Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

維新八策は今必要か

大阪維新の会は名が表すとおりに、既存の枠組みが実情に合わなくなっているのを変えていこうという変化を打ち出した政策手段である。橋下市長のキャラクターが立っているのでそのイメージで語られることが多いものの、一部を除けば支えるブレーンにより政策が立案されている。
維新八策(http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC3103B_R30C12A8000000/?nbm=DGXNASFS3102X_R30C12A8MM8000)は坂本龍馬船中八策を真似て発表されたものであろうが、幕末のそれと比べると状況が異なることもあってインパクトは弱い。むしろいろいろな場所で既に言われていたものを寄せ集めたような感が否めない。もちろん、既に使い古された言葉や内容であったとしても、言葉のみであったものを実行に移せるのであれば意味はあるだろう。問題は、それが実行されなかったという事実を持ち上げて主張するのではなく、なぜ実行できなかったかを緻密に分析して実行できる形に変えることが必要なのだが、その点を人気による数の論理のみで押し切ろうとしか見えない事が維新八策の弱さとして見られる。明治維新は確かに快挙かも知れないが、今の日本に同じ混乱を巻き起こすことは現時点では叶わないのである。大胆な構想は重要だが、同時に緻密な戦略も同じレベル以上に必要である。

私自身は橋下市長の実行力と分析力は高く評価しているが、それでも国のシステムを見直す事業が一人でできるはずもなく、当然多くの頭脳を集めて立ち向かわなければならないのはよくわかる。問題は、脱原発パフォーマンスの時もそうなのだが、集める人選の拙さが大いに気になっているのだ。なぜ、彼はこれほどまでに人を見る目がないのだろうか、有能の志を集められないのか。
橋下ブレーンと呼ばれる人たちは、どちらかと言えば正しい改革を実行しようとして虐げられてきた人よりは、むしろ自分の考えを押し通そうとして失敗してきた人たちのように感じている。マスコミなどへの露出度が高いこれらの人々を選挙の顔として立てることには方法論としてわからなくないが、その人達の主張まで政策立案の過程において大きく取り入れている点が悩ましい。
維新八策を概観すれば、基本的には新自由主義と呼ばれる小さい政府・自由貿易の推進という原則が見える。別にそれは目新しい内容ではない。むしろ少し前に試されて、失敗だったのではないかと評価されてるものを、実行が不十分だったと再度持ち出しているものである。先ほども触れたがそれ故にブレーンと呼ばれる人たちが、そうした傾向の人たちに偏っている訳だ。
ところがこうした経済政策とは別にして、同時に橋下市長の外交政策はむしろ保守的とも言えなくはない。正確には保守的と言うよりは、中国や韓国に今までよりは多少厳しく対処すると言った程度ではあるが、それをもって比較的保守的だと感じている人も少なくないであろう。それが、むしろ経済政策等の歪さを覆い隠す形で働いている。

私は前から触れているが、政策というものは最も大切なのはその内容よりもそれを実施するタイミングだと思っている。例えば、現在私が期待できないとしている維新八策についても、環境や時期が異なれば丁度良いタイミングであることもあるだろう。常にそれが悪いと言っているわけではない。
ただ、今の時点で日本がそれを推し進めるのはタイミングが間違っていると思う内容が多いと感じている。いくつもエントリで触れてきた通り、増税・TPPについては現時点で、今進められている内容で行うのは良くないと書いてきた。
私が思うに、今日本は世界経済の激変の中で攻勢に出る時期ではなく、守勢で耐えて適切な時期を待つタイミングだと思っている。もちろん、単純に耐えるだけではなく場面においては積極的に動く所も必要だろうが、全体としてみれば力の損耗を防ぐ時期だと思っている。
それは環境としての円高、中国や韓国の追い上げ、国際的な金融仕組みの歪みから崩壊への状況などを見ての感想である。だから、口ではいろいろと権利を主張しても無理に攻勢に出て利益を得るかも知れないが同時に損失の可能性も高めるような選択はなるべく控えた方が良いと思っている。
そこを攻勢で活路を見出そうとしているのが韓国であり、少し前までのユーロである。どちらも現在危機を迎えつつある。

逆に言えば、攻勢をかけるべきタイミングもあるだろう。その時には維新八策のうちのいくつかの内容は実行に移した方が良い時も当然ある。だからこの八策を研究する必要は常にあると言えるが、それでも優先的な課題として推し進めようとすることには違和感を感じているのである。
橋下氏は攻勢に強い政治家であるが、普段からの言動より同時に引くべき所も知っていると私は思っている。果たして維新八策をどのように位置づけるのか。曖昧なスローガンとして用いるのであれば、そこには期待できる内容はほとんど見いだせない。