Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

駄目なフリ

たわいもない話ではあるが、日本は他国との摩擦を恐れ自らの地位や能力を低く見せる努力をしているが、他国は背伸びをしてでも自分たちの地位や能力をかさ上げしてみせるのに必死である。それは、日本がすでに国際的地位を有していると言うことの証拠でもあるし、同時に国際社会の中で目立つことが決して自国には有利にならないと言うことを認識しているからでもあろう。
このような自らの存在を隠そうとする最も大きな理由は、自国の軍隊を有さないという不戦の誓いが最大のものであるが、それを押しつけた当のアメリカは今になってその約束を変えさせようと表に裏に圧力をかけているが、日本人のメンタリティに刻み込まれたものは容易に変えられないし、加えて実のところ平和な時代という限定ではあるが経済的には自国の軍を有さない方がメリットが高かった。それ故に、日本は日米安保というカードに大きく寄りかかり、それが日常となっているのが現在ではないだろうか。

ただ、日本以外の国が自国のプレゼンスを高めようと涙ぐましい努力をしていることを考えれば、その経済的地位を自力で勝ち取ったとは言えど、置かれた立場はおそらく他国の羨望でもある。これまでは欧米諸国からクレームを付けられるのに対して必死に自国の存在を隠し、駄目なフリを決め込んできた。それは、出る杭は打たれるとばかりに国際政治の場面のみではなく経済評価についても低い評価を受け入れてきた。
例えば、近代国家におけるバブル崩壊後の処理として世界でも初めてのチャレンジを、局部的には至らない場面もあったであろうがそれなりにそつなくこなした日本の経済政策は、今でも一部の知識人と呼ばれる人は叩いているようではあるが、私はその全てが悪かったとは思っていない。むしろかなり上手く対応したとすら感じている。現に一時期は日本の轍は踏まないと宣言していたアメリカも、日本のバブル処理を見直す発言が多くの学者から発せられるようになっているし、欧州においても「日本の轍」発言は現在の惨状を見れば出るはずもない。
ところが、幸いにも日本国内のメディアなどは財務省の見解をそのまま垂れ流し、日本の状況が如何に悪いかを宣伝して回っている。他にも数多くの日本衰退を示すような報道が日々紙面や画面を賑わせており、それを聞く日本国民は知らず知らずのうちに日本は駄目なんだと刷り込まれていく。

では日本はそんなに駄目なのかと聞かれれば、それでも将来的な不安は抱えながらも今の日本は卑下するものでは無いと思っている人も多いのではないかと思う。駄目なフリをできるというのは今が本当に駄目な訳ではないからではないか。子供が背伸びをするのは、子供という絶対的条件はどんな風に大人の真似をしても超えられないからこそ必死さが現れる。
今の日本は、駄目だ駄目だとその状態を一種楽しんでいるようにすら感じられる。その言葉が発せられるのはまだ本気にならなくても惰性で過ごせると考えている状況に似ていると思うのだ。ただ、本当にそれをいつまで続けられるかはまた別の話である。

近年の、韓国や中国の台頭と挑発に対して日本は欧米にしたのと同じ様な出る杭とならないような対応をしようとした。それが背伸びに必死な彼らからすれば、弱った存在として格好の標的になっているのが現状であろう。欧米の日本を見る視線とアジアが日本を見る視線は異なるのである。
駄目なフリが通用しないとわかったからこそ、竹島問題や尖閣問題に本気で取り組まなければならなくなったというのが現状であり、それを打開できる最も大切なことは日本が駄目になった訳ではないと明らかに見せつけることである。
それは、再び欧米からのバッシングを受けるであろう道でもあるが、どちらの障害の方が本当に日本にマイナスになるかは明かであろう。