Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中韓接近は当然

 日本でもそうだが、社会を大きく動かす要素として「雰囲気」がある。古くは社会党のマドンナ旋風もそうだし、小泉郵政選挙もかつての民主党政権交代も全てはこの「雰囲気」により導かれた結果である。マスコミはその効果を熟知しているため、「雰囲気」を創り出そうとありとあらゆることをしてきたし、企業の販売戦略も同じレールの上を走っている。
 この雰囲気は、韓国が中国に接近する現象にも大きく関わっていると私は思う。反日を根拠にした中国への接近を理由にする意見は多い。もちろんそれも理由の一つではあると思うのだが決定的なものではない。反日という行為や現象を導き寄せている韓国内にあるあやふやな雰囲気こそが何であるかについて考えてみたい。

 近年、韓国が反日活動を強めている理由には確かにこれまでの反日教育の積み重ねがあるだろう。ただ、韓国の調査などによれば反日教育を受けた若者たちが以外と親日的な心情などを示していたりする。それはアニメやファッションを理由に始まったものかも知れないが、韓国内においてそれを明らかに表明できないという無言の圧力があるのは公然のことである。
 一種言論弾圧そのものでもあるこうした雰囲気は、「克日」という日本に勝ちたいという国を上げてのキャンペーンに端を発する。どんなことをしても日本に勝ちたいという精神は、最初にスポーツに見て取れた。日本にだけは負けないという精神論は多くの韓国選手が口にしてきた言葉である。

 サムソンが巨大企業となり日本の電気産業を凌ぐ様になり、あるいは現代自動車の欧米における成功は彼らのプライドを大いに満足させた。いつのことかは判らないものの、いつかは日本を超える日が来るという朧気な願望は心地よい高揚感を与えてきたのであろう。
 しかし、頭の中では日本の地位は地に落ち韓国がそれを乗り越えるはずだったストーリーは、そう易々と実現されるものではない。ある瞬間に手が届きそうに感じた日本の姿も、少し場面やタイミングが変わると霞んで見えなくなる。想像していたよりも日本が遠いことに気づく。この葛藤が、彼らに別の形での日本を見下す形を要求させる。李明博前大統領の天皇陛下への発言も、いかに韓国が日本を下に置いて発言できるのだというパフォーマンスの延長線にある。それは、実体経済で届かない状況を別の形で代償させようというものである。

 そして、こうした行為を社会が望みマスコミが煽る。この社会的な雰囲気が、どんなことをしても日本を屈服させ日本が譲歩する姿を見たいという動きを加速させる。確かに韓国が貿易において中国に多大な依存をしているのは間違いないが、中国経済の暗雲も囁かれているのは韓国でも当然把握しているであろう。それにも関わらず、中国にのめり込まざるを得ないのは朴大統領にとって反日的姿勢が(仮に建前であっても)必要なこともあろうが、それ以上に日本に勝つためには手段やリスクを厭わないという姿勢が透けて見える。
 アベノミクスのせいにされてはいるが、韓国経済が脆弱なのは日本のマスコミが韓国礼賛をしていた頃から既に明らかになっていた。現実に韓国の絶好調と言われてきた割には庶民は借金に苦しみ、就職は非常に厳しいままである。一部の企業は栄えたかも知れないが、国家としては国民に豊かさを感じさせるには至っていなかった。その上で、届くと思っていた日本の背中が急速に遠のき始めるとなれば焦りも出よう。

 韓国の焦りは、結局想像上の自国の姿と現実のそれの間における葛藤である。まるで若者の抱くモラトリアムのような状態の中で、それを脱する手段として中国との接近により日本を超えようと動き出したのではないだろうか。
 もちろん、それを大きく後押ししているのはマスコミをはじめとした世論と言うよりは雰囲気だと思う。一度経験した豊かな生活を貧乏になったからと言って容易に変えられないように、一度すぐそこまで届くと感じた日本の姿が遠ざかってしまうのは許せないという感じがするのである。
 しかし、現実にはこの行為はメリットよりもデメリットの方が多いと私は感じるのだが、日本を超えるためにはこのあたりのリスクも許容されてしまうようだ。

 ただ、日本は既にアジアのATMたる立場を返上しつつある(アメリカに対しても遅いものの徐々にその方向に動きつつあるようにも思う)。韓国がいくら恫喝しても日本は容易に折れないだろう。だからこそ大国である中国の威光を借りようとしている。その飲み込まれるかどうかの危うい橋を渡ってまで。
 これらは全て「克日」という日本を乗り越えるというモチベーションにより進められている。反日はあくまでその一端の奔出と捉えて良いと思う。ただ、この「克日」が戦略的に進められているのであれば意図もわからなくもないのだが、それがなし崩し的な雰囲気の中で進められていることが現状の韓国の弱さを示しているのかも知れない。