドットコム)。その最大の理由は経済政策の失敗だが、文大統領は「方向性は正しいが、もう少し時間がかかる」といったニュアンスの楽観的発言をしている(韓国文政権、経済運営なお強気 (写真=共同) :日本経済新聞)。元々、左派政権であるため親北政策と分配に配慮した政策を中心に据えており、企業に厳しい対応をしてきた。多少の路線変更はあったとしても、方向性としては今後もあまり変わらないと思う。そもそも現在文政権が行っている経済政策では、私からすると韓国が経済的発展を出来るものとも思えない(韓国経済「板挟み」の窮地、7つの指標で読み解く減速 | 西濱徹の新興国スコープ | ダイヤモンド・オンライン)ので、支持率低下は今後も続くだろう(韓国・文政権の支持率低下、2019年は八方ふさがりの年になる | 元駐韓大使・武藤正敏の「韓国ウォッチ」 | ダイヤモンド・オンライン)。ただ大統領の任期はまだ3年強残っており、そうすると経済的な失策を別の政策によりカバーするしかなくなっていく。行うことは現時点でも明確に明らかになっているように、民族の自決(北との融和、米韓同盟の終了)と日本への敵対である。自らが最も得意としている内容により失点をカバーするのはごく普通の手法である。民族を前面に押し出し一体感を醸成すると共に、国民意識を誘導するために明確な敵を演出する。ありがち過ぎて敢えて説明するまでもないほど典型的なパターンだが、この方針には韓国国民は否定的な意見を言うことができない。

 もちろん明確に日本と敵対するなどと言いはしない。だが現実には敵対的な政策や主張を次々と繰り出す。既にその状況を多くの日本人は目の当たりにし、反発もしくは戸惑いを持って受け止めつつあるのが現在の状況である。この韓国政府の方針は、よほどの変化や事件でもない限り止まることはないだろう。経済でべったりと中国に依存してきたが、中国の変調を受けて韓国経済は少々の改革を行っても急激に復活することはない。日本ほどの国家体力が無いため、下り始めると国民生活は大きな影響を受ける。北朝鮮との融和策を急ぐ理由は、左派の見ている夢に多くの国民を引きずり込むための手段である。というか現状の韓国として夢を見られるのはそこしかない。

 何度か紹介している(韓国は失われた20年では終われない - Alternative Issue)ように、韓国は今後日本の「失われた20年」以上に厳しいことになっていくと私は考えている。韓国経済の成長サイクルはかなり変調をきたしており、現状サムスンやLGといった一部先端企業と不動産のみに頼る形になっている。それ以外の財閥企業の実情は想像以上に悲惨である(焦点:韓国版ラストベルト、凋落の企業城下町を襲う失業と自殺 | ロイター)。日本以上に少子化が進展しているにも関わらず、若者の失業率が高止まりであるのはどう考えても厳しい(「バイトすらない」韓国の“青年失業率”が最悪レベルに…頼みの綱は人手不足の日本なのか(慎武宏) - 個人 - Yahoo!ニュース)。要するに内需が疲弊しまくっているということである。「HELL朝鮮」という言葉が流行したのは2年以上前かも知れないが、現在大挙して日本を含む多くの国々に就職口を求めているのは報道でも聞いたことがあるだろう(「ヘル朝鮮はもうこりごり…」“脱韓国”を夢見る韓国の若者たちが選ぶ「移住先」とは? | S-KOREA(エスコリア))。

 韓国経済低迷は今後も続き、若者は国を見捨てて出て行ってしまう。アメリカも日本も韓国に優しく接してくれない状況。日本側から考えれば自業自得だと思えるが、このように前の見えない閉塞状況では文大統領が用いる敵を作るポピュリズム政策は嵌りやすい。本来理性的な思考により、絶望という感情で自暴自棄な行動をしても良いことなどある筈がないのは理解すべきなのだが、少し前「瀬戸際外交」と書いたようにどんどんと悪い方向に進んでいる。だからこそ、その先にバラ色の状況などないのは明らかなはずでも、北朝鮮との統一という夢にすがらなければならない。だが、いつかはその現実にも気づく時が来る。統一など夢物語だったのだと。そもそも、韓国が北朝鮮と統一を果たして核という力を持てば、東アジアの軍事バランスに大きな問題が生じてしまう。別に積極的に日本を救うつもりはなくとも、アメリカはそれを許さないだろうし、万が一統一朝鮮がそれを持って日本を脅す様なことがあれば、日本の核武装論も現実的な話となってしまう。日韓の対立が激しくなればなるほど、日本も被害を受けるがその何倍も韓国はダメージを受ける。そして漁夫の利を中国が得る訳だから、両者の対立を先鋭化さえないというアメリカの立場は変わらない。

 経済的な疲弊が進むほどに、若者だけでなく韓国を脱出しようとする人が多くなるだろう。裕福な人なら欧米に行くという選択肢もあろうが、そうでない人たちが行うのは最も近くて安全な国である日本への逃避である。少し前まで仇のように睨んでいた相手であっても、自分の生存に脅威が生じれば瞬く間に手のひらを反していく。北朝鮮と韓国が戦争するような状況なら難民として急激に出る存在だが、統一朝鮮が生まれることによりそれがゆっくりと、しかし継続的に生じるのではないかと私は懸念している。武装難民でもなければ、現在の日本で入国を容易に阻むことはできない。理由を付けて多くの韓国脱出者が日本に入り込むような状に、私達はどのように対処すべきかを考える時期に来ているのではないだろうか。