Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

賞味期限劣化

FRBはQE3の実施に踏み出した。むしろ以前からいつそこに踏み込むかが囁かれていたものでもあり、一向に失業率の回復しない状況にもう一歩踏み出すことを決断したとも言える。ただし、共和党の大統領候補であるロムニーはこうした金融政策を批判しており、バーナンキの再任は認めない方針を示していた。ただ、私が思うにその批判は正しくない。必要なのは雇用の確保であるが、財政の縛りを受ける政府が身動き取れないのを少しでも緩和しようとしてるのがFRBの動きである。そもそもFRB中央銀行であって主体は金融政策であって、それのみでは失業率の回復までの責任は負いきれないのが実態だ。それでもできる範囲において断固たる手段を執っているのはさすがだと思う。ヘリコプターベンの異名はQE1のころに揶揄するように用いられたが、今ではその名前を聞くことすらなくなりつつある。そして、世界経済はBRICsからアメリカへの依存へと移行しつつもある。
少なくとも株価については現状をアメリカが主導している。もはや株価は実体経済の指標として意味をなさなくなりつつあるものの、それでも社会への影響が無くなったわけでもない。

金融政策のみでは広く国民の所得を向上させることも、雇用を確保することも直接的にできるものではない。間接的ではあるが企業業績や利潤を多少なりとも向上させることで、結果的に雇用確保などに追い風を与える程度である。
結局のところ今回のQE3で最も大きな言及は、金融緩和を今後も継続し続けるということではないかと思う。少なくともあと2年間ほどはMBS(住宅担保債券)を購入し続けるとしており、その分役に立たなくなった債券がドル紙幣に置き換わる。その資金は債券を保有している金融機関に流れ、再び別の投資に向けられる。だからこそ、株も上がるが原油も金も上がっている。
市中にはお金が増えるが、それは国民に流れるのではなく金融村の中で循環していると言える。ただ、それでも効果は確かにある。まずアメリカの住宅バブル崩壊が金融問題の発端であり、それにより金融機関の経営に疑念が持たれて危機が深まった。まずは金融機関に資金をばらまき不安を解消し、次に不動産関係への資金支援を行うことでバブル崩壊の影響を弱める。
実際、不動産崩壊が止まらない欧州とは異なりアメリカのそれはかなり和らいでいる。もちろん、無理矢理の資金投入による不動産価格崩壊阻止であるが、民間需要が回復さえすれば自律的に回復するのだ。問題は国民が恩恵に与れなければ金融緩和が弱まれば再び崩落することである。有り体に言えばドーピングと言っても良い。

本来は、ドーピングで維持している間に財政政策により自力としての経済耐力を付けていかなければならないが、それが不十分なためドーピング依存が高まりつつある。現状では財政均衡主義者のポールライアン(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3)を副大統領候補にしているようにロムニーhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%BC)陣営はこのドーピングを必要悪として認めない方針なので、仮に大統領選挙でオバマが負けるようなことがあればアメリカの経済は再び坂道を転げ落ちるのではないかと思う。企業再建のように無駄の切り捨てにより開花期を上げたいところであろうが、国家の再建は同じではないと思うのだ。
さて兎にも角にもQE3の発動が決まったが、オバマ大統領も金融政策以外の有効な政策を打ち出せないままでいれば、結果的に金融政策への依存度は高まりそれがQE3の賞味期限を短くしてしまう。それが泥沼へと広がらないうちに何らかの対策が打てるのかどうか。日本のように不当に低い目標を置いていれば誤魔化せるかも知れないが、アメリカはそう言うわけに行かないだけに難しい。