Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

株価の乱高下

 日本の株価が乱高下している。その事実を持って一部のメディアや識者は、アベノミクス失敗と主張しているようではあるが、私はその指摘は当たらないと思う。確かに株価が不安定なのは事実である。日本の株式市場の取引額ベースで6割以上が外国資本なので、株価の上昇も下落も彼らの取引次第だと言うことである。
 アベノミクスの期待で買って、現実で売るというのは良くある話である。そもそも期待段階での株価上昇のペースが速すぎたため、その反動が出ていると考えるのが相当であろう。別に何かが終わった訳でも、日本経済が悪化した訳でもない。

 私自身は当初より、現政権が株価へのコミットが多すぎることには懸念を抱いていた。株価は結果であり目的ではない。一喜一憂しないという態度を最初から貫くべきであった。株価の上昇時にそのことを持ち出してしまえば、当然下落時にも言及せざるを得なくなる。
 期待による株価上昇が予想以上だっただけに思わず触れてしまったのだろうが、稚拙だったと言えるであろう。

 売買動向では、むしろ日本の生保や年金などは今回の株価上昇で保有株式を売っているようなので、そちらの方が冷静に対処していると考えて良い。乱高下により痛みを受けているのは、一部の個人はいるだろうが売買を繰り返している外国資本であると言う構図だ。そのことを無視して、株価の乱高下が日本経済の動向を決めるような報道をしても何も意味はないだろう。

 では今後の日本経済が安心できるのかと言えばこれはまた違う。内的要因としては、アベノミクスの成長戦略が不十分だと言われているが、そもそも成長戦略として決定的なものなどあり得ない。そんなものがあるのであれば当然もっと前に行っている。無いからこそ試行錯誤を繰り返して成長に役立つものを探そうというのが戦略であろう。だとすれば一筋縄ではいくまい。
 また、アベノミクスは期待に頼った政策であるというのも事実だと思う。そのことを持ってバブルだという識者もいるようだが、これは変な主張である。期待がかさみすぎればバブルであるが、適度な期待は経済を推進させる基となる。それすら否定するのは、ちょっと何が言いたいのかわからない。すなわち、日本経済は衰退するしかないとでも言いたいのだろうか。

 それよりも注意しなければならないのは、欧州の経済動向であろう。アメリカにも問題があるが、それでも足下の状況は欧州の方が圧倒的に悪い。欧州の経済クラッシュや不安の拡大があれば、中国などの新興国を巻き添えにしながら世界的な景気悪化が進んでもおかしくない。懸念すべきはこれが最も大きいと思う。
 今は、そん問題を無理矢理封印している状況にある。皆問題を知っているのに見ていない。いや、見ないフリをしている。日本独自の問題よりもおそらくその方がずっと大きな問題ではないかと私は思う。

 日本が悪いとか日本が原因であるとか言う人は少なくないが、株価の乱高下はあるものの日本は前向きに動こうとしている。一足飛びに回復できるほど、これまで押し溜めた停滞の残滓は容易に振り切れるものでは無い。しかし、それでも前に動き出そうとはしている。
 大切なことは、これまでの状況に留まるのではなく前に踏み出すと言うことだと私は思う。その点において今の日本は間違った方向には進んでいない(細部でいれば問題だと思う点はいくらでもあるが)。

 とりあえず、財政再建は景気回復の後に行うべき課題である。それなしの財政再建論議は、これまで繰り返してきたように景気の腰折れを引き起こしてしまう。NHKやメディアなどはそれなしには中途半端だと喧伝しているがそれはおかしい。大切なのは、日本経済が再び成長していくことである。
 とりあえず、繰り返していきたいのは株価の上下動には一喜一憂しない。それが日本経済の状況を示す一番の指標ではないのだから。