Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国ブランド戦略の限界

K-POPや映画その他のエンタメ産業は、家電製品や自動車に続く重要な産業と韓国では位置づけられており、その発信は国家的なバックアップにより行われているのは多くの人が知っている。もっとも、韓国が本当に成し遂げたいことは日本が既に世界的に得ているポジションを取って代わりたいのだと思う。だから、日本の方法を勉強してほぼ同じようなジャンルで日本のシェアを削るスタイルが中心となる。
地理的に近く同じように資源が少ない両国の発信できるものが似てくるのはある意味当然なのかも知れないが、それにしても欧米などから見ればほとんど違いがないものと思えるのではないだろうか。既に様々な分野で世界的な認知を受けている日本文化に取って代わることは、仮に韓国文化が優れているとしても後発故に容易ではないことをどう考えているのであろうか。確かに既に家電などは日本を圧倒しているし、自動車でも為替等の要因はあるにしても日本ブランドを脅かすレベルにまで到達している。それでもブランド力という面で言えばどうだろう。それを日本にいる私が正確に評価することは難しいのだが、日本の手法を真似ての成長であるからこそブランドとしての認知を覆すのは容易ではないように思うのだ。
そもそもブランドとは信頼性や独自性の裏返しでもある。日本を超える信頼性や独自性を得ることが自国ブランドを世界に広げる上での王道であろう。

だから時間をかけれて結果を出していけばブランドの逆転は可能だろうし、また日本が現状の地位を守れず衰退するようなことがあればこの場合にも取って代わることができる。例えば、かつてアメリカが工業大国であり日本はそれを「猿まね」する立場であった。日本が独自のブランド力を得ることができるようになったのは、アメリカの工業の衰退(むしろ撤退と言った方が良いかも知れない)と日本製品が品質の向上でオリジナルとしての認知を得るようなったことがある。それは国家が支援する少数の企業が得たものではなく、あくまで市場原理に基づく選考として民間の努力により勝ち得たものである。
ところが、日本と韓国が現状のようにライバルとして争い続けるとすれば、既にある程度固まっている日本の持つブランドの地位を韓国が奪い取ることはそう簡単ではない。確かに、現状で日本の電機業界などは大きく韓国に後れを取ったのは事実である。それでも日本企業が撤退を試みるとは思えないし、おそらく今後も反撃の機会を窺うであろう。そもそも韓国(特にサムスン)のマーケティングスタイルが自主開発より日本や欧米の企業の成功しそうな技術のみに集中投資をするスタイルを取る以上、先行者がいない場合のオリジナル開発などがどうなるかは予想が付かない。
韓国としては電機関係の日本企業を全て淘汰してようやく独自性を得ることができるが、そのためには現状の開発を他企業に任せるスタイルではおぼつかない。あるいはアップルのような確固たるオリジナリティを打ち立てることがあるが、これについても今のところ明確にわかる結果は生まれていない。実を言えば、工業製品のブランドだけではなく文化の面においても状況はさほど変わらない。先行者の後追いを価格と数で席巻するだけでは、人々の意識に既に刷り込まれた情報は容易には覆らないのである。

ブランド価値における立場を本当に逆転したければ、日本企業を大きく上回る技術的進歩を見せるか、あるいは韓国オリジナルの文化的要素を築くことが重要となる。日本が世界に文化を発信できて相応の地位を得ることができたのは、欧米とは明らかに異なる文化を発信したことも大きい。欧米の猿まねのままであれば、製品が市場を席巻したとしてもブランド価値を獲得するには至らなかったはずだ。
こう考えると、現状の韓国のブランドに対するアプローチはブランド価値の向上と言うよりは未だ韓国という存在を認知して貰うというレベルに留まっている。特に先行者たる日本の亜流により市場開拓に努めているに過ぎない。短期的にはそれでも結果が出るだろうが、長期的展望に欠けるのではないかと感じている。実際には、次の段階へのチャレンジを模索しているとは思うし、デザイン面での努力があるのもわからなくはないが、市場を驚かせるほどのブレイクスルーは今のところ見えない。
もちろん、そっれでも製品が市場を席巻すれば時間をかけてブランド価値を高めていくことは可能なことは先にも触れた。慣れにより一定の認知を得ることはできる。ただ、今のままのスタイルで日本ブランドに取って代わることは難しいのではないかと思う。少なくとも彼らが望んでいる結果には届かないだろう。その結果に苛立ち様々な議論を世界に向けてふっかけることになるかもしれないが、仮にそうなるとしても結果が悪いのではなく戦略が悪いのである。世界を騒がす「日本海呼称問題」も似たようなもので、日本に対する妬みや恨みも根底にあるだろうが、それ以上により高い地位や評価を少しでも早く受けたいという焦りが現れていると感じられる。

もっとも、ブランド価値も地位や評価も即席に得られないことなど誰にでもわかりそうな事実だと思うのだが、焦りは眼鏡を容易に曇らせるようである。

「オリジナリティを生み出すには時間がかかるし、その分野に対する内在的な情熱が必要だ。結果のみを目的に選ぶ限りオリジナリティに到達するのは幾人かの天才の出現に期待しなければならないだろう。」