Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中期的に日本の負け、長期的に韓国の負け

 世界産業遺産の登録において、予想通り日本は韓国の奸計に落ち本来必要のない譲歩(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150705/k10010139851000.html)をしてしまった。モンドセレクション化し権威が低下しつつある世界遺産登録において、日本がそこまでの譲歩をするべきではなかったというのが私の意見である。
 形式上は「玉虫色」の解決(http://ameblo.jp/sincerelee/entry-12047174272.html)を図ろうとした訳ではあるが、少なくともこれにより韓国は外交宣伝上のお墨付きをまた一つ得てしまった。問題は世界遺産そのものにはなく、徴用工という新たな歴史カードを握ったということである。慰安婦問題が膠着を抜けられない中、別の方法で日本にダメージを与えて国際的地位を下げるという目論見(加えて韓国内での裁判を促進)は、全てとは言わないが半分程度は達せられたと考えて良い。

 日本側は「そういうことではない」と反論するであろうが、認めたという事実の前では詳細などは大した問題ではない。韓国側は、日本が認めていないことまですべて認めたと宣伝して回るであろう。彼らにとって大切なことは、細部ではなく小さなことではあっても日本が屈したという事実なのだから。
 もちろん、日本が譲歩を認めずに世界遺産登録ができなかったとしても、韓国はやましい点があるから認められなかったと喧伝するだろうが、決選投票で2/3の賛成を得て認められればそれすらもできなかった。

 では、日本側の一方的な負けかと言えばこれもまた違う。韓国は、現時点で本来日本を敵に回してはいけない状況にある。それは経済的にも軍事的にもである。一部の韓国人は理解しているだろうが、熱病に浮かれたマスコミと現在の政府はそれを無視している。
 逆に日本を貶めれば、その分日本が韓国の言うことを聞くという勘違いをしているようにも見える。それが大きな間違いであることは大部分の日本人は承知しているであろう。韓国が日本叩きをすればするほどに、日本は韓国から距離を置くようになるだけだ。今まで以上に韓国の苦境を生暖かい目で見るだけになるだろう。

 そして、徴用工の問題などを通じて日本から資金を得ようとしても、本来日韓基本条約で解決済みの内容なので日本がそれを受け付けることはない。海外で多少のイメージ損失を受けることもあろうが、それが根本的な後押しとなることはない。
 慰安婦の時と同じように、アメリカや欧州で宣伝戦を繰り広げたりもするだろうが、これも一部に賛同者を得たとしても広がりを持つようなものには至らない。一部の事例を除き労働の対価を支払っている事実があるため、慰安婦問題の場合のように「性奴隷」といったセンセーショナルな言葉を用いて感情に訴えかけることは難しいからである。
 とは言え、無用な卑日活動の材料を与えてしまったことは大いに反省してもらいたい。そもそもケチのついた世界遺産登録では観光立国に生かせるようなメリットは、デメリットとの差を考えた場合に大して見出せない。むしろ世界遺産に登録されなかったとしても、別の宣伝方法があっても良かっただろう。

 結局のところ、紆余曲折はあろうが韓国内での徴用工裁判が促進されるのが最終的な流れとなると考える。既に韓国内ではいくつかの裁判において条約を覆すような判決が出ているが、こうした流れが勢いを増すであろう。本来であれば、時効も成立しているものもあろうし場合によれば原告としての適格性を有していないものもあつだろう。だが、それは今の韓国においては何の意味も持たない。
 一方で、韓国がこれにより得られるものは韓国内にある日本企業の資産差し押さえのみ。それでも日本企業としては多少の痛みはあるだろうが、これは間違いなく日本企業の韓国離れを促進する。拠点を韓国から無くすようなことも長期的には考えられる。
 それによってダメージを受けるのがまた韓国なのだ。本当に馬鹿げた話だと思うが、長期的には今回の駄々で韓国が手に入れる実質的メリットは大きくない。反日というより侮日活動と言った方が良いと思うが、気分的にはスカッとるかもしれないが、じわじわとダメージを蓄え続けている状況である。まあ、こんなことを日本人からは言われたくないのかもしれないが。

 日本は公式には韓国の裏切りや邪魔について発信することはないと思うが、外交的やり取りの中では韓国の実態として今回のことを利用するだろう。もちろん日本外交の手際の悪さとセットではあるが、信用や約束というものを守れない国として、裏側で宣伝することは可能であり、既にその理解が多少なりとも広がっている状況では、上手く宣伝すれば効果は非常に大きい。
 結局のところ、中期的には韓国のうっとうしい難癖や宣伝戦に直面しなければならないという意味で日本は間違いを犯した。ただ、長期的には日本が受ける経済的ダメージはそれほど大きい訳ではなく、兎にも角にも煩わしいという状況が続くというのが実際だろう。
 日本の嫌韓支持者たちは、経済的デメリットではなく韓国がこれから為すであろう様々な嫌がらせを想定して、今回の登録にかかる流れを否定的に捉える。私も条件闘争を突っぱねるべきだったと思うが、ただ今後も韓国との間において国民感情の融和が容易には発生しないという状況は、トータルにおいて日本よりも韓国に対するダメージの方が間違いなく大きい。
 韓国経済が悲惨になった時に、日本人で「助けよう」と言い出すものはどれだけいるだろう?その原因を作っているのはまさに韓国自身なのだ。「虚を取り実を逃す」を見事に演じているそのスタンドプレーに、日本の失態も含めて温かい拍手を送っても良いのではないかと思う。