Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

新興国危機はこれから

 BRICSの不調がメディアを賑わせたのは少し前であるが、今でもこの状況に大きな変化はない。アメリカなどからのキャピタルフライトは多少の逆流はあるとしても傾向としては今でも続いており、中国はまだ表向き目立っていないがインドやブラジルは青息吐息が続いている。インドのルピーは少し前には一時最安値を更新(http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324361104579039371943900850.html)しているし、ブラジルではリオデジャネイロのオリンピック開催危機(http://japanese.ruvr.ru/2013_09_01/rio-orinpikku/)も囁かれている。

 それでもFOMC(連邦公開市場委員会http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E9%82%A6%E5%85%AC%E9%96%8B%E5%B8%82%E5%A0%B4%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A)の緩和継続により世界の株価は一時期持ち直してはいるが、これが世界経済の長期的安定を保証することなどありえない。いつかは終えなければならないドーピングを、まだ続けると宣言したに過ぎないのである。もっとも、ドーピングにしても上手く使えば薬になることもある。あるいは一時の低迷期のみを凌げば景気が回復する目途が立つならば、これも使いようであると言える。
 しかし、現状のアメリカが金融緩和の縮小(引き締めではない)を示唆するだけで世界が慌てふためかないとならないのはどう考えても不健全である。ドーピング中毒が世界に広がっていると言い換えても良い。もちろん日本もその渦中にあるし日銀は当事者の一人でもあるが、奇妙なことに欧米とは少し立場が異なっている。
 日本は欧米よりも前に手ひどいバブル崩壊を受け、それを大筋で誤魔化さず耐えて償還してきた。この点で、基軸通貨のメリットを最大限に生かしてバブルをバブルで制し続けているアメリカとも、制度をコントロールすることで危機に対して万全の先送り策により引き延ばしを図っている欧州とも違う位置にいる。もちろんだからと言って世界経済が混乱すれば大きな被害を受けることに違いはないが、日本発の金融危機は一部のネガティブな人たちが訴えかけるほど現実的ではない。

 そして、世界の混乱が始まるとすれば日本でも、おそらくアメリカでも欧州でもなく新興国から広がっていくことになるだろう。韓国や中国が必死なのも、今はまだ目には見えていないがこうした危機が近づいていることを感じている面があるのではないか。
 どちらにしても、危機を完全に回避する事はおそらく叶わない。アメリカが内向きに政策を変更したならば、外部資金によって持ち上げている経済は鍍金が剥げる。着実に自らの資本を持っている国(アメリカやドイツ、日本を始め欧州の一部の国など)の場合には、いざとなれば儲けのためにばらまいている世界中にある資金を引き揚げることで急場を凌ぐことも不可能ではない。もちろんだからと言って完璧ではないが、国家の緊急時に使えるカードが残っていると言えなくはない。
 ところが新興国の場合には、危機が生じた時に資金を引き留める術がない。何かあれば国家の屋台骨を揺るがす事も十分に考えられる。だからこそ、そのためのセーフティーネット作りは何よりも重要であり、ある程度の利害を超えても協力し合う仕組みが求められる。

 バブルはいつかは萎む。実力をバブルに近づけさせることは非常に重要なことではあるが、それを為すには時間と忍耐が必要だ。そのことは皆知っているはずではあるが、それでもバブルを続けることでその苦しみを感じないようにしようとしてしまう。これは、人間が逃れ得ぬ宿業なのかもしれない。
 新興国危機は必ず発生する。もちろんいつ始まるのかを正確に言い当てることはできないし、あるいは既に始まっているが私達がそれを明確に認識できていないだけなのかも知れない。ただ、あだ花をあだ花だと感じられなくなった時がもっとも怖い。
 一時期、中国や韓国の経済が危険だとネットやマスコミが書き立てた。私もそれに類することを何度か書いてきた。ただ、その兆しの段階では容易に顕在化しない。それは、状態の悪化を塗り固める動きは何に対しても優先的に行われるし、懸命に先延ばしされる。特に現在のように経済がグローバル化されている時代には、明らかになるまでのずれが発生する。
 そして、現実には(在る所には)お金が溢れかえっている現代社会ではお金が傷口を隠してしまう。それが存在する限りにおいてパッチワークは続けられるが、ただお金はトラブルと混乱を忌み嫌う。状況が目に見えるようになるのは暴動や内戦のようなわかりやすすぎるほどにはっきりした形かも知れないと私は思う。
 だとすれば、アラブの春はその兆しとして後世の歴史に記録されるのかも知れない。