Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

立体映像

 とりあえずは動画を見ていただきたい。これ自体はyoutubeに投稿されたものなので、決して解像度が高いわけではない。また、8Kテレビは今話題の4Kテレビ(3840×2160)よりも高解像度(7680×4320)を映し出すものであるが、このレベルになるとわざわざ立体を謳わなくともその立体感が見て取れる。十分3Dと言ってよいのではないかと思える。

8Kテレビ(スーパーハイビジョン)映像 (http://www.youtube.com/watch?v=xAmABcMxgZk&feature=youtu.be

 しかし、考えてみればyoutubeで見た低解像度の動画であってもその感覚が伝わってくる(もちろん、臨場感にはおそらくほど遠いほどの差があるのだろうが)のだから、低解像度でも立体感は作り出せるケースがあるということだ。あるいは、特定の手法を利用することで立体感をこれまで以上に表現できるということでもある。立体感側が感じられやすい動画もあれば、そうではない動画もあるのかもしれない。
 その差がどこにあるのかは私はわからないのだが、感覚的にはコントラストの使い方によるような感じがしなくはない。上記の動画はねぶた祭りの映像であったが、夜にライトアップされた飾り物という非常にコントラストの高い映像であったからこそ立体感が際立たされたのではないかというものである。

 仮に低解像度の画面であっても一定以上の立体感を表現できるのであるとすれば、3Dを巡る狂想曲は一体何を言わんとしているのであろうか。3D酔い(http://ja.wikipedia.org/wiki/3D%E9%85%94%E3%81%84)という現象があり、私たちは過度に動き回る立体映像に認識がついていけない。これは別に立体映像に限らないようではあるが、立体映像の方が発生する可能性は高いのだろうと思う。
 生じる理由にはいくつかがありそうだが、私が思うのは普段目で見る現実と立体映像のスピードの差や強調されたコントラストなどの差がそれを引き起こすのではないかと感じている。画像のモデリングが歪んでいる場合にも生じるようなので、私たちが有している常識的な認識と見ているもののずれがこれを引き起こすのではないか。

 例えば車を知らなかった大人が初めて車に乗ったとすれば、そのスピードに最初のうちはついては行けなかったりもするだろう。私たちが許容できる視覚認識能力を超えた情報が入力されると混乱を生じるのではないかと思う。
 ただし、これらは学習や慣れにより解消可能でもある。ディープなゲーマーは、普通の人では視覚的に追い切れない動きにもやすやすと追従できる。人間の環境対応能力には優れたものがあり、3D酔いについてもそれが仕事として必要であれば人はおそらくなれることができる。アイススケートの選手がスピンで目を回さないとの基本的には同じであろう。

 ところが、3D酔いを慣れる必然性は一般消費者にはない。一時的とはいえ苦行のような障壁を乗り越えなければ楽しめないとすれば、娯楽としてのそれにチャレンジする人は決して増えはしない。ゲームなどの競争的要素があれば飛び込む人も増えるだろうが、それでもやはり門前で帰ってしまう人は多いと思う。
 技術的には三次元を作ることは容易になったにもかかわらず、未だに二次元画像が主流であるのはこうした人間の能力に根差した障壁があるからではないだろうか。もちろん、SFのように人間と機械の融合などにより感覚能力を加速度的に高めることのできる時代が来るかもしれないが、現状においては3Dが普遍化しない理由の大きな一つとして、感覚と作られた画像のギャップが立ちはだかっているのではないかと感じてしまう。