Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中国が戦争に踏み出す可能性

 まず、基本的には今の時代戦争により利益を得ることは難しい。アメリカでさえ、戦争による経済負担が財政赤字に大きくのしかかりトータルではマイナスで、戦争によるベネフィットを得るには至っていない。むろん、現在では武力による打倒や併合は前近代的な行為であって、それよりもルールを利用した経済的な支配を目指す構図が一般的だと言える。
 グローバリズムとは、単に世界的な交流を広げるということではなく、世界の市場を一つのルールで支配しようという動きでもある。それは効率的なシステムかもしれないが、支配的でもある。一部の大資本が世界から搾取する仕掛けと言えなくはない。

 では、中国は帝国主義的なふるまいを今後も続けることができるかと言えば、これにも若干の疑問がある。現状において中国が国際的なプレゼンスを高めているのは事実であるが、だからと言って中国が他国を本格的に侵略できるような状況にあるかと言えばそうでもない。
 正直言えば、弱い国には多少強めに、日本に対しては言葉や態度だけは強めにという嫌がらせのレベルを大きくは逸脱できてはない。もちろん、国際世論が有利に働いたり日本などの態度が弱まれば、それを利用して領土奪取を図る気はあるだろうし、そのためのメディアや知識人を通じた工作も様々為されているだろう。ただ、それでもじゃれ合う程度の小さな紛争ならいざ知れず、本格的な戦闘を行う気概や勇気は現在の中国にはないと思う。

 強気に言うのは面子の問題、特に国内向けの面子の問題が全てである。彼らはそれを失うと国内的な地位を失いかねないのである。日本の尖閣諸島にしかけるのは勝算があっての動きではない。だから、ここ数年の動きにもかかわらず嫌がらせ以上の行為には踏み出せていない。それでも、日本としては迷惑千万だが中国が本当に日本と事を構えるつもりは今のところないだろう。最低でも、日米の中を割くことができなければそれはかなうまい。
 日米離間については、民主党政権時代には日本のボーンヘッドもあって多少の混乱をきたしたものの、その状況は長続きしなかった。別に、アメリカが常に信用できると言っているわけではない。ただ、中国のこれ以上の台頭を抑えるためには日米の協力は必須であろう。

 現状、中国は大国としての国内的なプライドの成長に比べて、現実の世界的なプレゼンスがついていっていないと認識していると思う。まあ、戦略的で適切な行動をとっているとも思えないのだから仕方がないと思うが、その葛藤が威勢の良い交戦論を引き出していると見る。ただ、あくまで自意識と現実の齟齬を調整するための場当たり的な行動であって、そこに展望としての願望はあっても手順を追った戦略性はあまり見られないか、あっても上手く機能していない。
 だからと言って絶対戦争に踏み出さないとは言い切れないが、彼らが戦争で得るものはそれほど多くない。むしろ、中国の指導層は戦争するよりもグローバリズム勢力とうまく結びついて、甘い汁を吸い続ける体制を作り上げたいと考えているとすら思う。中国の大量にある外貨を利用した投資などは、まさにそのために活用されている。

 問題はアメリカ(あるいは多国籍資本)などがそのたくらみに乗るかどうかだが、一時的には近づいても中国を本当に信じるかどうかは疑問だと思う。比較的中国に親近感を抱くアメリカ人は少なくないが、これも見出している魅力は市場としての巨大な人民であって、現在の中国共産党の体制ではないのである。
 共産党幹部を利用して国家としてアメリカが儲けられるのなら近づくだろうが、それよりも有利な状況が発生するならいつでも掌を返すのではないかと思うのだ。今アメリカにとって必要なことは巨大な中国人民がよりよい生活を求めようとすることである。それこそが、アメリカに富をもたらす源泉となる。
 それを育てる間は、許せないことは別としても最大限中国に便宜を図るであろう。

 では、その先はどうなるのか。本当に勝手な想像にすぎないが、日中間で戦争が始まるとすれば、それにはおそらくアメリカが噛むことになるだろう。中国の体制が瓦解した後に得られる育った市場をいかに多く手に入れるか。もちろん、日本などには必要がない限り与えない。イラクの石油権利と同じ話である。中国側から仕掛けるように工作されると思うが、彼らのナショナリズムを最大限利用して同時に日本の自衛隊も利用することになる。
 そして最後においしいところをさらっていけば、アメリカは日本の助っ人となるし、そして圧政に苦しんできた中国人民の解放者ともなるという甘いストーリーである。個人的にはそんなにうまくはいかないと思うが、米中間の戦争を起こすような動きにはしたくないだろうと思う。それは第三次世界大戦を誘発させかねないし、より大きな疲弊は国力を削ぐことにもつながりかねない。

 だから、アメリカからすれば日中がいがみ合っている状況は望ましいし、韓国はおまけでどうでもよいが中国に近づきつつある現状では、日韓もそれほど友好的である必要はない。それ故に、日本側が主張する中国や韓国からの様々ないいがかりを抑えるようなこともしない。それで日本を抑えることができればこれも望ましい。日本も韓国も、友好的に接することができればもっとも良いのだが、これも思惑としてアメリカからは望まれていないのであろう。
 だから、日中戦争が仮に発生しても日本には様々な縛りを持ったまま戦い苦戦してもらい、アメリカの応援なしでは立ちいかないことが望まれている。こうしたことは、あくまで思考レベルではあるが比較的容易に予想できるので、日本としてもその中でどのように立ち回るのかを考えておく必要があるだろう。

 なお、中国経済の崩壊により中国が打って出るという可能性も全くないわけではない。ただ、その時には人民解放軍がきちんと機能するかどうかも正直言って疑わしい。利権の巣窟として、金儲け(あるいは利益配分)が第一になっている軍の状況では、経済混乱時に組織的な動きができるとは思えないのだ。だとすれば先手を打って経済崩壊前にとなるのだろうが、これも既に中国包囲網がある程度出来上がりつつあるので容易ではないと思う。下手すれば先に内戦に突入してしまうかもしれないと危惧している。
 もっとも、共産党体制下では経済の強引な運営も可能であって、日本のように大きなバブル崩壊が一気に押し寄せることはないかもしれず少々読みにくい。それをアメリカにとってわかりやすくするのが日中開戦だと思ったりしている。まあ、アメリカの意識自体が一つではないので、これはあくまで予想の一つにすぎないのだが。