Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国のせいで困った中国

お盆の竹島騒動に続いて、中国が尖閣諸島周辺に漁業監視船という名目の軍事攻略船を派遣し始めた。もちろん理由は尖閣諸島の国有化に反対してと言っているが、考えてみれば中国側として他に打つ手が無くなりつつあるのではないだろうか。そして、それは引くに引けない抗争への序章ともなり得る。
現状では、スポークスマンを通じて経済制裁にも言及しているとあるようだが(http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/09/14/2012091400516.html)、そもそも以前の海上保安庁巡視船体当たりの時には有無を言わせず日本人を拘束してレアアースの輸出制限をかけたではないか。わざわざ、北朝鮮の得意技である無慈悲な攻撃のような「やるやる詐欺」を使うという点で中国の混乱を感じずにはいられない。
それ故、現時点では民間感情を前面に押し出した嫌がらせ(日本人の暴行を働いても愛国無罪)を押し出しているのである。一部のテレビ局が日本企業のコマーシャル停止にも動くそうではある(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0915&f=national_0915_005.shtml)が、これらも有効な対抗策とは言えないし、むしろあまり高くない中国の国際的な評判をさらに落とす行為になると思う。加えて、中南海の混乱も囁かれる現在中国国内のデモなどを大きく許容する行為は共産党政権への批判を生み出す事への転化が懸念される危険な行為ともなりかねない。要するに、現状は効果的な方策がないが故の焦りのように見えるのだ。
そもそも反日デモ自体が公安当局の誘導によるものであって、多くの中国人民にとってはどうでも良いことであるという意見も根強い。中国マスコミは韓国と同様に煽り立てているので、それに触発される人が出るのは日本でも同様であろうが、反日により反政府デモを抑えようと転嫁しようとしているのは中国国内でも公然と語られ始めている。
もちろん、だからと言って日本が安心できるわけでは全くない。中国政府が統一した戦略を行えなくなっているとすれば、一部の軍部や不満分子が暴発する可能性もそれだけ高まることになり、仮に偶発的なものだとしても一旦事を構えてしまえば事態は大きく悪化しかねない。

状況がこのように中国政府の手を離れて推移し始めたのは中国国内の権力闘争も一因としてあるだろうが、同時に少し前の韓国の行為が日本を大きく刺激したというのもあると思う。竹島問題に加えて李明博大統領の天皇陛下侮辱行為によって日本人の意識は大きく変わった。
尖閣購入自体は、東京都が買うよりは政府が買った方が中国政府としては与しやすかったのだから、何の整備もしないと言及している現状では一応中国政府の思い通りでもあったはずだ。その上で、日本のマスコミなどを利用して事態を沈静化させれば良かったわけではあるが、韓国の暴挙によって日本のメディアも容易に利用することができなくなってしまった。日本政府も国内世論の高まりにより尖閣衝突事件の時と同じ様な態度は取りにくくなったのもあろう。
本来、上手くやればあまり抵抗しないはずであった日本が、予想以上に抵抗する現状が出来上がってしまったのだ。加えて、圧力ツールとして利用してきた国内反日デモ等が手に余る状況に至り始めたのではないかと思う。もちろん前から予想されていたことではあるが、ただ韓国のせいで急にそれが進展してしまったのは中国政府当局者としても頭が痛いところではないか。

暴発は、官製デモ関係者のみならず一部の人民解放軍重鎮をも巻き込んでいる。日本と事を構えることを堂々と発言する軍高官は前からいたが、それがガス抜きでは終われない現状があるとすれば、中国政府が人民解放軍のコントロールを失いつつある事にも繋がる。
本来であれば人民解放軍上海閥との繋がりが深く、習近平が次期主席に就こうとする現状で事を荒立てるのは得策ではないはずだ。むしろ人民解放軍のコントロールを十分できていないとすれば、そのことが習近平の資質に疑問を抱かせることにもなろう。
ここ数日、習近平が各国首脳との会談をキャンセルしまくっているのだが(http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1503I_V10C12A9NNE000/)、その理由が本当に健康不安説だけとは思えない。胡錦濤派の巻き返しとも言われているが、単純に北京閥上海閥という二大対立のみでは語れない権力闘争があるので事態は難しい。

日本とすれば、中国の混乱はある意味中国の弱体化に繋がるという意味でメリットはあるが、同時に制御されない暴発に対処しなければならないという点では難しい対応に直面する。中国政府の腰が据わらない尖閣周辺へのちょっかいは恐れるものでは無いが、だからと言って暴発を考えれば十分な戦略がより必要になったと考えるべきであろう。