Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

出て行く詐欺

 原発事故発生後に放射能汚染のため東京は人の住める街ではないと騒ぎ立て、海外への脱出を宣言したタレントが、参議院選挙に東京から立候補をするという笑い話もあるが、これ以外にも日本はダメだという声は少なくない。
(2013参院選)日本の現在地:上 蓮池透五味太郎中村うさぎ、熊坂義裕、小谷野敦http://digital.asahi.com/articles/TKY201307120542.html?ref=com_top_pickup

 中村うさぎさんは「このまま右傾化が進むのであれば香港にでも出て行く」そうである。まあ、おそらく出て行くことはないと思うが、今の日本の状況が自分の考える状況と異なっていると言うことを協調するためにこのような言い方になるのであろう。
 いや、そのような物言いをする人たちを朝日新聞が集めて載せているのだから、まるでこんな意見が多いと取り乱す必要もない。ただ、そうは言われてもこうした人々の日本を出て行くという主張が空虚に感じられるのは、自らを大きく見せようとする(あるいは自らの言論へのレスポンスを確認しようとする)姿に対してだだをこねる子供の姿を映し見ているような気がしているからであろうか。
 ちなみに、プライドの高い方が多いので世論が出て行けと唱えるようなことがあれば、自らの言動を一致させるために出て行く可能性も無い訳ではない。ただ、この場合には右傾化が引き金ではないことは誰にもわかる。

 私には常々不思議なのだが、日本がダメだと考えるよりもどうすれば日本が良くなるかを細部ではなく全体で見事に説明して欲しいと考えているが、それを私にも理解できるカタチで明快に述べている人は多くはない。もっとも私の読書量や情報収集量は決して多くはないため、知らないところで立派な理論が展開されているかも知れないが、ダメだという理由は常々聞くのだがこうすれば良くなると言う内容をわかりやすく伝えてくれる人が少ない。
 財政再建をしなければ・消費税を上げなければダメだ、TPPに参加しなければ日本はダメだ、人口が減少するからどうしても日本はダメだ。世の中には日本が駄目な理由は溢れている。その情報の氾濫は世界にまで溢れ出て日本終了論が浸透したものである。
 しかし、その割には日本はかなりしぶとい。財政危機により危ないという話はもう20年前より聞いているが、今も日本の金利は最低域をうろうろしており国家財政破綻の兆候の一つも感じられない(というかよほど無茶苦茶な舵取りをしない限りそんなことはあり得ないと私は思う)。

 中国や韓国と仲良くしなければ日本は孤立すると言う情報も良く流れているが、それが本当かどうかは疑わしい。別に無理に仲違いする必要はないが、相手に阿り関係を維持する必然性はない。
 確かに一部の人たちのヘイトスピーチは私にとっても耳障りではあるが、それとは比較にならないほどの日本人差別を中国や韓国から受けていると思うが、日本人は本当に温和しいものだと感心している。その上で、中国や韓国には情けをかけて援助しても、彼らの文化ではそれは自尊心を大きく傷つけるものなのだと言うことも学習した。
 ただ、日本が遜って援助をしなければならない理由はない。対等に、日本に明確なメリットがあるなら援助をすればよいし、無ければする必要がないだけだ。そもそも、日本はもう終わりであるならば日本が援助をする必要性すらないではないか。

 私は日本が終わりなどとは決して思わない。あるいは日本が右傾化しているとも思わない。むしろ過度に左傾化していたものが揺れ戻されているに過ぎないと感じている。そして戻し方は過激なものでは無く十分抑制的である。そう思うか思わないかは個人の思想や感じ方により異なるであろうし、様々な意見があるのは承知している。だから、右傾化が我慢ならなくて出ていきたいという言論も尊重する。逆に言えば、民主党政権下の私にとっては異常な状況でも日本から出て行きたいとは特に思わなかった(民主党政権を早く終了させたいとは思ったが)。
 私は日本が再び世界の中で輝きを取り戻すことを信じているし、できる事ならアジアの中心として日本が今後も尊敬され続けることを祈っている(中国や韓国からは当分無理であろうが、世界は特定アジアのみで成り立っている訳ではない)。
 そう考える理由は、日本を捨てることによりメリットとデメリットを冷静に比較したからであり、その上でメリットを最大化するためには無いが必要かを考えた結果でもある。感情的に反応したものではない。

 とりあえず、出て行くと騒ぐ人たちは今後も入れ替わり現れるであろう。もちろん一部には有言実行する人もいるかもしれない。ただ、その行為ですら自らのプライドを実利よりも優先させた非合理的で感情的な反応に過ぎない。感情が先に立つからこそ、出て行くと強硬な態度を取ることで自らの主張の価値を高めようとしている。しかし、多くの人にとってはこうした意見などどうでもよい。出て行く詐欺は、詐欺としての機能を満たさず世の中に一時の賑わいを生み出すものとして機能している。