Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

勝手に瀬戸際化する中国

共産党機関紙は信じない…「日中開戦論」を煽る(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=1213&f=national_1213_015.shtml

 中国共産党機関紙・人民日報の国際版である環球時報はこのほど、日本が中国と開戦の準備を進めていると主張し、「日本の世論は具体的な開戦の時期まで示している」と報じた。

 サーチナの記事を基に書くのもどうかとは思うが、ソースに当たってないものの環球時報が日本が開戦の準備を進めているなどと書いているとすれば、事態は決して楽観的なものではない。要するに、軍部の暴走を共産党執行部がほとんど制御できていないことを表しているからである。
 もちろん、軍部も勇ましい言葉とは裏腹に実際には腐敗が蔓延しており、確かに人員と新しい装備を整えつつあるものの、その実効性については大いに疑問が残る。ただ、それでも日本やアメリカなどは戦争において数多くの制約を自らに課しているが、彼らにはそれがない。この時点で日本は中国と紛争するにしても大きなハンデを背負っている。

 もともと中国(あるいはその宣伝部隊)が発する声は、北朝鮮や韓国と同じように国内向けに最も重きを置いている。彼らが世界に向かって言っているように聞こえても、その大部分は国内の不満分子に向けて発せられていると考えるのが妥当である。むしろ、世界に向けてはメッセージよりも行動で示していると考えて方が良い。韓国の場合には首脳会談拒否と日本ディスカウント運動が実質的なメッセージであって、それを取り繕うような話が多少出るのみ。
 もちろん政治と経済が一体でないのは言うまでもなく、韓国経済界は現状の政権の動きを苦々しく思っているのであろうが、それを口にすれば自らが親日的であると地位を脅かされるためにできないでいる。そして、政権は過去において日本のみに効果のあった瀬戸際的な外交を強化することで難局を切り抜けようと必死である。日本国民の意識が既に変わったことを理解せずに、日本のリベラル系メディアと共に狂騒を演じている。

 中国の場合にも、実質的には似たような状況にあると言っても良い。もちろん、国家としての影響力は韓国とは比較にならない訳ではあるが、状況に多少の差異はあっても全体的な構図は何も違いがない。強いて言えば、軍部が政権の抑止力から離れつつあるのが韓国よりも北朝鮮に似ていると見ることが出来るであろう。

中国艦と衝突の危険=米巡洋艦が緊急回避−南シナ海http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013121400058

 上記の出来事は別に今回が最初ではないのだろうが、先日の防空識別圏の問題も含めて中国全体の統率状況が怪しくなりつつあることを顕著に示す。軍がけしかけ、それを習近平が認める。それにより軍への影響力を高めて地位を築き上げたいのであろうが、逆に言えばそれだけ国内向けの権力闘争の道具になっていると言うことでもある。
 日本への挑発的な態度も、繰り返しになるが国内に向けてのアピールでしかない。だから、日本側としてはそれらにいちいち敏感に反応する必要はないが、逆に言えば全く問題にしなくて良いものでもない。着々といざと言う時のために準備を進め続けることが重要となる。
 中国の権力体制に揺るぎが生じていることは、それだけくだらない理由での紛争の危険性が増すと言うことでもある。政権中枢を担うものは、様々な面に配慮しなければならないために基本的に紛争を嫌う。もちろん態度は毅然としなければならないが、だからと言って総合的に考えた時の紛争の愚かしさは誰よりも知っている。
 むしろ、政権の周辺にいるものの方が好戦的であり、自己顕示のためにそれを利用しようとする。戦前の日本の新聞社がそうであったように、本当に戦争を煽るものは、政権中枢ではなくその周囲にいるのである。そして、今中国を見る上では習近平そのものよりも、その周囲がどのように動いているかで判断すべきであろう。ひょっとすると、金正恩ほどではないかもしれないが中国でも傀儡化が進行すれば、国内向きの瀬戸際外交が今以上に増加することとなるだろう。