Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

夏冬オリンピック格差

 夏季オリンピックは組織のスリム化で懸命になっている反面、冬季オリンピックは競技種目の少なさが取りざたされている。現状においても肥大化する夏季に対して冬季はむしろ競技の水増しがささやかれているのが現状だ。現在では競技数として、夏季オリンピックには26競技36種別、冬季オリンピックには7競技15種別となっている(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E7%AB%B6%E6%8A%80)。話題となっているレスリング除外問題なども、夏季26競技のうちの25競技を中核競技としてIOCが位置づけ、レスリングがそこから外れたという状況である。

 IOCの理事会の不透明さは今さら指摘するのも馬鹿馬鹿しいほどのものでもあるが、オリンピックの隆盛を図りたいのであれば夏季・冬季のアンバランスをどのように解消するのかも大きな議題である。こうしたこともあって、一部には夏季オリンピックの室内競技を冬季に移せばいいとの意見も出ているようだが、現状ではIOCで議論はあるものの積極的な動きにまではまだなっていない(http://www.tokyo-sports.co.jp/blogwriter-watanabe/4885/)。

 競技のバランスを図るだけであれば、室内競技の一部を冬季に移すという選択は決して悪いアイデアではない。夏冬のオリンピック格差をなくすという意味でも効果的だと思う。ただ、ではどの競技を冬に移すのかという問題を考え始めると、おそらく議論がまとまらないのではないかと想像する。
 現状、夏と冬のオリンピックには明らかな格差が存在する。おそらく視聴率は夏季の方が高いであろうし、冬季の振興を図るために夏季冬季の同一年実施を2年ごとにしたのはよく知られていることである。そして、この差はスポンサー収入の格差としても現れてくる。商業オリンピックが前面に押し出されている現在、スポンサーはオリンピックにおいて脇役どころか腫物のような存在となっている。

 結果的にはIOCとして夏季と冬季が同じ程度に盛り上がるというのが最も望ましい結果であり、だとすると仮に夏季の競技を一部冬季に移動するとしてもそれはある程度の人気を見込める競技であることが必要となる。さて、レスリングはこうした要望に応えられるのかと言えば若干疑問が残らないわけではない。
 もちろん、商業オリンピック万歳と称賛したいわけではなく、私はオリンピックのバランスを考えれば夏季と冬季の競技移動を含めて、全体的な見直しをすればいいのではないかと思う。レスリングという第1回から続く伝統ある競技を除外しようという流れは決して望ましいとは思わないし、あるいは視聴率を稼ぐためにオリンピック特別ルールをどんどんと導入する姿勢にも疑問を感じずにはいられない。
 スポーツはオリンピックのために今の形が生まれたわけではなく、それぞれの独自進化の結果を披露する場所の一つとしてオリンピックという舞台が与えられているのだから。

 レスリングの冬季移動という小さな問題ではなく、全体的な夏季・冬季オリンピックの構成見直しという大事業を成し遂げることで、巨大になりすぎた夏季オリンピックの抑制と全体的なスポーツ振興という二つの目標を調和させてほしいものである。